追記:本日8月6日、がんで闘病中だったジョエル・ロブション(Joel Robuchon)氏がスイスでお亡くなりになりました(享年73歳)。ガラパーティーの度に笑顔でたくさん話をして頂いた事を想い出します。心よりご冥福をお祈り致します。

〔以下は「ガストロノミー ジョエル・ロブション」7月訪問時〕とにかく暑い暑い、また台風もやって来て今年の夏は日本全国大変な状況だ。太陽が照り付ける35度超えの東京、宿泊先の「ハイアット セントリック 銀座(Hyatt Centric Ginza Tokyo)」から車を走らせたのは「恵比寿ガーデンプレイス」。今センター広場では野外で映画上映を楽しむ「PICNIC CINEMA」が行われている。
今年は酷暑で夜も暑いからと思いきや、会場は満杯混雑しているとの事。ちなみに夏休み8月に入った今週末は、金曜日「50回目のファースト・キス」、土曜「タイピスト!」、そして日曜は「ぼくの伯父さんの休暇」を上映予定。そんな設置スクリーンの背後に建つお城が、我が家お馴染みシャトーレストラン「ジョエル・ロブション」だ。

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エントランスからそのままエレベーターで案内されるのは2階、11年連続ミシュラン3ツ星「ガストロノミー ジョエル・ロブション(Gastronomie Joel Robuchon)」。バカラ・シャンデリアが輝く黄金のダイニング。2017年10月いっぱいで18年統括して来たアラン・ヴェルゼロリ(Alain Verzeroli)が退任し、11月から日本国内ロブション全店の総料理長(ディレクトゥール・キュイジーヌ)にミカエル・ミカエリディス(Michael Michaelidis)氏が就任した。
ミカエルは東京に来る前は、2014年からシンガポールの3ツ星「ジョエル・ロブション(Joel Robuchon Restaurant)」と2ツ星「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション(L’Atelier de Joel Robuchon)」のエグゼクティブ・シェフを勤めていた(その2店は2018年6月いっぱいで閉店)。

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ちなみにアランはニューヨークの「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション(L’ATELIER de Joel Robuchon)」料理長に就任。写真の腕前もプロ並みのアランは日々、インスタで綺麗な料理画像をアップしている。
そんな煌めくダイニングの中、いつものテーブルに着く。見渡せばいつもより年齢層が低めで女性が多い様に感じる。妻は「ドラマ(花のち晴れ)の影響じゃない?」と言う、なるほど撮影場所だったのか。そこへ馴染のスタッフ達が代わる代わる挨拶に来てくれる。昨年秋からランチ営業をやっていない事もあり、休みをきちんと取れるとあってスタッフ達は元気そうだ。

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では乾杯をしよう。今夜のワイン担当は前回同様、ボルドーなどで修業経験もある八代愛美ソムリエール。ワイン談義しつついつもの様に、お任せシャンパーニュ2種をグラスでお願いする。1杯目に提供されたのはテタンジェプレステージの「テタンジェ コント・ドゥ・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン(Taittinger Comte de Champagne Blanc de Blancs)2006年」。十字軍遠征からシャルドネの祖となる苗木を持ち帰ったティボー4世にちなみ「シャンパーニュ伯爵」と名付けられた。
手でカジュアルに頂く定番アミューズ「香ばしく仕立てた手長海老のゴーフレット」と共に頂く。思えば去年の夏にもこちらで同「2005年」を同ゴーフルに合わせて頂いている。そうそう先日は自宅で「1999年」を開けた。

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グラスに注がれると爽やかなゴールドが美しく揺れる。「夏はやはり冷やしてクイックイッといくのがイイよね!?」とご機嫌の妻。レモンの皮・グレープフルーツ・マーマレード・焼きたてのトースト・・爽やかながら落ち着いたイースト香だ。コート・デ・ブラン地区グラン・クリュ主体のシャルドネ品種一番搾り果汁のみを使用してるとあって、上品な酸と存在感あるミネラルが調和する。余韻にも微細な泡の刺激とともに柑橘の苦みを残す。落ち着いた飲み口ながらまだフレッシュさも感じられ、ディナーの最初の乾杯にはちょうど良かった。
続くアミューズ2品目はロブション・スペシャリテ「キャビア 甲殻類のジュレ カリフラワーのクレーム(Le Caviar Impérial dans une délicate gelée recouverte d’une onctueuse crème de chou-fleur)」をデザインアレンジした進化版だ。ロブション本人が「これは世界の料理人に影響を与えたと思うが、私も大好きな一つ」と言っている。

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金箔が輝く円形にビッシリ盛られたキャビア、そしてその周りに60個以上のポツポツ・・・大変な作業だろう。甲殻類の風味が口の中いっぱいに広がり、キャビアの塩気と贅沢感と一体になる。それを優しいカリフラワーがまとめてくれる。「コント・ドゥ・シャンパーニュ」といつもの美味を楽しむうちに「ロブションの世界」に包まれて行く様な心地になる。
そこへ「パンワゴン」が運ばれて来た。ミカエル就任からパンメニューも随分変わって、料理を邪魔しない一口大のパンがラインナップされている。この夜は新作の「ミニクロワッサン」や「フォカッチャ」、すっかり定番の「グルテンフリーパン」などをチョイスする。カリッとした仕上げたフォカッチャの中には、フォワグラとポテトのピューレが潜んでいて美味だった。

