この日「ルイ・ヴィトン 六本木ヒルズ店」で買い物を楽しんだ後向かったのは赤坂・アークヒルズにある「ANAインターコンチネンタルホテル東京(ANA InterContinental Tokyo)」36階。久しぶりの「ピエール・ガニェール(PIERRE GAGNAIRE TOKYO)」だ。2010年オープンから9年連続ミシュランガイド東京2ツ星。
エントランスは江戸紫が印象的な豪華なデザインの中、言わずと知れたフレンチの巨匠ピエール・ガニェールシェフの写真がドーン!と飾られている。この「江戸紫」はいわゆる歌舞伎「助六由縁江戸桜」の、助六が巻くあの「鉢巻きの色」との事。奥に入っていくと東京の花火をモチーフにしたカーペットや家具など、華やかな花火のピンク・ゴールド・パープルと言ったカラーリングのメインダイニングが広がる。

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そしてこの花火は浮世絵の「両国の花火」とのこだわりもあるそう。そしてこの夜は、ピエール・ガニェールシェフ御本人も来日中とあり、ダイニングもひときわと華やかだ。
私達は「落ち着いた席」という事前リクエストを出していたので、フランス人マネージャーに案内されたのは、窓に向かったロマンテッィクなカップル仕様のソファー席だった。今までは東京タワーが見える窓際のテーブル席だったので、違った都会のビル群を見下ろしながらのディナーも気分が変わって良い。なるほどこの席は、他の客を感じさせずゆっくり静かに食事をする事ができる。
ちなみにレストラン「Pierre Gagnaire」は現在、フランスにパリ3店、クールシュベル、ゴルド、ボルドー、ラ・ロシェル。

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そしてロンドン、ドバイ、香港、上海、ソウル、ラスベガス、ダナン、東京など、世界9ヶ国で23店舗を展開中だ。
まだ明るさ残る夕日の景色を見ながら、厚いワインリストに目を通していく。シャンパーニュは「ブルーノ・パイヤール ル・メニル ブラン・ド・ブラン(Bruno Paillard Champagne Le Mesnil Blanc de Blancs Grand Cru)1990年」をチョイスする。
1704年から葡萄の仲買と栽培を営んでいたパイヤール家。跡を継いだブルーノ氏が一念発起で27歳時(1981年)に創立したのが「ブルーノ・パイヤール」だ。戦後誕生した唯一のシャンパンメゾンで新興とは言え、かつては世界全店「ジョエル・ロブション」のハウスワインとしても知られるなど、その品質には定評がある。

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中でもこの「ル・メニル」は、メニル・シュール・オジェ村のシャルドネのみで造られる特別なブラン・ド・ブラン。ロブションのかの「100万円ディナー」でも出された。グラスに注がれると程よいシェリー香・黄桃・・複雑ながらまとまった魅惑的な香りだ。微細な泡はすっかり溶け込み、メニル・シュール・オジェらしい上質な酸を引き立てる。優しくも厚みあるアタックが飲み心地を演出し、そこから広がる余韻は何とも長くエレガントだ。
切り株トレイに並ぶ色鮮やかで楽しい、多種多様なフィンガーフードと共に楽しむ。「湯葉で巻いたツナと紅芯大根」は紫蘇に続いて白ゴマが香る。「24ヶ月のコンテテーズ」にはミルクチョコレートを巻いていて意外なバランス良き美味しさ。アルザスの郷土料理の一つ「タルトフランベ」は、玉ねぎとチーズを乗せ香ばしく焼き上げ、その香りと風味が食欲をそそる。

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奥には印象的なスパイスを感じつつ食する「燻製のマス」。そしてグラスに乗せられたのは、山葡萄の葉に浮かぶ雫に見立てた「トマトのコンフィ」、透明に包み込んでいかにも涼し気だ。グラスに立ててあるのは、パプリカ・パセリ・竹墨の「3色グリッシーニ」。それぞれ細かな仕立てだが、かといって細かくなりすぎず、一口一口がきっちりと印象を残してくれた。
さぁ続いて運ばれて来たのは「岩牡蠣のポッシェ シャンパーニュのジュレと小メロンの酢漬け ロケットサラダと共に」、島根県産岩牡蠣が主人公の前菜だ。和風皿に玉砂利を置き上には殻を乗せ、青紅葉と共に夏らしく盛り付けている。シャンパーニュのジュレと頂く「牡蠣のポシェ」は、心地良い牡蠣の風味が食べ終わった後も余韻長く口中に残る。紫蘇でマリネしたメロンのほんの少しよぎるニュアンスも面白い。

