謹んで新年のお祝いを申し上げます。お蔭様で我が家も良き新年を迎える事ができました。本年もよろしくお願い申し上げます。さて今年もバタバタと既にスタートしている2019年であるが、忘れないうちに年末年始に自宅で楽しんだワインの中からいくつか紹介していこう。いきなりメインだが、大晦日から元旦にかけて開けたのは「平成最後にふさわしいワイン」と言う事でセラー室から選んだ「DRC ロマネ・コンティ(Domaine de la Romanee-Conti Grand Cru) 2000年」。
昨年は3月に帝国ホテル「レ セゾン(Les Saison)」で「DRC ロマネ・コンティ 1998」を開け、アラン・パッサール(Alain Passard)シェフと共に賑やかに味わったので、今回はヴィンテージの違いも味わっていくとする。言うまでもなく「ドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティ(DRC) 」社が所有するグラン・クリュ。1.814haのモノポールから生み出されるのが「ロマネ=コンティ(Romanee-conti)」だ。

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ロマネ・コンティはいつもロマネコンティ専用グラス「バカラ ワイングラス デギュスタシオン・ロマネコンティ(Baccarat Degustation Glass Romanee Conti)」で頂くのであるが、今年は「お正月はやっぱり金箔でしょ?」と妻が言うので、前半は「リーデル ソムリエシリーズ(RIEDEL Sommelier)」の中でも特別な「HAKU(箔)ブルゴーニュ・グラン・クリュ」を使用する事にした。従来の「ブラック・タイ」台座部分に、鮮やかに金沢の金箔24Kを施した限定品だ。
開けたはなからあの独特の華やかなブーケに包まれる・・妻は既にご機嫌だ。少しドライになった薔薇・麝香・複雑なスパイスが妖艶かつ上品に香る・・グラスの縁にずっと鼻を入れておきたい(笑)アタックはどこまでも丸く深淵。同「1998年」よりも固い事を予想していたのだが最初から意外とフレンドリー。1時間もすると紅茶や微かに土のニュアンス。バカラのロマネ・コンティ専用グラスに切り替えて2時間もすると、丸い味わいが一段と大きくなる。ただ3時間以降は余り変わらない印象が続き、どんどんと開いていった「1998年」とはやはり違いがあった。

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そうそう、そんな「DRC ロマネ・コンティ 2000」と一緒に開けたシャンパーニュは、1500mlマグナムボトルの「ポメリー レ・クロ・ポンパドール(Pommery Les Clos Pompadour Brut)2003年」。ランスの小さな単一畑「レ・クロ・ポンパドール」から生み出す特別のキュヴェだ。シャルドネ75%、ピノ・ノワール20%、ピノ・ムニエ5%。10年の長い瓶内熟成を経て、マグナムボトルは5000本のみ生産だ。
グラスに注ぐと微細な泡が勢いよく立ち上がり、緑がかった淡い黄金色がマグナムらしいフレッシュさを物語る。レモンのコンフィチュール・マーマレード・林檎・スパイス・・・柔らかいアタックから優しいミネラルに包まれるうちに微かい蜜のような甘さ、それから細く長い余韻に続く。繊細なほろ苦さとチャーミン
グな酸が調和しながら面白い印象を残す。まだフレッシュさが勝ちやや平板な印象もあるが、マグナムの保存の良さと「2003年」と言う猛暑のヴィンテージが噛み合った味わいであった。

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ちなみに定番の玄界の河豚刺しとともに味わった今年のお節は京都の茶懐石・京料理「下鴨茶寮」おせち三段重。豪華全38品が綺麗に詰めてある。さほど期待していなかったのであるが、塩気は強すぎず薄すぎず、そして変に凝っていない中庸の分かり易い味わいに箸が進む。「壱の重」には身のぎっしりと詰まった「ロブスター塩蒸し」、小さいながらも鮑の旨味が出た「鮑旨煮」、クリーミーな自家製「唐墨」、微かな燻香がアクセントの「帆立くんせい」など。
「弐の重」には、程よい味付けの「鮭柚庵焼」や「鱈の旨煮」、その他「いくら醤油漬け」「かに土佐漬」など。「参の重」には、正月らしくも自然な味わいの「叩き牛蒡」、品のある旨味の「松笠烏賊雲丹焼」、その他「海老の旨煮」「鮭昆布巻」「飛龍頭」など楽しめた。そうだ、デザートは我が家定番の1つ、イタリア・エミーリャ=ロマーニャ州にて60年前に創業された「バビ(BABBI)」から。

