イルミネーショが輝き車も混む賑やかな師走クリスマスシーズン、この夜向かったのは博多駅に程近いスモールラグジュアリー「ホテル日航福岡」。ベージュ色の大理石が美しいエントランスロビーの真ん中には、今年も大きなツリーが飾られ華やかさを演出する。妻はかわいい~と駆け寄り、ツリーの足元に飾ってあるテディベアやプレゼントなど眺めている。先月は大相撲九州場所に吹き出た問題で、
某横綱の聞き取りなどもこのホテルで行われた為、マスコミも押し寄せ大変だったようだ。ロビー奥の階段に向かうと、2階のメインダイング「レ・セレブリテ(Les Celebrites)」の
持光誠一郎支配人が上から出迎えてくれる。そこは我が家お気に入り定番フレンチレストラン。「ホテル日航 レ・セレブリテ」ブランドと言えば、セーヌ河畔の15区にある旧「ホテル・ニッコー・ド・パリ(Hotel Nikko de Paris)」。我が家お馴染みフレンチの巨匠、

ホテル日航福岡 クリスマスツリー

ジョエル・ロブション(Joel Robuchon)氏が1978年から1981年までディレクターとして関わり、無星から2ツ星まで引き上げた事でも知られている。加えて世界のショコラティエ、ジャン=ポール・エヴァン(Jean-Paul Hévin)氏もロブション氏に見いだされ、1976年から1988年までロブション氏と共にそこに在籍していた。現在、福岡の「レ・セレブリテ」は明るく豪華リゾート風のダイニングでありながら、
上品で落ち着いた大人の空間。さすがに賑やかなクリスマスウィーク、ダイニング(56席)もはやはり日々満席状態という。そんな中案内されるのは今夏にも使った静かで優雅な個室(8名用)、デーブルには赤いクリスマスらしいフラワーアレンジメントも用意してくれていて妻も嬉しそうだ。そこに挨拶に来た森田安彦料理長。シャンパーニュ地方での修行歴があり「ボキューズ・ドール2015」日本第3位の森田シェフが作るモダンフレンチは我が家のお気に入りだ。

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今夜は森田シェフにお任せで「白トリュフ尽くしのメニュー」5万円をお願いした。聞けば今年のアルバ産白トリュフは10月には入荷がなかなか安定しなかったとの事。フランス産黒トリュフも合わせて味わって行くとしよう。まずはシャンパーニュで乾杯だ、白トリュフメニューに合わせた特別なワインリストに目を通す。選んだのはクルスマスらしい華やかさの「ペリエ・ジュエ ベル・エポック ブリュット(Perrier JouetCuve Belle Epoque Brut) 1988年」。
1811年エペルネに創業した老舗シャンパニュ・メゾン「ペリエ・ジュエ」。1961年にはイギリスのヴィクトリア女王、その後フランス王室の御用達になっている。そのプレステージ・キュヴェが「良き時代」を意味する「ベル・エポック」。ボトルに描かれた白いアネモネは、1902年に3代目アンリ・ガリス(Henri Gallice)がアール・ヌーヴォーを代表するフランスの工芸家エミール・ガレ(Émile Gallé)依頼したもので、1964年に発見された。

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ボトルのグリーンに白いアネモネが、赤い薔薇と相まってテーブルに映える。そう言えば今秋に銀座シャネルビルの「ベージュ アラン・デュカス 東京(BEIGE ALAIN DUCASSE TOKYO)」で同「2002年」を開けた。思えば「ベル・エポック」の80年代は初めてか。今年は「1988年」ヴィンテージの「クリュッグ」「クリスタル」「ドン・ペリニヨン」を開けていたので、今回その比較も楽しみだ。
グラスに注がれると、艶やかなゴールドが個室のライトに煌めく。上品にゆっくりと立ち上がる微細な泡はすぐに消えてまるで白ワインの風情。しかし口に含むと溶け込んだ泡がシミジミと刺激してくる。時間をかけて熟成したシャンパーニュならではの楽しさだ。やや獣ぽっさも残した蜜・白トリュフ・・それでも同ヴィンテージの「クリュッグ」や「クリスタル」より穏やかな印象。若い「ベル・エポック」に特徴的なミネラルはどこまでも柔らかい、余韻は短く軽やか。

