連休も明けて何かとバタつく時期だが、今日は4月に楽しんだワインの中から備忘録的にピックアップしておこう。まずは心地よい春夜に開けたのは、ピンクの葡萄の葉が可愛いラベルの「エリック・ロデズ グラン・クリュ アンボネイ レ・ボーリー ロゼ・ド・セニエ(Eric Rodez Les Beurys Rosé Maceration) 2009年」。モンターニュ・ド・ランス、アンボネイ村のレコルタン・マニピュラン
「エリック・ロデズ」の初リリースキュヴェだ。この「レ・ボーリー ロゼ・ド・セニエ」は、アンボネイ東側に位置する石灰質のボーリー区画、平均樹齢34年のピノ・ノワールを100%使用。3日間のマセラシオンを経て丁寧に造られたロゼだ。2009年9月20日に収穫。ノン・マロラクティック、ドサージュは3g/l。輝きのある深めの深紅色が何とも美しい。この色調の違いもロゼの楽しみの1つだろう。薔薇・桜餅・梅・葡萄の皮を感じさせるスパイシーさ。

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ノンマロらしく豊かで綺麗な酸が中盤から広がる。そこからアンボネらしいピノ・ノワールが飲みごたえも引き出す。そこにロゼらしいチャーミングなニュアンスが差し込んでくる。食前酒にあると満足だし、食後酒でもディナーの余韻をまとめてくれそう。バランスの良いまとまり具合から、1時間もすると更に開きだして、まさに赤ワイン的な味わい方もできる。セニエの良さ、アンボネの葡萄の質、
そしてエリック・ロデズらしさが絡み合ってなかなか満足度の高いロゼであった。続いて翌日開けたのもロゼ。新星として注目を集めている、2015年デビューのフレデリックとロドルフ兄弟による「ミニエール」。その「フレデリック・エ・ロドルフ・ミニエール アンフリュアンス・ロゼ・ブリュット(Frédéric & Rodolphe Minière Influence Rosé Brut)」をチョイス。モンターニュ・ド・ランス、エルモンヴィル村に拠点を置くレコルタン・マニピュラン。

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初めて世に出したキュヴェがこの「アンフリュアンス・ロゼ」だ。ピノ・ノワール35%、ピノ・ムニエ40%、シャルドネ25%。2009年をベースに2008年のリザーヴワインをブレンドする。30%新樽、70%は5年以上使用の古樽を利用し澱と共に7年寝かせる。ドサージュは6g/l。デゴルジュマンは2017年4月、1321本のみの生産量になる。ジャック・セロスで修行したフレデリックとロドルフ兄弟は、
セロス同様に樽発酵・樽熟成、ノン・マロラクティック長期熟成を経てリリースする。赤みを帯びた桜色。細やかな泡が持続的に立ち上る様も美しい。クリーミーな香りに続いてラズベリー、茎のニュアンス。口にふくむと樽ロースト香と小梅のような酸が混じりつつ旨味を押し広げる。ノンマロラティックらしいフレッシュな酸がチャーミングな余韻を形作る。「アンフリュアンス・ブリュット」を初めて飲んだ時に感じた驚きはなく、期待の大きさほどの味わいではなかったか。

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妻は「すっぱ!料理には合わせにくいね」と言いながらもグラスの色調を楽しんでいた。その翌週、地元のカジュアルな博多フレンチ「レストラン スーリール(Sourire)」で開けたのは「ジャック・セロス ロゼ・ブリュット(Jacques Sellose Brut Rose)」。言わずと知れたコート・デ・ブランのレコルタン・マニピュラン「ジャック・セロス」。この1本は2014年4月11日デゴルジュマン。
スモーキーなボトルに入った淡いオレンジピンクの美しさも印象的だ。ロゼというよりブラン・ド・ノワールっぽいのだが、実はシャルドネ比率が90%を超えるから不思議な飲み口。ピノ・ノワール分は「エグリ・ウーリエ」から仕入れていると言う。セロスらしい樽熟成によるシェリー香に加え、キャラメル・チョコレートのような舌全面にまとわりつくような甘みと旨みが押し寄せてくる。水元康裕シェフの「フランス産ホワイトアスパラ ソース・グリビッシュ」や

