4月になり更に混雑を見せるJR博多駅シティも、先月で開業7周年を迎えた。先週からは駅前広場で「博多ファーマーズマーケット」、JR九州ホールで「アートアクアリウム展2018」、屋上つばめの杜ひろばでは「杖立温泉こいのぼり祭り」が開催するなど様々なイベントで賑わう。何といっても注目は「中村キース・へリング美術館 × ブルックリン・ロースティング・カンパニー」ミュージアムポップアップショップ。
1980年代のアメリカ現代美術ポップアートを代表するキース・ヘリング(Keith Haring)。山梨の八ヶ岳裾の尾に2007年設立の「中村キース・へリング美術館」には、世界で唯一約200点のキース作品が飾られる。そのミュージアムショップと、ニューヨーク・ブルックリン発のコーヒー専門店「ブルックリン ロースティング カンパニー(BROOKLYN ROASTING COMPANY)」がコラボしたのが、九州初のポップアップショップと言う訳だ(~5月13日)。

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キースヘリングの作品と言えば、舞鶴にある福岡市健康づくりサポートセンター「あいれふ」のオブジェ、高さ4mある大きな赤い犬「UNTITLED」が馴染み深いだろう。我が家的には「シャトー・ムートン・ロートシルト(Chateau Mouton Rothschild) 1988年」の赤紫枠の中に可愛い羊デザインのエチケットを思い浮かべる。JR九州と言えばゴールデンウイーク期間中、NHK大河「西郷どん」や維新150年イベント関連の
観光客増加により、九州新幹線と在来線特急の予約率が上がっていると言う。「博多どんたく港まつり」もある事だし、観光ついでにJR博多駅シティ内探索も良いだろう。その9階10階に位置するのが飲食店街「シティダイニング くうてん」。この夜訪れたのは我が家お馴染み「オーグードゥジュール・メルヴェイユ 博多(Au gout du jour merveille HAKATA)」。この夜も小岸明寛シェフが上質の九州素材から紡ぎ出す、モダンかつ基礎のしっかりしたフレンチを頂きに来た。

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ブルゴーニュ、ヴォーヌ・ロマネを代表する名門「アンヌ・グロ(Anne Gros)」来日イベント以来かな。フレンチレストランとしては厳しい?立地とスペースの中、小岸シェフのバイタリティーを全面に押し出し頑張っており感心する。福岡では季節毎に伺いたいフレンチレストランだ。そう言えば先週は、JR九州の豪華観光寝台列車「ななつ星 in 九州」のスイーツやスペシャルディナーを担当する、
東京ミシュラン2ツ星・六本木「エディション・コウジ シモムラ(EdiTion Koji Shimomura)」下村浩司シェフが来店していた。それを聞いて妻は「また下村シェフの牡蠣のポシェが食べたいな~」とつぶやいていた(笑) さていつもの奥のテーブルに案内してもらう。ワインリストは多くはないが選び甲斐のあるあるワインも散見する。この夜は既に天神の「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」福岡路面店でシャンパンを飲んでいたので、アミューズに合わせて軽く

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桜色ロゼ・シャンパーニュをグラスで頂くが、直ぐに赤ワインをボトルでお願いする。チョイスしたのは「アラン・ユドロ・ノエラ ロマネ・サン・ヴィヴァン グラン・クリュ(Alain Hudelot Noellat Romanee Saint Vivant Grand Cru) 2006年」。以前、銀座「レストラン エスキス(Restaurant ESqUISSE)」で同「1997年」「2001年」を、自宅では「クロ・ド・ヴージョ グラン・クリュ 2008年」を開けている。
シャンボール・ミュジニーの家計であるアラン・ユドロが夫人とウージョに1964年設立したドメーヌ。夫人が「シャルル・ノエラ」の孫娘だったため、ノエラ家の畑4分の1を相続しこの「ロマネ・サン・ヴィヴァン」や「リシュブール」など、ヴォーヌ・ロマネの素晴らしい畑も手に入れた。ちなみに他の4分の1は「ジャン・ジャック・コンフェロン」が所有し、2分の1は1988年に「ルロワ」が購入した。2008年に1988年生のシャルル・ヴァン・カネットが

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祖父に請われてドメーヌを引き継いだ。祖父の時代は完全除梗で緻密なタンニン構造と言われていた。1920年に植えられた葡萄の「ロマネ・サン・ヴィヴァン」。「銀座 エスキス」での2本はどちらも華やかで香しいテロワールが見事に表現されていた。今回の「2006年」はまだ若いだろうから、醸し出す雰囲気を味わう事にしよう。グラスに注がれると、まずオークのニュアンスから始まる高い酸を感じさせる香り。
まだ閉じ気味とはいえブラックチェリー・赤身肉・細かい黒スパイス・・・奥から滲み出る少し土っぽい香りは発展の始まりを感じさせる。プーアール茶・若干青い好ましいアロマが飲み口に複雑さを加える。チャーミングな軽いアタックから、凝縮した赤い果実と黒い果実がまだ中心部分にしっかりと鎮座し、周りのミネラルの殻から容易には溶け出さない。苦味は長く残り余韻を形作る。開き切れないため本領発揮とまではいかないが、時間と共に「アラン・ユドロ・ノエラ」らしいエレガンスを