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上品に年輪を重ねた穏やかなシャンパーニュであった。いよいよ料理が運ばれて来た、まずは白トリュフの香る美しいアミューズ「なめらかな鴨のフォワグラのクネル 遅摘みゲヴェルツトラミネールの香り」だ。フォワグラのムースの底に「ヒューゲル ゲヴェルツトラミナー・ヴァンダンジュ・タルディヴ(Hugel et Fils Hugel Gewurztraminer Vendange Tardive) 2007年」で作ったジュレを敷いて味わいに奥行きを出した。
レモンのピューレやコンフィも散らして余韻には軽やかなアクセントも加えて。1639年にアルザス地方リクヴィールで創業した歴史深い「ヒューゲル」。アルザスの遅摘みヴァンダンジュ・タルディヴと言えばヒューゲル家だ。通常より4~6週間遅らせた熟葡萄を、最良の葡萄畑から最良の年のみ摘む。サッと一緒に出された「ゲヴェルツトラミナー・ヴァンダンジュ・タルディヴ」はフルーティで深みがあり、今回の様な料理にも実に効果的に使えていた。

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続く前菜は「北海道産帆立貝柱と冬の恵みのサラダ仕立て」。底にはリンゴのピューレを敷いて、帆立、リンゴのスライス、トリュフのスライスなどで構成したサラダ仕立ての前菜だ。柑橘系のヴィネグレットソースで味わいをまとめつつ、パルミジャーノやクルミもアクセントに。「ベル・エポック」と共に爽やかに楽しむ。ではここで赤ワインもボトルで開けよう。こちらのセラーのワインも古いワインがどんどんなくなっていると言う。
「ブルゴーニュの古酒はなかなか良いのが手に入りません」との事だが、選んだこれは良かった。「ジャン・ジャック・コンフュロン ロマネ・サン・ヴィヴァン グラン・クリュ(Jean-Jacques Confuron Romanee-Saint-Vivant Grand Cru) 2000年」だ。プレモー・プリセにある18世紀から続く「ジャン・ジャック・コンフュロン」と言えば、かの伝説の「シャルル・ノエラ(Charles Noellat)」譲りのグラン・クリュを所有する。

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前当主ジャン・ジャックの妻がシャルル・ノエラの孫になる。「ロマネ・サン・ヴィヴァン」「クロ・ヴージョ」等はシャルル・ノエラから相続した貴重な畑というわけだ。シャルル・ノエラが所有していた「ロマネ・サン・ヴィヴァン」は1988年に「ルロワ」が買収した。そのため今は「ルロワ」0.99ha、「ジャン・ジャック・コンフュロン」0.5ha、「ユドロ・ノエラ」0.48haが隣り合わで並び所有する。
その「ジャン・ジャック・コンフュロン ロマネ・サン・ヴィヴァン」を今宵は楽しもう。現当主はジャン・ジャックの娘婿アラン・ムニエ。8haのブドウ畑は1991年よりビオロジック栽培、2003年からは馬による耕作開始。原則として完全除梗。平均30hl/haを下回る収量制限で早期瓶詰め。グラスに注がれるとややレンガを帯び始めたルビー色が揺れる。生薔薇・ドライフラワーの花束・赤果実・紅茶・・・微かに立ち上る砕けたスパイスアクセント。