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さて我が家のサービス担当は、退職・独立した村林篤メートル・ド・テルに変わって三浦壮太アシスタント・メートル・ド・テル。優雅な口調で分かり易い料理説明が好印象だ。料理は「MENU A PRIX FIXE」の中からチョイスして行こう。前菜1皿目は妻の希望で「ソローニュ産キャビア アンペリアル ニュージーランド産オーラキングサーモンのタルタル仕立てとのハーモニー(Le Saumon en tartare aux feuilles de shiso)」。
サーモンの滑らかなムースの上にゴージャスに鎮座するキャビア。燻製したチップスも飾っている。いわずもがな前皿に続いてのダブル「キャビア アンペリアル」になったが、妻曰く「夏の塩分補給はキャビアに限るわ」との事で満足そうだ(笑) ここで矢代ソムリエールが2種類目のグラスシャンパニュを出してくれた、「ボランジェ R.D. エクストラ・ブリュット(Bollinger R.D. Extra Brut)1997年」だ。

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「R.D.(レサマン・デゴルジェ)」とは最近の澱抜きを意味する。プレステージシャンパンのグランダネをさらに澱とともに長期間熟成させたものになる。現行品は「2004年」。自宅でも開ける機会が多く、同「1997年」や「1996年」「2002年」を開けている。この夜の「1997年」のデゴルジュマンは2008年。10年近くロブションの地下セラーで登場を待っていた1本と言う事で楽しみだ。
グラスに注がれると美しく濃いゴールド。洋梨のコンポート・クラッシュしたナッツ・上質な蜂蜜・軽いシェリー様の熟成香・・・複雑に絡み合った上品なプーケが広がる。ギスギスしておらず、控えめでまろやかな熟成感が何とも心地よい。余韻にはネットリした口あたりの心地よいスパイシー感と若干の苦味。きめ細かく溶け込んだ泡の残す微かな刺激が気品さを醸し出す。なかなか満足度の高い「R.D.」であった。

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そこへ3階の個室(サロン)を担当していた信国武洋エグゼクティブ・ソムリエが登場し、わいわいと近況やワイン談義で盛り上がる。信国ソムリエはちょうどスペインのワイン生産者を回って帰って来た直後だったので、その時の話なども楽しく伺えた。
そんな中運ばれた料理は、ミカエルの新作ホヤホヤと言う「卵 緑のヴェールをまとい、マグロ中トロのコンフィと“サラダニソワーズ”のイメージで(La Niçoise revisitée d’une façon moderne autour d’un oeuf en habit vert)」だ。妻は「土俵に緑の卵なの?!」と目を丸くしている。卵を使った「ニース風サラダ」をアレンジした一品で、緑を中心に色鮮やかに構成したとの事。半熟卵はサラダ菜のピューレでコーティングして色を付けた。

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敷かれたトマト、そして「ブラックオリーブのソース」の酸味と甘みがポイントだ。更にサフランとターメリックを使ったソースやサラダ菜のソースも複雑に添えられた。ねっとりした食感が混じり合ううちに一つの昇華した味わいになっていく。ミカエルの個性が垣間見えるエキゾティックな冷前菜であった。
続いて「ラングスティーヌ ズッキーニを巻き付けポワレにし、アーモンドと共に ソースコラリーヌで(La Langoustine en fricassee tiede de courgettes et amandes relevee a la menthe fraiche)」が登場する。テーブルには夏らしいサフランの香りが立ち上り、エスニックさも感じるいかにもロブションらしいプレートだ。ズッキーニで巻いた肉厚のラングスティーヌがプレート中央に鎮座する。

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その周りにはサフランの泡、そしてラングスティーヌの味噌の2種類のソース。ポワレされプリッとした食感のラングスティーヌは、かなり強い塩気でスパイシーな風味だ。甲殻類の旨味が存分に引き出され舌の中心に迫って来る。カレー風味で炒めたジロール茸も添えられ、暑い夏にぴったりに満足感を高めてくれた。
ではここで赤ワインをボトルでお願いしよう。矢代ソムリエールと相談しながらチョイスしたのは「シャトー・オーゾンヌ(Chateau Ausone)1970年」。ボルドーの右岸、サン=テミリオン地区は現在「プルミエ・グラン・クリュ・クラッセA」が4シャトー、「プルミエ・グラン・クリュ・クラッセB」が14シャトー、「グラン・クリュ・クラッセ」が64シャトーに格付けされている。