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スティックタイプの「バベッティ」は、ロールしたウエハース生地にチョコレートをコーティングしたもの。サクサクと食べやすい定番。そして今年も登場した干支デザインで紅白パッケージの年末年始限定商品「猪柄ヴィエネッズィ」。年始のご挨拶に加えるのも可愛い。ダークチョコレートとバニラやピスタチオクリームとのハーモニーを楽しんだ。さぁでは日にちを少し遡り、年末に楽しんだワイン達もピックアップしていこう。
我が家定番のシャンパーニュメゾンの1つ「アンリオ」。「キュヴェ・デ・アンシャンテルール(Henriot Cuvee Des Enchanteleurs)」がなくなり、新プレステージシャンパーニュとして「キュヴェ・エメラ(Henriot Cuvee Hemera)」が誕生した。アンリオは家族経営の特徴を生かし、時代に反しゆっくり自ら熟成させたシャンパンを市場に提供してきた。社長変更と共に時代に合わせ、よりフレッシュな味わいを目指すためのブランド変更だ。開けたのはそんな「キュヴェ・エメラ 2005年」。

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グラスに注ぐと青林檎・みずみずしい洋梨・ナイフを入れたばかりの皮つきの白桃・・・まだ還元的なトースト香も強い。時間が経つに連れて上質な蜂蜜のニュアンス。アタックから穏やかに感じる旨味、フレッシュで高い酸が骨格をなす。余韻にはややドサージュを感じさせる甘みを感じるも、微かな苦みがバランスをとる。穏やかで上品な飲み口はいかにもアンリオらしい。なんと「アンシャンテルールより美味しいかも」と言う妻。
時代に合わせてフレッシュさを目指したコンセプトは成功なのかもしれない。シャルドネとピノ・ノワールの比率(50%ずつ)が変わっていない事から、そこはかとなく古き良き時代のアンシャンテルールの雰囲気は漂わせながら、スムーズなモデルチェンジに成功した感じだろうか。エレガントなフレンチレストランの乾杯から前菜まで彩どるには十分なシャンパンになったと言えそうである。フレッシュなシャンパンが続くと熟成したシャンパーニュとも向き合いたくなる。

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セラー室から選んだのは「ドラピエ カルト・ドール(Drappier Carte d’Or Brut)1979年」。オーヴ県ウルヴィル村に1808年に創業し8代目になる「ドラピエ」。昨夏には「ドラピエ グラン・サンドレ ブリュット・ミレジム(Drappier Grande Sendrée Brut Millesime)2006年」を開けたか。この「カルト・ドール 1979年」は、2014年デゴルジュマンのシャトー蔵出しになる。
グラスに注ぐと深いゴールドにしっとり溶け込んだ超微細な泡が、いかにも熟成を感じさせる。ナッツ・カフェオレ・トリュフ・熟れだした黄桃・・潰れたトマトや青さを感じさせる独特なアルコールの香りは、ドラピエ特有の熟成させたリキュール由来だろうか。上品な酸とミネラルが寄り添いエレガントさもある。ピノ・ノワールを中心とするドラピエだが、この「カルト・ドール 1979年」に限っては、ピノ・ムニエ55%、ピノ・ノワール35%、シャルドネ10%と言う面白い構成。

