ホワイトデーの夜訪れたのは、日本で最たる格式誇る「帝国ホテル東京(IMPERIAL HOTEL TOKYO)」。言わずもがな天皇家・宮内庁ご用達。隣接する外交の中心であった「鹿鳴館」と関連し、外国人を接遇する為の国を代表する迎賓館として1890年に開業した。「ホテルオークラ東京」「ホテルニューオータニ東京」と合わせて「日本ホテル 旧御三家」とも言われているわね。車を正面に付けメインロビーに入ると、真ん中に伸びる階段の袂、
日本美の象徴と言える桜を使用したこの時季ならではの華やかな装花が出迎えてくれ(~3月31日)、思わずわ~っと声がでる。その真上に輝くシャンデリア「ゴールデンローズ」は、金色のバラをイメージして368枚のガラス板を使用した物。左側に広がる「ランデブーラウンジ」には壁一面にガラスモザイク7600個が輝く迫力の「黎明(光の壁」、これはシャンデリアと同様に多田美波氏の作品よ。そう言えば昨年本館1階ロビーに出来た展示スペース「インペリアルタイムズ」では、

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3月から第2弾「日比谷時間 ~緑と歓び、寛ぎを」を開催中。⽇⽐⾕の街と帝国ホテルの歴史を紹介している。新婚旅行でマリリン・モンローが来日し、記者会見で「夜は何を着て寝ていますか?」の質問に「シャネルの5番」と答えたのはここ「帝国ホテル」でのエピソードなのよ。個人的に興味があるのは帝国ホテル建築史、余りにも豪華でありながら戦中の波に翻弄されていく歴史的建造物。
渡辺譲氏が設計した初代木骨煉瓦造は1919年に全焼。その後1923年に完成した、近代建築の三大巨匠フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)氏による鷲が翼を広げたような巨大な新館は、10のブロックをエキスパンションジョイントで繋ぎ合わせた構造で、全館スチーム暖房と言う当時では驚きの設計だったね(1967年解体、愛知県犬山市に玄関部分移築)。その後1954年に高橋貞太郎氏によるに別館と、1958年に東館が造られた(共に1980年解体)。

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そして1970年にこれまた高橋貞太郎氏による、地上17階地下3階の新本館が、1983年には山下設計による地上31階地下4階のインペリアルタワー(現在のタワー)が建設された。新本館は2008年に改装され、14階「インペリアルフロア」に新設された「フランク・ロイド・ライト・スイート」に、ライト館の内装や調度品を忠実に再現した。う~んあの巨大な世界的名作を取り壊したのはほんとに残念だったと思うけどね。
そうそう、ここに来て「帝国ホテル東京」の建て替え、周辺一帯を再開発する計画が噂されている。現在ホテルを所有・運営するのは三井不動産(2007年10月から筆頭株主)。ホテルに隣接するビル(明治時代は鹿鳴館だった)も取得した事から、いよいよ大規模再開発か?!と話題よ。そしてその布石と言われるのが今月29日にグランドオープンの「東京ミッドタウン日比谷(Tokyo Midtown Hibiya)」。これも三井不動産がやっている。

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2020年には築50年、改修を重ねて来たとは言っても老朽化は明らか。10年程前に一部リニューアルしたとは言え、配管や設備はやはり古いままなので、我が家もリニューアル後に新設したジュリアン・リード(Julian Reed)氏デザイン「インペリアルフロア」のスイートに宿泊したが、それ以来レストランには行っても宿泊してはいない。長期滞在でない限りかの「ランドリー部」は使わないしね。
旧御三家のひとつ「オークラ」は既に本館の建て替え中で来年営業開始だし、「オータニ」も地道に大型リニューアルを続けているし、ここは日本を代表する天下の「帝国ホテル」には歴史を踏まえつつも、時代を牽引する様な最新豪華な建て替えを希望したい。ちなみに「東京ミッドタウン日比谷」は地上35階・地下4階建て、デザインはホプキンス・アーキテクツ。世界最高の制震効率を達成する新世代の制震装置(HiDAX-R)を導入し、千代田区最大級の一時滞在施設を整備。

