少し過ごしやすくなった残暑の夜、「博多リバレインモール by TAKASHIMAYA」内の「レストランひらまつ 博多・中洲川端(Restaurant Hiramatsu Hakata)」に車を走らせる。今宵は「Soiree Gala de AUTOMNE」が開催されるのだ。ローラン・プルセル(Laurent Pourcel)シェフ来日ガラディナー「POURCEL GALA EXCEPTIONNEL par Laurent Pourcel」以来か。
入口ではいつものように笑顔の春田英幸支配人や長坂滋郎ディレクター、天神「リストランテKUBOTSU」千葉篤志支配人らが出迎えてくれる。我が家はいつものように個室に通してもらう。今宵は50名を越える客を招いており、会場のダイニングからは華やかなざわめきも漏れ聞こえてくる。

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今宵のガラは「ミシュランガイド福岡・佐賀・長崎 2019 特別版」で「レストランひらまつ 博多」が1つ星を獲得したお祝いも兼ねているそう。ミシュランの評価には色々ある(例えばライバル隣国イタリアに冷たく、イタリアンには半星から1つを加算すると正当とか)。それでも少なくとも本場フレンチの星は、フレンチシェフにとっては勲章の1つと誇れるものだろう。個室に挨拶と料理説明にやって来た土生将之料理長も、今宵は張り切って料理を作ってくれそうだ。
ちなみに前回の「ミシュランガイド福岡・佐賀 2014 特別版」ではフレンチの星は2店にとどまったが、今回2019年版では大幅に増加。我が家が伺うレストランとしては、博多駅「オーグードゥジュール・メルヴェイユ 博多」、ベイサイドプレイス「レストラン ソラ」、赤坂「スーリール」、西中洲「ローブランシュ」、大濠公園「レストラン花の木」などが順当に1つ星を獲得している。

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まずは乾杯しよう、今夜の担当ソムリエはお馴染み「リストランテKUBOTSU」重松冬樹ソムリエ。グラス・シャンパン「ドゥラモット ブラン・ド・ブラン ひらまつ(Delamotte Brut Blanc de Blanc Hiramatsu)」で軽く喉を潤す。「ドゥラモット ブラン・ド・ブラン」は、言わずもがな「サロン ブラン・ド・ブラン」が出来なかった時に作られる。ひらまつグループではハウス・シャンパーニュとしてオリジナルのラベル(Hiramatsu)で提供する。
グラスに注がれると、薄いイエローに微細な泡が活発に立ち上る。ライム・レモン・・豊かな酸がいつものように切れあがり上品さを引き出す。この夜はガラディナーに合わせて工夫したグラスワインも用意されている。せっかくだからグラスワインも頂きつつ、いつものようにボトルも並行的にチョイスしていくとしよう。

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「ドゥラモット」に合わせたアミューズは2種類、「つぶ貝」に昆布だしの香りをつけたもの。そして「フォワグラのテリーヌ」には黒ごまの食感と風味を印象的に添えた。
続いて前菜一皿目は「豊後高田産秋の新蕎麦 イクラ サーモン」だ。新蕎麦のアイスクリームにスコットランド産サーモンのマリネを合わせた。白いムースはベーコンの出汁。ナスタチウムでわさびのようなハーブのニュアンスも加えるなど、繊細に計算された仕立てになっている。非常に滑らかで全体に調和したエレガントな味わいである。サーモンと蕎麦を繋ぐ意図という微かな醤油もほんのりと効いてる。スタートから満足だ。

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次の「沼津産赤座海老 マスカット ポロ葱」は、ラングスティーヌをミキュイで仕上げた。何ともねっとりした甘みが口の中で確かな存在感を示しながらも溶けていく。そんな食感を中心にそえた料理だ。上には島根産シャインマスカットも飾ってフルーツの爽やかな甘みも重ねて複雑さを醸し出す。
ポロネギは「ドゥラモット」とエチュベして。甲殻類のマヨネーズもあえてマスタード使わずに調和を狙った。合わせられるグラスのワインは「シャトー・ド・フューザル・ブラン(Chateau de Fieuzal Blanc)2010年」。ボルドー、ペサック・レオニャンの定評あるドメーヌ。赤も含めて手ごろな価格でありながら高品質だ。グラスに注がれると、美しいレモンイエローから厚みのあるフルーツを感じる樽香、エレガントなハーブが優しく香る。