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ピノ・ムニエ主体の味わいがまた個性を引き出している。妻は苦手だったようだが、ゆっくりと向き合うのにはなかなか楽しめた。そうだこれも開けたか「ペリエ・ジュエ ベル・エポック(Perrier Jouet Cuve Belle Epoque Blanc)1983年」。1811年エペルネに創業した「ペリエ・ジュエ」のプレステージシャンパンが「ベル・エポック」。ボトルに描かれた白いアネモネは、1902年に3代目アンリ・ガリス(Henri Gallice)がエミール・ガレ(Emile Galle)依頼したものだ。
若いうちはまとまりにかけて薄く感じる事も多いが、熟成と共に本領を発揮してくるシャンパンの1つだろう。抜栓時にシューとまだかすかにガス音が漏れる。グラスの周りに微細な泡がまとわりつくように湧き出てきてやがて消えて行く。濃厚なゴールドがいかにも熟成を感じさせる。非常に落ち着いたまろやかな花の香り。もっとナッティになっているかと予想していたが、清廉さが残りベル・エポックらしい気品は失われていない。ミネラルで薄く纏われたような旨味が酸と共に余韻に穏やかに広がった。

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その他も挙げて行くと「サム・ハロップ グランド・アマチュア ジェントルマン ホークス・ベイ シラー(SAM HARROP Grand Amateur Gentleman HAWKES BAY SYRAH)」。マスターオブワイン(MW)のサムハロップが、故郷ニュージーランドのワイヘケ島で手掛ける新しいワインだ。グランドアマチュアとは、金星の日面通過の最初の観測を行った英国のエレミア・ホロックスらにちなんでいるそうだ。
サム・ハロップと言えば「セダリオン」や「シラー ブロック31」は我が家も楽しめたが、新作の味わいはどうだろうか。グラスに注ぐと明るく若さを感じさせるルビー色が揺れる。ブルーベリーから始まり、熟れたプラムの印象も湧き上がる。澄んだ芳香性はシンプルながら美しい。赤身肉のニュアンス、樽由来の微かに焦げたニュアンスが若干の複雑さも加えてくれる。軽いしなやかなアタックから瑞々しさへ・・余韻は洗練された丸い味わい。

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1時間もすると微かなタンニンの苦みと果実味がその余韻を縦横に伸ばしてくる。高い酸を伴った端正な造りのモダンなシラーはなかなかの満足度。平日の家のみやフレンチの技術のしっかりしたシンプルフレンチを食せるビストロで飲めれば楽しめそうであった。ブルゴーニュの値段の上がり方を見るにつけ、他の地域のピノ・ノワールを探すか、新しい生産者を探す事になる。ただ新しい生産者も人気が出るとあっという間に品薄になる。
お気に入りの「オリヴィエ・バーンスタイン(Olivier Bernstein)」もリリースされる度に手にしてきたが、最近の値の上昇具合は尋常ではない。そんな中、高くなりつつあるとは言え、今のうちに手にしておきたいドメーヌの1つが「セシル・トランブレ(Cecile Tremblay)」だろう。1921年にエドゥアルド・ジャイエが創業したドメーヌ。その名からも分かるようにアンリ・ジャイエの叔父になる。アンリ・ジャイエの家系筋なのだ。

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その後所有畑は長く貸し出されていたが、2003年に3haが返還された(現在は4ha)。「セシル・トランブレー エシェゾー グラン・クリュ デュ・トゥスュ(Cecile Tremblay Echezeaux Du Dessus)2015年」。エシェゾー区画の南東寄り、グラン・エシェゾーに隣接するわずか0.2haの畑。樹齢40年、新樽比率は70%、18か月樽熟成。グラスはドイツ「ツヴィーゼル エアセンス(ZWIESEL AIR SENSE)」を使用してみた。
これはスウェーデンのデザインデュオ「Bernadotte & Kylberg カール・フィリップ ベルナドッテ(スウェーデン王子)&オスカル シルベリ」とのコラボにより生まれた新コレクション。グラス内部にある球体デカンテーション・スフィア(デカンタ効果を促す)が、ワインを空気に触れさせ美味しさをより楽しめる。そんなエアセンスに注ぐと、まずは綺麗に抽出された果実味に引き込まる。樽由来の香ばしさと甘さ、全房発酵からくるベジタブル・青っぽさ、更に花弁など芳香性はかなり強く豊かだ。

