G20福岡 財務大臣・中央銀行総裁会議が「ヒルトン福岡シーホーク」において6月8日・9日と行われていた。世界から各国を代表する重鎮が集結すると言う事でホテルから福岡市中心部にかけては厳戒態勢。上空にはヘリコプターが頻繁に飛び、道路は至るところで検問が行われていた。結果的には重々しくも静かな休日となった。
歓迎レセプションでは「鮨 行天」が出されたようだ。合わせて中洲の屋台「中洲十番」では全参加国の公用語に対応した17言語のメニューを用意したのも話題になった。
そんな色んな意味で騒がしい博多、先日の夜向かったのは「ベイサイドプレイス博多(Bay side place Hakata)」。天神から博多湾沿いに走ると赤く光る「博多ポートタワー」が見えてくる。昨年末にオープンした「レストラン ソラ/バー ポルト(Restaurant Sola / Bar Porte)」を再訪するためだ。

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相変わらず人がまばらな中C館へ・・8mのタワー水槽に約3000匹の魚が泳ぐアクアリウムを見ながら2階に上がる。案内カウンター左奥に進んで行くとキッチンとテラスが見えて来た。
海辺に沿った店内は100坪ほど。木の香りがする様なナチュラルさで、天井高もあり余裕を感じる空間だ。12名がゆっくりと座れる長いL字型カウンターの前には、入店時に外から見た大きな厨房が陣取る。壁一面には薪が積み上げられ、薪がパチパチ燃える音と香り・・その炎が、店内にロマンテッィさも演出して壮観だ。カウンターから少し距離を置いて設けられたテーブル席は5台程(最大40~45人のキャパシティ)。6名前後のスタッフはパリ時代のメンバーもおり、開店直後から安定してそつのない接客を見せている。

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そんなチームの中心、吉武広樹シェフと言えば仏パリ・ミシュラン3ツ星レストラン「アストランス(Astrance)」等で修行し「レストラン ソラ パリ(Restaurant Sola Paris)」をオープン。すぐにミシュラン1ツ星を獲得し、星を維持したまま2016年惜しまれつつパリ離れ帰国。来月発売される「ミシュランガイド福岡・佐賀・長崎 2019 特別版」でも当然登場することだろう。
メニューは「本日のコース料理(Menu du jour)」のみになる。テーブルには素材だけを記したメニューが置かれて想像を掻き立てる。ワインリストもオープン当時から更に進化して眺めるだけで楽しい。パリ時代から「Sola」を支えるソムリエが、現代的かつワイン好きの興味をそそる品揃えを幅広く実現している。
「Sola Factory.co」と印字された特注木プレートのに乗った定番アミューズ「いくら(Ikura)」を口に運びながら、そのリストに目を通していく。

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チョイスしたのは「サロン ブラン・ド・ブラン ル・メニル ブリュット(Salon Blanc de Blancs Le Mesnil Brut)1997年」。1914年ウジェーヌ・エメ・サロン氏によりル・メニル・シュル・オジェ村に設立された、オートクチュールなシャンパン作りを継続するメゾン。
コート・デ・ブランのグラン・クリュ畑で、良年にのみ最上質のシャルドネ一番絞りだけを使用し10年以上熟成して造られるのが、このブラン・ド・ブラン「サロン」だ。ブラン・ド・ブランの代表格ともいうべきシャンパーニュになる。
パリで「Sola」オープンした年にリリースされたものを当時購入し、パリ店で保存してきた貴重な1本と言うから、開けさせて貰うのも楽しみながら恐縮する。グラスに注がれたそれは、微細な泡はすっかり溶け込んでいる。

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輝きのあるイエローゴールドがまだ夕日差し込む店内にキラキラと映える。熟成しつつある「サロン」らしいカフェモカ・蜂蜜・・穏やかながら深淵なアロマに引き込まれる。高く洗練された酸が果実の旨味を押し広げる。サロンらしいクリーミーなテクスチャ、少し柔らかさの出てきたミネラルが品ある骨格をなす。高貴で落ち着いた余韻がバランス良く何とも長く残る。ドライな柑橘の余韻が「いくら」と調和し、「サロンの本領発揮って感じの味わいね♪」と妻も楽しんでいた。
さぁ続いてお馴染み「肴(Ate)」が次々運ばれる。3種類の料理がまさにアテのように提供され、何が登場するか楽しみだ。この夜は大根で挟んだ「アジの塩漬け」、う~ん正にアテと言った感じだ。そして「人参のタルト」は羽毛のような食感。「スナップエンドウ」のフリットは、ベーコンのペシャメールソースと共に、熱々の食感から春が広がり食欲をそそる。

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続いて「光樹とまと(Tomate Kouju)」がやって来た。佐賀の有明海沿いのミネラル分をたっぷりと蓄えたトマトが主人公だ。佐賀のブランドトマトを使ったレストランの料理も増えている。和食器にトマト水とチーズのムースをこんもりと盛って、ビーツを飾った。トマトの濃い甘味と酸味が口一杯に広がる。これもふんわりと軽やかな食感とさっぱりした風味が心地良い。
そして次は「白アスパラガス(Asperge blanche)」。こちらもシェフの出身地・佐賀県産のホワイトアスパラガスだ。下にはマグロを敷いて食べごたえを加え、酸味豊かなチーズのソースを添えている。可愛らしくガレットもホワイトアスパラガスに合わせた形で飾り、食感の変化も加えた。オイリーな食感にホワイトアスパラガスの仄かな甘さが、酸味と共に楽しめる一皿。