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仄かに感じさせる、今後楽しみなワインであった。では料理、小岸シェフらしい楽しいアミューズ達が運ばれて来た。妻が「うわぁ、相変わらず細かい作業だね!」とワクワクな様子。木細工器には桜の小枝も飾られ、ピンクと緑で全体的に優しい和の風情だ。即興で作っているからサービスの説明が追い付かないと笑、小岸シェフ自ら1つ1つ説明してくれる。中央に置かれた切り株には、パリパリの波打つパートフィルで「毛ガニ」を挟み、
アボガドと食用花を乗せている。扇型の有田焼には「下関産天然フグ」、2週間熟成させて食べ頃を狙った。それをほうれん草のベニエにして「オシェトラ・キャヴィア」を乗せた。桜を指した樹木には「イカスミのコロッケ」に「ホタルイカ」。ガラス小器には桜色のマグロのカマ。盛り沢山な春らしいアミューズを楽しんだ後は、前菜1皿目「オマールとアスパラ」だ。小岸家からこの夜のために持参したと言う竹で作られた軽く美しいプレートに、ビビットな赤・緑・黄が映える。

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中央に鎮座したオマールを、甲殻類を煮詰めたソース、グリーンアスパラのソース、そしてウニのマヨネーズと3種類の味わいで堪能する趣向だ。「佐賀産ホワイトアスパラバス」や佐賀の友人が育てる「グリーンアスパラガス」を添えて春を満喫する。更に友人に特別作らせたアスパラガスを発酵させたビネガー。このアスパラ香る独特な酸味が何とも心地良い。満足度をワンランク上げてくれる、細やかなアクセントであった。
次に運ばれてきたのは「対馬のノドグロ」。これも懇意の漁師から仕入れたもの。表面に軽く火を入れてサラマンダーで余熱を入れた。ナイフを入れようとすると、フンワリと蕩けるような仕上りがナイフ越しにさえ伝わって来る。バタフライピーで鮮やかな青色をつけたコンソメソースがテーブルで注がれ完成する。「正に美しき碧海を泳ぐノドグロの如しね♪」と妻。色は爽やかだが味わいは塩と旨味をきかせて濃度を感じるフレンチらしい着地。

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デザインと食感のアクセントを春のうるいと共に楽しめた。次にやって来たのはカマチ陶舗の皿に盛られた肉料理「オーブラック仔牛」。オーブラックといえば小岸シェフが修行した「ミシェル・ブラス」を思い出す。最近ではフランス・ミシュラン3ツ星返上を表明したことでも話題になった。あの返上は北海道ミシュラン特別版第2弾(2017年5月発刊)で「ミシェル・ブラス トーヤジャポン」がまさかの3ツ星陥落した事も遠因ではないか?
と思うのだがどうだろう。さて話を戻して「仔牛のロース肉」、これにじっくり火を入て最後に炭火で強めに炙って仕上げた。シンプルなジュのソースはやや厚みもあり、ピュアなオーブラック仔牛肉の魅力を存分に引き出す。インカの目覚めのピューレのほかに「フレッシュのモリーユ」「イタリア産アーティチョーク」、そして春らしく「九州産豆」を飾った。ミルキーながら噛みごたえと風味豊かな仔牛肉。ハラに近い部位と言う事で適度のアクセントになる脂もある。

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小岸シェフらしいこだわりの自家製スパイスの香りもワインと繋いでくれる。2時間が経って少し開き始めた「ロマネ・サン・ヴィヴァン」と共に堪能できた。そこへ小岸シェフから「まだお腹に余裕はありますか?パスタも用意しているのですが・・」と誘い水。いつも妻がお腹の限界を超える事から今回は調整して少な目にしてもらったにも関わらず、妻も「パスタ!?う~んパスタは食べたい・・」と苦悩だ(笑)
つい「欲」に負けてお願いする。そしてやって来たのは黒トリュフ山盛りの「リエーブル・ア・ラ・ロワイヤル」だ。イタリア産黒トリュフの下には硬め食感を残した「自家製パスタ」が隠れている。今流行りの隠す仕立てだ。千葉から久しぶりに届いたと言う貴重な「穴兎」。24時間真空処理する「ジョエル・ロブション」のレシピで仕上げてほぐしてパスタに絡めた。黒トリュフの妖艶な香りに続いて、リエーブルの独特の深い風味が絡んでくる。パスタを噛みしめるうちに味わいが1つにまとまる。

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余韻にもリエーブルと黒トリュフの風味がまとわりつくような美味しさだ。スライスされた黒トリュフは、肉厚で噛み締めると香り立つ。小岸シェフが「もう最後ですけど良いのが入ってるんですよね」と言う。「ロブション譲りのミニバゲット」もサービス精神旺盛の小岸シェフらしく添えられた。小岸シェフの誘いに乗って良かったと思えた1皿であった。一息付いて運ばれたデセールは「キャラメルとラムのアイス」。
日南のラニスターに黒糖のソースを垂らしている。ラムのニュアンスが食後にぴったりだ。小菓子には迷彩柄の「抹茶マカロン」や「抹茶ミルクレープ」なども登場して満足の締めとなった。出身地・佐賀でのイベントも多く参加し地域振興に貢献している多忙な小岸シェフ。この夜も2万円のコースを頼んだが、妻の「盛り沢山過ぎて量が多いのは避けたい」との希望で色々と工夫してくれた。さぁいよいよゴールデンウィーク、日本全国から人が集まって一層賑やかになる博多・・さぞ大忙しであろう。