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凝縮した果実の旨味が美しい酸と絡み合いながら余韻に長く残る。若干細かくざらつくタンニンが心地よいアクセント。若くても十分に楽しめる今のブルゴーニュらしい旨さ。果実の凝縮感とフレッシュさの調和した味わいを楽しんだ。一緒に購入した「シャペル・シャンベルタン(Cecile Tremblay Chapelle Chambertin Grand Cru)」など数本はしばらく熟成させてから味わう事にしよう。
そうそう「ルーミエ」もなかなか手に入らないが、さすがと言おうかなるほどなと思わせるワインが多い。「ジョルジュ・ルーミエ モレ・サン・ドニ クロ・ド・ラ・ビュシエール(Georges Roumier Morey-Saint-Denis 1er Cru Clos de la Bussiere)2008年」。ルーミエの単独所有であり、その一族が居を構える事でも知られるクロ・ド・ラ・ビュシエール(2.59ha)。斜面は緩やかで土壌は赤い粘土質と言う事もあり、典型的なモレ・サン・ドニらしい味わいと言われる1級畑だ。

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マット・クレイマーはこのワインについて「5・6年経ってから飲むのが良い」と言っているが、10年を迎えた1本はどうだろうか。グラスに注ぐと粘着性のある赤い果実のジャム、最初は青っぽい雰囲気がかなり特徴的。やがて時間と共にウーロン茶・黒トリュフなど香りも複雑に展開してくる。軽やかな甘みを感じるふくよかなアタックがいかにもモレ・サン・ドニ的。その香りの甘いニュアンスを押し戻す、ルーミエらしいミネラル感がきちんと全体のバランスを取って来る。
タンニンはシルキーに溶け込みエレガントで透明感ある酸と共に、中庸の長さの余韻を彩ってくれる。しかし3杯目くらいから少し飽きてくるかな・・それでも定評通りモレ・サン・ドニらしい低い重心の味わいに、ルーミエらしい清廉な造りが酒質ににじみ出ており、最後はフロマージュやデザートと共に気軽に楽しめた。ビック・ヴィンテージの「2009年」「2010年」は時間がかかるが、前年の「2008年」は少し早めに楽しめそう??

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と言う訳で翌日「アルフレッド・グラシアン キュヴェ・パラディ ブリュット(Alfred Gratien Cuvée Paradis Brut)」で乾杯した後は、ブルゴーニュに続いてボルドーも「2008年」を飲もうかとセラーを物色する。目に留まったのは数本ある「シャトー・ムートン・ロートシルト(Chateau Mouton Rothschild)2008年」。せっかくなので1本を10年目の味わいとして開けてみよう。
ブルーに浮かび上がる羊が印象的なラベルは、1963年生れの中国人画家の徐累(シュ・レイ)によるもの。切り立った岸壁に悠然と立つ雄羊は、葡萄の惑星の半球と半球を結びつけているらしい。カベルネ・ソーヴィニヨン83%、メルロー17%。エスプレッソ、黒胡椒、時間と共に左岸らしいすべらかなハーブ。凝縮した黒果実を包み込む樽香。開いていないが芳香性は高く、どこかチャーミングさもある。長い余韻には中庸の酸味を伴った心地よい苦みが口中に残る。

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ボルドー1級らしい凝縮感と果実の深みはありつつ、どこかフレッシュでジューシーな軽やかさもある。デカンタしつつゆっくりと飲んでも発展はなかったが、若いムートンらしい程よい果実の凝縮感が杯を進めてくれる。最近ムートン離れが進んでいた妻も「これは若いわりに結構いけるね」と楽しんでいる。不安定な天候だった2008年はボルドー、ブルゴーニュも苦労したヴィンテージだ。
ムートンでの収穫も多分に漏れず苦労の連続だったが、9月14日から10月20日まで天候が続いたことで盛り返す。収穫は10月2日から同15日と遅めにスタートした。ムートン側曰く「栽培から醸造まで非常に手間のかかる忍耐を要するヴィンテージの結果、極めて優れた品質のワインが誕生した」。そんなヴィンテージらしい飲みやすさ・フレンドリーさも感じられた。

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今回はクリスマスウィークに開けたワインまで紹介しきれなかったが、とにかく年末年始は保存状態も良く各ワインを思う存分楽しめた。今年も健康第一に、家族団らんワインを適度に楽しんで行きたいなと改めて思う、幸先良い2019年の年明けであった。