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そんな上品で季節らしい爽やかな冷前菜は、「サロン」も飲み進ませてくれる。そうそうこの日も我々はテーブルで楽しんでいたが、カウンター席に見慣れた顔を見つけた、それは何とプライベートで訪れたと言う「リストランテ クボツ(RISTORANTE Kubotsu)」窪津朋生シェフだった。
そう言えば「婦人画報」5月号の特集「おいしい福岡 最新案内」では、こちら「SOLA」と「Kubotsu」や「オーグードゥジュール・メルヴェイユ 博多(Augout du jour merveille HAKATA)」小岸明寛シェフも取り上げられていた。やはり注目のシェフ同士で気になり、お互い食べ歩いたりするのだろう。「Kubotsu」では7月に、吉越謙二郎シェフを招いてガラディナーも予定されているから楽しみだ。

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さて料理の話に戻り、しっとりふんわりな「自家製フォカッチャ」に続いて、運ばれるのは「烏賊(Calmar)」。「Sola」の料理の特徴でもある薪焼だ。キッチン横(カウンター正面)には、佐賀・鳥栖の水害にあった樹木を乾燥させた薪が積み上げられおり、常に火入れが行われている。店内プレゼンテーションのメインとも言える。
この薪焼きで仕上げたイカも、薪のワイルドな香ばしさが口一杯に広がる。イカゲソとイカスミのソースだけでなく、黄身酢のソースも変化があって美味。上には旬のグリーンアスパラガスが歯ごたえも良い。あくまでイカが主人公ながら、香り・ソース・付け合わせと楽しめて満足であった。
次は「本日の鮮魚(Poisson deu jour)」平戸の的鯛。フランスではサンピエールとしてお馴染みの魚だ。

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上には・山菜・タケノコのフリットに、アゲマキガイ・そら豆のフリット。ソースは貝類と魚介のソースが全体を受け止める。塩気をグッと効かせて来た味わいはコースの中でのメリハリも感じる。
では、赤ワインもリストからボトルで選んでいこう。「ダヴィド・デュバン エシュゾー グラン・クリュ(David Duband Echezeaux Grand Cru)2008年」、1963年からブドウ園を営んでいたが1991年からドメーヌとしてワインを作り始めた。1995年ピエール・ドゥバンが引退し代替わりした。2006年から有機栽培になり2007年にはワイナリーとセラーを新設。全房発酵に加え抽出や新樽使用率を控えるようになり、よりエレガントになっている。

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フランスミシュラン3ツ星レストンのうち16のレストランが「ダヴィッド・デュバン」をオンリストしている。この「エシェゾー」は最初に取得したグラン・クリュで、「ロマネ・コンティ」所有の畑プーライエールのそばに位置する。樹齢70年。樽醗酵(新樽40%)。
グラスに注がれると、ブラックチェリー・優しくも透き通った果実味・・樽のニュアンスは溶け込みバランスが取れている。やや発展してきた土のニュアンスに続き、軽めのエスニック系のスパイス。芳香性は高くエレガントだ。味わいも軽く近づきやすいが緻密な構成で余韻は長く、「Sola」の料理にはにぴったり合う。

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では、いよいよメインの「吟醸豚(Porc)」がやって来た。大吟醸酒の酒粕を食べさせて飼育したと言う吟醸豚。福岡県うきは「リバーワイルド(RIVERWILD)」の物だ。薄いロゼ色の断面は艶やかで美しい、焦げ目と柔らかな肉質のコントラストもありジューシーな仕上がり。付け合わせは、玉ねぎのグラタンに椎茸。フォンドボーのソースに金柑のマスタード、菜の花と柚子胡椒のペースも添えた。
ちなみに「吟醸豚」は全国に広がり、ストレスをなくす・抵抗力を増やすなど言われているが、むしろ日本酒生産地で発生する酒粕の再利用、サスナビイリティ的な側面もあるようだ。シェフは、和牛などまだまだ思考錯誤中で試作を繰り返しているとの事。納得したものだけをメニューに入れていると言うから、今後もどんな料理が出てくるか楽しみだ。

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もうお腹もいっぱいのところでデザートの「林檎(Pomme)」。アップルパイの上にはゴルゴンゾーラのアイスを乗せた。そして、バルサミコと蜂蜜のソースも流した。
そして2皿目のデザートはパステルピンクが可愛い「桜(Cerisier)」。和皿と共に桜満載の可愛らしい仕立てだ。苺のジェラート、余韻に桜を感じる春を振り返るに相応しい一品だった。最後にはソラ定番の「モカロン(Mocaron)」、フランボワーズと甘夏を楽しんだ。
開業から半年近く経つが、何とも既に変わらない安定感(笑) 大人たちで満席、各テーブルも楽しそうに賑わう店内の雰囲気が良い。リバーサイドという立地を活かした広くて解放感ある店内は、ナチュラル志向で居心地も良い。料理にワイン、的確なサービスとこの夜も満足のディナーであった。

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