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旨味を伴う太めの余韻だが綺麗な酸があるためエレガントな印象を残してくれる。さぁ続いて運ばれて来たのは「リードヴォ 松茸 熊本県産大長茄子」。リードヴォーをフリットにして松の葉をさして仄かに香りを付けた。松の葉を刺した部分をバーナーで焼いて香りを入れ込んだという。スライスして上から散らした松茸も、サラマンダーで軽く火を入れ香りの同調を狙った。
リードヴォの下にはトマトとナスのコンポート、そして軽やかなオランデーズソースを敷いて味わいをまとめた。これに合わせられたグラスの白は「ルイ・ジャド ピュリニー・モンラッシェ プルミエ・クリュ ルフェール(Louis Jadot Puligny Montrachet 1er Cru Les Referts)2009年」。これが今日のグラスワインの中では抜群に良かった。グラスに注がれると濃い黄金色が揺れる。

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白い花束・若干のナッツ・・高い酸にまとわりつくような凝縮した甘味。上品な酒質が繊細な料理と調和していく。若干の苦味が余韻を押さえてくれる。行き過ぎていなく、しかし若すぎることもない。好みの範囲に入ってきた素晴らしい白であった。
そんな中運ばれてきたのはカラフルに仕立てられた「北海道産キンキ 蕪 利尻昆布」。羅臼産の昨日届いたばかりのキンキが主役だ。福岡の市場だと日数が立ちやや匂いも出てくる。そのため無理をいって産地から直送してもらった素材との事。脂の乗ったキンキの身質を利尻産昆布出汁のスープがさっぱりとまとめる。優しいバランスながらそれなりにボリューム感もある。キンキの上には5種類のカブと2種類のビーツ(マーブルビーツ/黄ビーツ)も合わせて複雑さを足した。濃縮した味わいながらさらりと食していける魚であった。

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有り難い事に今夜は、我が家の為に特別なワインリストを用意してくれていた。いつも「最近ひらまつ博多のワインリストが寂しいな」と言うからだろう(申し訳ない 笑)「ミルクスキ ムルソーシャルム 2006」「ルイジャド バタール・モンラッシェ 2009」など心惹かれるワインをピックアップしてくれていた。メインの肉は鴨なのでブルゴーニュを探す。
「ピエール・ダモア シャンベルタン クロ・ド・ベーズ 2002」も気になったが以前系列店で開けた記憶があったので、敢えてボルドーも見て行く事にする。結局チョイスしたのは「シャトー・マルゴー(Chateau Margaux)2009年」。グラスに注がれるとグッと濃いガーネット、まだ紫の色調も伺える。それでも第一印象の涼やかなハーブを伴った華やかな果実香がいかにもエレガントな「ザ・マルゴー」と言った感じだ。

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タンニンはまだ溶け込んでないが、ザラついてはおらずどこかしなかやか。美しい酸に包まれた余韻はいつまでも続く。グッドヴィンテージの「2009年」は一級ワインをセット購入してセラーで寝かせてるが、ヴィンテージの良さをしっかりと感じられた一本であった。
ここで運ばれて来たメインの肉は「鴨・ビュルゴー家 佐賀県富田農園のシナモン 黒いちじく」だ。骨つきのまま焼いたビュルゴー家の鴨。土生シェフがココットに入った状態の焼きあがりを持ってきて見せてくれる。エトフェ、窒息鴨をジューシーに仕上げた。黒イチジクをロティした黒イチジク、国産としては唯一と言う富田農園のシナモンと共に味わう。

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合わせられていた赤ワイングラスは「ドメーヌ・ガルティ コート・デュ・ヴィヴァレ ラ・シラール(Gallety Cotes du Vivarais La Syrare)2009年」。コート・デュ・ヴィヴァレのワインでシラーの凝視した味わいを窒息鴨の血のニュアンスと合わせていた。最後に登場したデセールは「西洋梨」。洋梨のコンポートは、エルベルフラワーのマスカットや花の香りをつけて。ふんわり美味しい甘さに癒される。
加えてグラスで運ばれたのは、ソーテルヌの格付け2級「シャトー・ド・マル( Chateau de Malle Sauterne)2009年」、Wの甘さを味わう。通して今夜は「2009年」尽くしのワインと共に楽しんだ。最後はハーブティーと小菓子で締める。

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土生シェフの繊細ながら構成力のある料理。「素材を引き立てつつ、フランス料理らしい複雑さを出していきたい」と言う彼の言葉通りの料理であった。素材についても九州産にこだわらず全国の良い物を取り上げていきたいとの事だ。客からするとまだ30代前半で伸び盛りだから年々楽しみだ。見ればまだまだ盛り上がるメインダイニング、私達はひらまつグループ福岡のメインスタッフ達に見送られ「福岡オールスターね♪」とご機嫌な妻と手を振りつつ「レストランひらまつ博多」を後にした。