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中でもこの「シャトー・オーゾンヌ」は「シャトー・シュヴァル・ブラン」と共に「プルミエ・グラン・クリュ・クラッセA」に位置しツートップの地位を占める。我が家も上品なレストランで開ける事が多い。古いヴィンテージで言うと以前「1975年」を銀座「レストラン エスキス(Restaurant ESqUISSE)」で開けた。
「オーゾンヌ」とはローマの詩人にちなんだ名前。生産量は年2万~23000本。アラン・ヴォーティエが醸造責任者になった1995年以降、評価が更に上がった。急斜面の畑は耕すのも一苦労する。しかしそれが石灰岩土壌と相まって保水性を維持し、たぐいまれなワインを生み出す。信国ソムリエも「オーゾンヌ」を訪問した際、アラン当主から隅々まで案内されてテロワールとオーゾンヌの凄さを理解したと言う。

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グラスに注がれたこの夜の「1970年」は、クリアな透き通るようなレンガ色。香りは控えめながら複雑な印象だ。ピーマン・土・旨味を伴った腐葉土・スパイス・・、乾燥した動物の血など右岸らしいニュアンスも奥に微かに感じられる。滑らかな優しい飲み口だ。「1970年」らしい酸味中心の中に残った果実味を、優しい余韻が細く長く続く。我が家好みの飲み頃は超えていたが、綺麗な熟成を感じさせる。
クールで冷たいタンニンの印象は今の「オーゾンヌ」に繋がるイメージだろうか。ヴィンテージや作り手を越えたテロワールを感じた1本でもあった。そんな中運ばれてきたのは、メインの「フランス産乳飲み仔羊 様々な調理で火入れし、白インゲン豆のラグーを添えて(L’Agneau de Lait roti avec une caillette au choux vert, ragout d’haricots coco et chipotle)」。

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フランスボルドー産のアニョードレの様々な部位を楽しめる一皿だ。骨付き背肉はポワレし、鞍下肉も添えた。胸肉はちりめんキャベツで巻いてポワレし、フォワグラも一緒に包んだ。周りには白インゲン豆のラグーをたっぷりと敷いて、ネギのピストゥーので外縁を飾った。
そうそう嬉しいのは、ロブションスペシャリテの「ジャガイモのピューレ」がたっぷり別皿で添えられる事。妻も「やはりこれは外せないよね~♪」とご機嫌だ。エスプレットパウダーで少しピリッとしたアクセントを加えた白インゲンのラグー煮込み。その何か懐かしいニュアンスと共に、乳飲み仔羊らしいミルキーな肉質を満喫できる、フレンチらしいメインであった。

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ではお腹も一杯になった所でデセールを選んで行こう。5種類からそれぞれチョイスする。妻は「ペリカンマンゴー なめらかなエキゾチックのムースに閉じ込め リ・スフレの食感をアクセントに(La Mangue Perroquet aux parfums des iles, fine coque d’ivoire et riz souffle)」にした。マンゴーとパッションフルーツを合わせた、見るからに夏らしいシャーベットだ。
ホワイトチョコレートでシャーベットと同型を作り、その空洞の中に「マンゴーのムース」とカルダモンにつけた「パイナップル」を入れている。味わいの差だけでなく細かい細工も楽しい。そして私の「フレッシュ・パパイヤ クーリにし、グァバのムースを合わせて クレーム・ド・カシスと共に(Le Carioca coulis de papaye fraiche, mousse a la goyave,sorbet aux baies de cassis)」。

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グアバとパパイヤのムースを下に敷いて、その上にカシスのシャーベットを落とした。フレンチの食後にふさわしい何とも落ち着いた大人の味わいで気に入った。そこへ登場するのが、大きい可愛いチェリ~のオブジェが乗った「プティフールワゴン」、そしてケーキやアイス&ソルベの「デザートワゴン」だ。妻はワ~イとはしゃぐ割にはお腹一杯で食べれない(笑)見るだけでも幸せになるスイーツワゴン、私はいくつかお勧めや新作を頂く事にする。
更に続いて「生ハーブワゴン」も運ばれて来た。最近はポットで育てる様になったと言うバーブ達の中から、お勧めの「ジンジャーミントにレモングラス」「ストロベリーミントにジンジャーミント」などをブレンドして頂く。香りと言い温度と言い、こちらの生ハーブティを頂くとほっと落ち着く。

 ガストロノミー ジョエル・ロブション Joel Robuchon

帰りはいつもの様にお土産の「ブリオッシュ(今回はショコラ)」を頂き、渡辺総支配人や信国ソムリエ達が外まで見送ってくれる。車に乗り込みながら皆に手を振り再訪を約束する。今宵もいつもの様に「ロブション」の安定した王道のフレンチに美酒、そして的確なサービスで満足した時間を過ごす事ができた。世界で展開する「ロブション」話など新しい動きも色々聞けて面白かった。
我が家的には秋に東京で誕生する「ロブションDNA」レストランもかなり楽しみ。いずれ早々にここで報告する事になるだろう。東京のフレンチシーンが更に盛り上がることは間違いない。まだまだ酷暑は続く、厳夏に負けない様に体調には気を付けて、フレンチもワインもしっかり楽しんで乗り切りたい。

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