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「リードヴォーのポワレ モリーユ茸のソース」などと味わった。そうだ、セロスと言えばカジュアルな地元博多某イタリアンでも「ジャック・セロス ミレジム グラン・クリュ エクストラ・ブリュット(Jacques Selosse Millesime Grand Cru Extra Brut) 2005年」を開けた。アヴィズのシャルドネ100%でドサージュは1.3g/l、生産量年間4000ケース。丸く大きめの「ロブマイヤー バレリーナ」に注がれると
美しいゴールドの泡が微かに立ち上がるもしっとりと溶け込んでいる。ブリオッシュ・ナッツ・蜜林檎・アプリコット。ナッティながら中庸な厚みのあるアタックからセロスらしい深く複雑な味わいが表現されている。高い酸が骨格となりつつ、熟した果実の旨味と苦みが長い余韻につながる。オリーブオイルを振ってやや厚みを残した「チンタセネーゼ」と共に。平日軽く家飲みで開けたのはスタンダード・キュベ「ジャック・セロス イニシャル ブリュト ブラン・ド・ブラン

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(Jacques Selosse INITIAL Brut Blanc de Blancs)」。セロスの入門編ともいうべきシャンパーニュだが、その割に昔に比べると値段が上がり過ぎてるのが残念。デゴルジュマンは2012年12月。シェリー・カリン・洋梨のコンポート・パンデピス・・鼻先に長く残る厚みある香りがいかにもセロス。落ち着いた旨味、心地良くも切れのある酸味、程よいミネラルと苦み。デゴルジュから5年以上の時が、
それら要素を実にまろやかに統合する。すっかり溶け込んだ微細な泡の微かな刺激もアクセントに最後まで楽しめた。そしてトップ・キュベといっても過言でない「ジャック・セロス シュブスタンス ブリュット ブラン・ド・ブラン(Jacques Selosse SUBSTANCE Brut Blanc de Blancs)」。「SUBSTANCE」とは「本質」と言う意味。いわゆるソレラ方式がテロワールを独特に表現する。我が家は「リュー・ディ」シリーズよりもこちらを開けることが多い。

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2016年1月デゴルジュマン。深いゴールドに微細な泡が立ち上る。熟した黄桃・トロピカルフルーツ・メープルシロップ・乾燥したキノコ・・相変わらずのセロスならではの妖艶な香り。オイリーでドライな飲み口から引き込まれるような余韻が実に長い。切れ上がるような酸味と苦みが、甘みを抑えるようなバランス感を見せる。この1本もさすがの満足度であった。続く翌週平日に軽く開けたのは、
ブージー村のレコルタン・マニピュランである「ポール・バラ アノンシアード ブラン・ド・ノワール(Paul Bara Annonciade Millesime Grand Cru) 2004年」。1833年創立、現在は7代目のシャンタル・バラが継いでいる。中でもこれは、家業を守り続けてきた祖先へのオマージュを込めて造り出した特別なキュヴェ「アノンシアード」。セピア色のボックスには先祖の古い写真や歴史がびっしり描かれていてアルバムの様だ。市場でもなかなか見ない。

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グラスに注ぐと明るいイエロー、立ち上がる美しい泡は中庸の大きさ。開けた当初はグレープフルーツの皮・レモンコンフィなど柑橘系の要素、続いてクレームブリュレ・リキュール・・・明らかに乳酸発酵していない豊かで切れのある酸味と、少なめのドサージュからくる苦みが味わいの中心に位置する。溶け込んだ泡のアクセントとともにどこかフレッシュであるが、飲後はかなりドライな印象。
ブラン・ド・ノワールの力強さというよりも繊細さやフレッシュさの印象もかなりの比重を占める。最初の30分はチューリップ型のグラスで楽しんだが、1時間半越える頃から大きい白ワイングラスで味わう。その頃にはようやくミツ様の厚みのある香りと共に複雑さも出て来た。ドライさが強くバランスの悪かった味わいも、ようやく微かな旨味、少しのスパイシーさと共にバランスが取れてくる。もう少しドサージュがあれば全体のバランスが取れるのかもしれない。