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時間と共に麝香や濡れた土、赤肉っぽいニュアンスも流れ出す。「2000年」はまだ新樽100%だったが(現在はグラン・クリュでも70%)、樽香は酒質に溶け込み滑らかに調和している。アタックに続く軽い質感が羽毛のように何ともチャーミング。凝縮感はないが、今日のシャンパンと同じ流れのバランス良いエレガントな飲み口が満足感を高めてくる。そんな満足の味わいの中運ばれたのは、
妻のお楽しみのフグ白子の一皿「下関産虎河豚白子と茸のフリカッセ 香り高いパルメザン風味のリゾット」だ。一口大に整形したフグ白子のフリカッセが乗ったリゾット。テーブルで白トリュフがガシガシと音を立てながら削られて完成する。セップ茸などのキノコ類も香りに味にと存在感を見せる。熱々のフグの白子は口中でとろりと溶けて、リゾットと混じり合い妻の目が輝く(笑) この時期ならではの美味な嬉しいプレートだった。

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次に登場したのは「玄海産寒平目のブレゼとポロ葱のフォンデュ ソースアルベール」。こちらもテーブルでサクサクと白トリュフが削られて、濃厚な香りが部屋に広がる。ふっくらとした大きな平目はすましバターを塗って、細かいパン粉をつけてサラマンダーで仕上げた。ソースアルベール(Sauce Albert)はノイリー酒とエシャロット・シャンピニオンを煮詰めて、バターを加えたクラシックなソース。
とは言え現代的な軽やかさとキレも感じさせる味わいがピタリと着地している。底に敷いたポロ葱のフォンデュのしっとり感が、平目の表面の少しパリリとした食感とコントラストになり何とも良い塩梅だ。妻も思わずニッコリしている。「熱々を味わっていただきたい」と森田シェフの言う通り、熱々の表面から細やかなパン粉が溶ける具合、そしてソースの繊細なクラシックさが調和した絶品のモダンフレンチであった。さて、一息付く「口直しの氷菓」が運ばれる。

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東南アジアのカラマンシーが、柑橘らしい爽やかさですっきりだ。さぁお待ちかね、メインの肉「本日のジビエのサルミ仕立て レ・セレブリテ風」がやって来た。贅沢にもフランス産山鳩と糸島のカルガモの両方を味わうプレート。テーブルでソースが流され、更にまたまた白トリュフがたっぷり削られるのだから贅沢だ。奥には山鳩の胸肉と腿肉、手前にはカルガモの胸肉と腿肉。
旨味溢れるとろりとしたサルミソースが全体の味わいをまとめ上げる。腿肉は焼き上げた後にサルミソースで更に少し煮込んでソースとなじませている。肉質的には山鳩がやや野趣っぽい。黒トリュフや栗が乗せられているところにだめ押しの白トリュフ。何とも満足感の高い一皿であった。お腹も一杯で寛ぐところにデザート「あまおうのスープ ライムが香る練乳のグラス」がやって来た。これは苺と練乳の甘さと言うよりは、塩とオリーブオイルをアクセントにしてさっぱり上品な、

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まるで食事の様な味わいのデセール。妻も「なかなか考えたものね♪」と感心している。残ったシャンパンと楽しんでいる所にサプライズ!生クリームたっぷりの「あまおうのショートケーキ」がホールで登場する。「Merry Christmas」プレートも乗っていて妻は大喜びだ。ふわふわスポンジに甘い生クリームをハーブティーと共に味わい、幸せな穏やかなクリスマスディナーを締めくくる。
帰りは森田シェフと持光マネージャーが寒い中外まで見送ってくれ、フラワーアレンジメントもプレゼントして頂いた。車に乗り込みまだまだ賑やかな「ホテル日航福岡」を手を振りつつ後にする。そうそうホテルのロビーにはクリスマス後、キラキラツリーに変わって新年を迎えるための「壱岐の鬼凧」が飾られた。宙に舞ういくつもの美しく縁起良い凧が、一気に日本の正月気分にさせてくれるだろう。さぁいよいよ年越し、来年も良い年にしたいものだ。

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