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災害時の電力供給も可とさすがに素晴らしい。11階から34階はオフィスフロア、地下1階から7階には商業施設全60店が入る。「旧三信ビルディング」にあったアールデコ壁面や、「鹿鳴館」を彷彿させる外観デザイン「ダンシングタワー」も必見ね。地下1階は8ショップによるフードホール、1階にはニューヨークから日本初上陸のジョディ・ウィリアムズ(Jody Williams)氏による「Buvette(ブヴェット)」。
2階はパリで活躍中の日本人シェフ中山豊光氏による「Restaurant TOYO」。3階には老舗書店「有隣堂」が出した南貴之氏プロデュースの「ヒビヤ セントラル マーケット(HIBIYA CENTRAL MARKET)」、そして京都の老舗料亭「瓢亭」の新業態。7階はミシュラン東京3ツ星の「日本料理 龍吟」が六本木から移転オープン。・・と言う訳で前置きが長くなったが、この夜伺ったのは「帝国ホテル東京」メインダイニング、フランス料理「レ セゾン(Les Saison)」。

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ロビーの咲き誇る桜を愛でつつ、中2階に繋がる真ん中の階段を主人に手を引かれながら、ドレスの裾を引き上がっていくわ。こう言うクラシックな風情には基本のブラックソワレが合うでしょ。レストランの入り口では、さすがの教育が行き届いたフタッフ達が笑顔で迎えてくれる。年季の入ったクラシカルな店内は重厚感ある落ち着いた空間、時代を感じるシガーサロンもある。奥の個室的ダイニングに案内されるわ。そう言えば以前
「1日1組限定ティエリー・ヴォワザン(Thierry Voisin)シェフ特別ディナー(個室)」と言うプランがあって2度お願いした事がある。その他ワインイベントで来たりもしたけど、ここは随分と久しぶり。スタッフも変化していたけど、ティエリーシェフは相変わらずのスマートなイケメンぷりでテンション上がる(笑)フランス・シャンパーニュ地方からこちらに来てもう13年も経つのね。そして今回は何よりパリのミシュラン3ッ星レストラン「アルページュ(Arpège)」の

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巨匠アラン・パッサール(Alain Passard)シェフが来日しての「アラン・パッサールとティエリー・ヴォワザンの華麗なる饗宴」が開催!大人の色気満開な素敵な天才アランシェフに逢えるのでとっても楽しみ♪ 彼が帝国ホテルでイベントをするのは2000年以来18年ぶりよ!以下は詳しく主人から・・
テーブルに着いてまずは乾杯、運ばれたのは「ビルカール・サルモン ブリュット・ロゼ(Billecart Salmon Brut Rose)」マグナムボトル。実は今回のディナーイベントは、1818年にマレイユ・シュール・アイ村に設立されたシャンパーニュ・メゾン「ビルカール・サルモン(BILLECART SALMON)」が、創立200周年を記念した「美食をテーマとした世界ツアー」の一環。今年は200周年の特別ボトル「Cuvee200」も造りアラン・パッサールシェフを迎えて、日本「レ・セゾン」の他にもシンガポールでは「オデット」、ニューヨークとロサンゼルスでは「ジャン・ジョルジュ」、

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ロンドンでは「ラ ダーム ドゥ ピック」で開催となっている。ニコラ・フランソワ・ビルカールとエリザベス・サルモンが結婚し2人の名前を付けた「ビルカール・サルモン」は、6代にわたって家族経営を続け「シャンパン6大家族経営」の1つに数えられる。現在はフランソワとアントワーヌのローラン・ビルカール兄弟が中心を担う。家族経営であるが故に自由な発想で運営されている。
例えば50年前にシャンパンとしては初めてビール醸造からヒントを得て清澄化工程(デブルバージュ)を導入。果汁を5℃以下まで冷却して澱と完全に分離し、その後11~15度まで温度を上げて3週間ほどかけて発酵する。これによって出来立てのワインが過度に酸化する事を防ぎ、ピュアな果実味を保てると言う。また「エクストラ・ブリュット」はパリの3ッ星「ギィ・サヴォワ(Restaurant Guy Savoy)」からの依頼で造られるなど星付きシェフとの交流も深い。

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アラン・パッサールシェフと「ビルカール・サルモン」との付き合いも長く、その縁から今回の美食イベントが実現したとの事。グラスに注がれたその桜色に輝く「ブリュット・ロゼ」は、クリーミーなアタックから美しい酸が骨格をなしつつ、ラズベリーなど赤い果実のチャーミングさを引き出す。スパイシーな余韻もまた美しく、ディナーの始まりにはぴったり。果実味のふくよかさ・厚みもあるのでアミューズから前菜まで料理にも十分合いそうだ。
今宵のメニューはパッサールシェフとヴォワザンシェフの料理が交互に提供される。アミューズ・ブーシュも各一品ずつ。まずはパッサールシェフのスプーンに乗せられたアミューズ、ジャガイモとポロネギに黒トリュフの香りを漂わせた。上には蕎麦の実を振って仄かな食感を加えている。口の中でやんわりと崩れていく、儚く柔らかい味わいだ。続くヴォワザンシェフのアミューズは「今夜はせっかくなので私のスペシャリテをご用意しました」と言う事で、2年前から定番のそれ。