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果実自体のふくよかさや凝縮感がもともと足りない。いずれにしろ後数年待って飲むとまた印象が上がりそうであった。さて続いて平日夜、果実味のあるシャンパンを少し軽く飲みたいと言う妻のリクエストでチョイスしたのは「ジャクソン734 デゴルジュマン・タルディフ(Jacquesson Degorgement Tardives Cuvee 734)」。200年以上の長い歴史と伝統を誇り、アイ村やディジー村など52haの自社畑から
地味ながらまっとうなシャンパーニュを生み出す「ジャクソン」。ナポレオン皇帝の結婚式にふるまわれ、「クリュッグ」創始者ジョセフ・クリュッグが学んだと言う事でも知られる。「デゴルジュマン・タルディフ」は1898年のキュヴェが「1」、そこから「734」番目のキュヴェがこれだ。中でもこの「No.734」は9年近い瓶熟成を経て2014年10月にデゴルジュマンされた1本だ。ノンヴィンテージであるが「No.734」は

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2006年の葡萄がベース(73%)、一番搾りのみ使用でシュール・リーで約12か月の熟成。シャルドネ54%、ピノ・ノワール20%、ピノ・ムニエ20%。グラスに注ぐと白い花・蜜・洋梨・程よい樽のニュアンス・・・香りの立ち方は控えめながら上品だ。柔らかくもしっかりしたミネラル感にやや鋭角の酸味が飲み口を印象付ける。ドサージュ3.5gからくる引き締まった余韻。果実の凝縮感は今1つか。
「No.734」はもう何本も開けたが、今回の1本はやや閉じ気味に感じた。もう少し時間が経って全体が統合してバランスが取れてくると更に良さそう。実は以前妻が特に気に入っていたのは「No.730」、アストンマーティン顧客アメニティーにもなったキュベだ。それに感じた「マスカットのような華やかな印象」「完成度の高いバランス感覚」には遠く、妻にはまたもや物足りないナンバーだったようだ。よって翌日「ジャクソン」を挽回すべくセラー室から取り出したのは

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稀少な「ジャクソン アイ・ヴォーゼル・テルム(Jacquesson Aÿ Grand Cru Vauzelle Terme Extra Brut)2004年」。2360本のみで日本への入荷もわずかな事から「幻のキュヴェ」とも言われている。アイ村の南向き斜面と言う最上区画0.3ha。1980年に植樹されたピノ・ノワール100%。デゴルジュマン2013年2月。ドサージュは1・5g/ℓ.石灰岩土壌。ややオレンジ色を帯びた濃い黄色が煌めく。
白い花・ミツ・茎っぽいニュアンス・・まろやかなアタックから中盤にかけてブラン・ド・ノワールらしいふくよかさが広がる。余韻にはエッジの効いた苦みが残る。ジャクソンらしい上質なフルーティーさを活かしつつ、ブラン・ド・ノワールの飲みごたえもそれなりに表現されている。キチンと造られているが何かが足りず引き込まれる要素は少ない。2杯程度で十分だったかな。そうだこれも挙げておこう、我が家お馴染みの博多寿司「鮨割烹 やま中 本店」で開けた

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ポル・ロジェ ブリュット・レゼルヴ(Pol Roger Brut Réserve)」。「やま中」はプレステージ・シャンパーニュは置いておらず、スタンダード・キュベ数種類のみ揃える。1849年創業で英国王室御用達の「ポル・ロジェ」と言えば、我が家ではスペシャル・キュベの「ポル・ロジェ キュヴェ サー・ウィンストン・チャーチル(Pol Roger Champagne Brut Sir Winston Churchill)」は良く開けるが、
このスタンダード・キュベは記憶がないほど久しぶりだ。そう言えばウィリアム王子の結婚式に出されたキュベ。ピノ・ノワール33%、シャルドネ34%、ピノ・ムニエ33%(異なるクリュやセパージュ、ヴィンテージを約30種ブレンド)。軽くてさっぱり主張なく鮨を邪魔せずにさらさらと頂ける。とはいえ33%のピノ・ノワールが下支えになって「やま中」の赤酢にも負けずに寄り添い、予想よりも良かった。そんな訳で、ロゼや軽い飲み口のワインが自然と多くなる春であるが、