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合わせて小さなグラスで添えられるのは「岩牡蠣のアイスクリーム/バナナ/泳ぐホタテ貝のタルタル」。「泳ぐホタテ貝」と表現したのは新鮮な生きた帆立貝を、泳ぐように生き生きとタルタルに仕立てた為との事。タルタルの上には凍らせた小さなバナナ、そして牡蠣のアイスクリームが層をなす。その名の通り牡蠣の味がするオイスターリーフの上には「シトロン・キャビア」もあしらった。
牡蠣の香るアイスクリームとホタテのタルタルのねっとりした甘みが見事に一つの味に収斂していく。それぞれ配置したメロンとバナナが絶妙に生きてるのが不思議であり、そして流石のセンス。フレンチらしく変化もありつつ、きっちりと牡蠣を食べたという充実の前菜だった。

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「ここまで十分に美味しいね♪」と妻が満足気な様子、そこへ登場するのはベルナルド「エキュム(海辺の水泡)ホワイト」に盛られた「北海道産毛蟹 セロリ とうもろこし レフォールの香る蕪のコンソメと共に」。テーブルで温かく優しい滋味深い「蕪のコンソメ」が注がれる。
それを味わうと、柔らかい中にもレフォール(西洋ワサビ)のほんのりとした辛味のニュアンスが効いている。加えて蟹の旨味・セロリの食感と風味・スイートコーンの微かな甘みなど、アクセントにしっとりと味わえるコンソメだ。軽い苦味のエッジを効かせたスープが、毛蟹の旨味を閉じ込めるようにバランスを取っている。優しくもフレンチらしい奥行きのあるスープだった。

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続く料理は「黒鮑のディアブル風 海藻の香るジャガイモのピューレ チェリートマトとクレソン」。ここでぐっと味わいも強くなり、三陸のアワビをまさに肉のように味わうプレート。ディアブル風、つまり悪魔風と言われるフレンチマスタードを効かせたソースだ。柔らかくも肉厚ある鮑の身を引き立てる。下に敷かれた海藻を練りこんだジャガイモのピューレやトマトの酸味、クレソンの苦味とともに堪能できる。
頼りになる担当ソムリエに「これに合うグラスのワインは?」と尋ねると白よりも赤の方を進めてくれた。ちなみにコースに合わせたペアリングも用意されてるが、それとは別の複数のワインをピックアップした、充実したグラスワインリストもあり、ニーズに合わせて色々楽しめる。「こういうところがグラン・メゾンらしい楽しさ♪」と嬉しくなる。

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と言う訳でそのグラスワインのリストから選んだのはブルゴーニュから「アラン・ビュルゲ ジュヴレ・シャンベルタン シンフォニー(Jean-Luc & Eric Burguet Gevrey-Chambertin Symphonie)2013年」。以前、2011年から当主になったジャン=リュック&エリックのビュルゲ兄弟が来日した際、色々楽しく話して以来、我が家でもお馴染みのワインだ。
1974年ドメーヌ設立時より有機栽培に力を入れ、1977年からリュット・レゾネ、2012年からビオロジック、この2013年からビオディナミになった。グラスに注がれた「ジュヴレ・シャンベルタン シンフォニー」は、ジュヴレらしい仄かなスパイシーさに果実のふくよかさ、そして村名ワインらしいカジュアルなピュアさ。それを「黒鮑」と共に楽しむことができた。

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フランス人マネージャーも度々テーブルにやって来ては、陽気におしゃべりをして行くので妻も笑いっぱなしだ。おっと、このまま行くとかなり長くなってしまうので、この続きは次回にしよう。いよいよテーブルに登場するピエール・ガニェールシェフは、相変わらず紳士で優しい方だった。「後半」に続く・・