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「Les Saison」ロゴ入りのオリジナル缶の中には、ピスタチオとあおさ海苔のクリーム。下には鶏のジュレを敷き、更に底にはボンタンカンパチのマリネが潜んでいる。ボンタン(文旦)を餌に飼育し、魚臭さを抑えたボンタンカンパチを用いた。最後に醤油のフリーズドライパウダーも降って深みを出している。重層的で余韻の長いアミューズにシャンパンも進む。思えば「ビルカール・サルモン」は以前JAL国内線ファーストクラスでも提供されていた。
ピッコロから注がれたその保存の悪さが記憶に染み付いていたが、流石に今回のは保存が良い(ちなみに現在は国内線もマグナムで提供しており、ANAとの差別化として評価している)。さて前菜がスタート、まずはパッサールシェフの「菜園を彩る鮮やかな野菜のラヴォオリ」の登場だ。カラフルな4種類のラビオリの、爽やかな野菜の香り立つスープ仕立ての一皿だ。「赤」はビーツ・ポロネギにピーマン、「オレンジ」は人参・オレンジにエストラゴンの風味を加えた。

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「緑」はセロリとグリンピースにアニスとウイキョウを香らせて。そして「黒」は根セロリにジャガイモと黒トリュフと言う、これまた黄金律の組み合わせだ。ラヴォオリの周りに注がれているのは、繊細で香り高い野菜のブイヨン。微かにミントを漂わせた、まさにハーブティーのようなスープがそれぞれの素材を引き立てる。しかも4つの繊細なラビオリが適材適所に配置されたスパイスの風味や野菜の香り・食感と共に共鳴しながら、
食べ手の満足度をかなり上まで引き上げてくれた。妻は「これこそ今のパリだね♪」と大層気に入っていた。ちなみにピーマンはパッサールシェフが自らの農園からわざわざ持参したこだわりの品だ。「肉の魔術師」と言われ加熱調理の名手としてその名を馳せていたが、狂牛病の発生を機に2000年頃自身の菜園を持ち、野菜のみの料理にシフトして一世を風靡した。近年増々軽い味わいが主流になりつつあるが、そんな現代の潮流を先んじて捉えていたとも言える。

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今回の特別ディナーには5種類の「ビルカール・サルモン」が付いており、そのテイスティングも楽しみの1つ。続いてやって来た2種類目は「ブリュット ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ(Billecart Salmon Brut Blanc de Blancs Grand Cru)」、こちらもマグナムボトルで提供される。クラマン、アヴィズ、オジェ、ル・メニル・シュール・オジェ、シュイィの5のグランクリュのシャルドネで造られる。
ドサージュ7g。グラスに注がれると白い花・ブリオッシュ・塩気を感じるミネラル、その奥にはミツ・白桃・・少し開きかけた香りも感じられる。マグナムと言う事もありまだかなりフレッシュな飲み口だ。ブラン・ド・ブランらしい清廉なアタックから穏やかな果実の甘さが顔を出し、上品な酸と共もに長く細い余韻を構成する。それを楽しんでいるところに運ばれて来たプレートは「トリュフクリームをからめた青豆のニョッキ 2014より熟成させたコンテチーズ」。

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テーブルで石川夕賀ソムリエールが黒トリュフをガシガシとたっぷり削り完成する。香り豊かなヴォワザンシェフ人気の一皿だ。黒トリュフとフォンドボーのソースに、4年間も熟成させた特別なコンテの濃厚な風味が重なる。黒トリュフは今年は雨も多かったのでかなり良かったと言う。赤玉ねぎのピクルスを数粒乗せて、色合いと酸味のアクセントを加えた。グリンピースのニョッキのねっとりした食感と風味を中心に、
フレンチらしい重層さがボワザンらしい美味な味わいであった。・・と今回はここまで。次回は「アラン・パッサールとティエリー・ヴォワザンの華麗なる饗宴」料理の続きと、揃って登場したスターシェフ2人、アラン・パッサール氏とティエリー・ヴォワザン氏との楽しい時間。そしてコースに付いていた5種類の「ビルカール・サルモン」の他に、ボトルでお願いしたあの「世界一の赤ワイン」に歓喜する妻の報告もするとしよう。幸せなホワイトデーのディナーはまだまだ続く・・・後編

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