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少ししっかりとしたシャンパーニュも開けてみたくなる。そんな気分の平日夜に開けたのは、我が家の定番のレコルタン・マニピュランの「エグリ・ウーリエ」から「エグリ・ウーリエ ブリュット ブラン・ド・ノワール グラン・クリュ(Egly Ouriet Brut Blanc de Noir Grand Cru)」。1930年創業だが評価が上がったのは1990年、4代目フランシス・エグリ(Francis Egly)氏が後を継いでからだ。
1996年からドミニク・ローラン(Dominique Laurent)氏に学び、新樽発酵を開始して樽使いも特徴的。ジャック・セロスとの交流も深い。アンボネイのグラン・クリュを中心としたブラン・ド・ノワールで75か月の熟成、2016年10月がデゴルジュマンの1本だ。茎っぽいニュアンスにオークのクリーミーな雰囲気がいつもながら飲みごたえ十分。時間とともに洋梨・黄桃に生姜やオリエンタルハーブのニュアンス。そしてナッツにカフェオレ。

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厚みあるオイリーなアタックに続いて、ボリューミーな果実味と高度な酸が中盤から口の中でせめぎ合う。そして余韻に顔を出す心地よい苦みが全体の印象を引き締める。ノン・ドサージュに近いが熟した果実の甘みと旨味があるため精妙にバランスが取れている。ワイン自体でかなり完成しているため料理を選ぶ。上質でありながら複雑な深みとこくのある料理には寄り添ってくれるだろう。そしてゴールデンウィークに入る前、
早い時間から開けた「ボランジェ R.D. エクストラ・ブリュット(Bollinger R.D. Extra Brut) 2002年」。シャンパーニュのグレイトヴィンテージと言われる2002年の「R.D.」は2年前にも開けた。以前「1997年」「1996年」なども開けている。誕生50周年に発売したこの「2002年」は、ジェームズ・ボンドお気に入りのシャンパンとして映画「007 スペクター」にも登場していた。「R.D.(Recemment Degorge)」とは最近の澱抜きの意味、

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つまり出荷直前に澱抜きされたもの。プレステージの「ラ・グランダネ」のアッサンブラージュをベースに8年以上長期熟成した。ピノ・ノワール60%、シャルドネ40%。23のクリュのうちグラン・クリュ71%、プルミエ・クリュ29%。ドザージュは3~4g/l。デゴルジュマンは2015年11月。微細な泡は美しく溶け込んでいる。洋梨のコンポートにスパイスの絡んだオイリーな香り。「R.D.」らしい酸化熟成のニュアンスが心地よい。
高くエレガントな酸がストラクチャーを構成しつつ、旨味を伴った苦みが余韻に残る。「ラ・グランダネ」の方が親しみやすく解り易いが、「R.D.」も慣れるとくせになるようなシャンパーニュだ。ちなみに合わせたスイーツは、我が家お馴染み「ジャン=ポール・エヴァン(JEAN-PAUL HÉVIN)」の週末限定「エクレール」やお気に入り「ペルル クラッカントゥ ショコラ」など。そして最後は連休に入った4月末、続けたのは「ボランジェ」の最上級キュベ

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「ボランジェ ヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズ(Bollinger Vieilles Vignes Francaises) 2005年」。今年の正月にお節に合わせて「2006年」を、それ以前は「2000年」「1999年」を開けている。この「2005年」からラベルデザインが変更、ピノ・ノワール100%のブラン・ド・ノワールである事を象徴する黒ラベルになった。シリアル・ナンバーが施されたボトルが入った箱は、
黒基調のシックモダンで重厚な木造りで、金のプレートや皮ベルトが添えられるなど豪華だ。葡萄の根に寄生するフィロキセラの被害をまぬかれた、樹齢80年を超える貴重な古木(ヴィエイユ・ヴィーニュ)から作られる。栽培法も伝統的な手法が取られ、一般的な接木は行わずに「アン・フール」という密集状態で植えられている。グラスに注ぐとゴールドの泡からクリーミーな香りが立ち上がる。この「2005年」は生産わずか4208本のみ。アプリコット・蜂蜜・パンデピス・・・

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温度が上がるにつれてブーケが複雑に錯綜する。アタックには柔らかな酸と繊細な旨みが広がる。コクがありながらどこまでもピュア。細かな泡はしなやかに溶け込んでいるが、同様に味わいもしっかり溶け込んでいる。そのためどこまでもすべらかでシルキーなのだが、味わいはとても奥深く深遠であった。春真っ盛りに開けたシャンパーニュの中からいくつかピックアップしてきたが、次回は初夏の休日に楽しんだバカンス的ワイン達の報告としよう。続く・・