師走も後半、クリスマスの声を聞く頃はフレンチに加えて我が家も河豚や玄界の魚を楽しみつつ、年末年始の準備に追われる。毎年この時期に開けるワインはタイミングを逃してお蔵入りしがちなので、取り急ぎいくつかアップしておこう。この夜は鐘崎漁港から直接取り寄せた「天然河豚刺し」を楽しみつつシャンパーニュを開ける事にする。東日本が蟹なら西日本は河豚か。我が家は蟹よりも河豚を楽しむ事が多い。
蟹の方が旨味があり料理に華やかさが増すが、やはり西ならでは、ふぐ(ふく)刺しの奥深い旨さが好きなのである。柑橘系のポン酢と共に味わう事が多い河豚刺し(薄造り)。シャンパーニュは上品な甘みや旨味があるとより調和する。ミネラルだけが余りに強いと魚全般に言えるが平行線をたどる。と言う訳で開けたのは「モエ・エ・シャンドン MCⅢ(Moët et Chandon MCⅢ)」。第69回カンヌ国際映画祭開催中に行われたチャリティイベント

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「シネマ・アゲインスト・エイズ(Cinema Against AIDS)」で登場し、その後限定発売されたプレミアキュヴェだ。「MC」とは言わずもがな「モエ・エ・シャンドン」、「Ⅲ」は3つの異なるステージ「メタル(ステンレスタンク)」「ウッド(オーク樽)」「ガラス(瓶)」のワインを融合させた三位一体のシャンパンを表わす。つまりベースとなる「モエ・エ・シャンドン 2003年」はステンレスタンク発酵。
そこに大樽で半年間熟成した同「1998年」「2000年」「2002年」。さらには瓶内熟成中の同「1993年」「1998年」「1999年」をブレンドすると言う何とも贅沢な作りだ。ドサージュは5g/l。黒い重厚な木製ボックスを開けると、艶やかな黒いカラスボトルにシルバーの文字が光る。ボトルの底にはキラキラのメタルプレートもはめ込まれている。大き目なメタルキャップはシャンパンストッパーにもなる。妻は見た目だけでも既に

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「キャ~素敵♪既に美味しそうじゃない??」とテンションが上がっている。10年熟成させただけあってコルクも締まっている。グラスに注ぐとクリーンなイエローゴールドに超微細な泡も美しい・・香りの立ち上がり方は穏やか。若さを感じさせる還元香も残っているが、やはり優しく丸い。トロリとしたミツのように甘いニュアンスもある。綺麗な酸と旨味が調和し、余韻は短いが満足感を残してくれた。
完成度が高くエレガントな味わいはそれでも集中力があり、まだまだ時間をかけて熟成して行くだろう。ではついでに、メンズライクな黒艶ガラスボトルにメタルの輝きヴィジュアルで選んでみたのは「シャルル・エドシック ブラン・ド・ミレネール(Charles Heidsieck Blanc des Millenaires) 1995年」。1851年にシャルル=カミーユ・エドシックが設立したシャンパーニュ・メゾン「シャルル・エドシック」。英王室ほか各王室御用達でも知られている。

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この「ブラン・デ・ミレネール」は「メニル」「クラマン」「アヴィーズ」などコート・デ・ブランのシャルドネで作られるブラン・ド・ブランだ。しかも良年1995年、古代ローマ時代からのクレイエール(白亜質土壌)で15年以上熟成。グラスに注ぐとグレーがかったゴールドが煌めく。柑橘系のコンフィ・バージンオリーブオイル・薄い蜜・ミカンの熟した香り・・と仄かな熟成感も心地よい。
アタックの甘みと酸味が混じった滑らかなタッチ、余韻に広がる旨味が上品だ。同ビンテージは2年毎この時期に開けているが、今年の1本はより熟成してバランスが取れ始めている印象だった。メンズライクついでに、ハード系ボトルのこれもこの季節に開けやすい「アルマン・ド・ブリニャック ブリュット・ゴールド(Armand de brignac brut DX Gift Box)」。1763年創業の家族経営老舗メゾン「キャティア社(Alexandre Jean Cattier Champagne)」の、

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職人によって手作りされる美しいボトルがウリだ。オスカー賞・ゴールデングローブ賞・MLB・NBA・NFLなどで採用されている事から特にアメリカで人気。それまでアメリカでは「ルイ・ロデレール クリスタル・ブリュット(Louis Roederer Cristal Brut)」がステータスシンボルであったが、ジェイ・ジーとのトラブルにより一転、彼が次に選んだ「アルマン・ド・ブリニャック」が取って代わった。
しかし実は元々フランスのファッションブランド「クレージュ(Courrèges)」のアンドレ・クレージュ氏がオーダーした物。その後「エリザベス女王戴冠50周年記念」時に復刻された。2007年から販売をスタートし、生産量も少ない事からずっと完売しているそう。よって味はともかく、金の紋章「スペードÅ」が付いた黒いラッカー塗装のケースをセラー室から出すと、取りあえず妻のテンションはあがる。中には黒いサテン生地の中にキラキラ輝くアンティークボトル。

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装飾を施した重厚なボトルはミュズレなどが取り付けられた最後に、磨かれた4つのピューター(スズ主成分の合金)が、熟練した装飾職人の手で1本1本装着されるので、1時間に30本しかできないとの事。まぁイメージ戦略が功を奏したシャンパンの代表格だろう。売り上げ復調した「クリュッグ(Krug)」や日本で特に売れる「サロン(Salon)」も少なからずそういう面がある。ただ突き詰めるとシャンパーニュの売り上げは程度の差はあれこそ、
そういうイメージ戦略に左右されるものだから、消費者としては好みをスクリーニングしていきたい。グラスに注ぐとボトルの色と同様、かなり薄いイエロー。ドライな柑橘系の香り。ドサージュは控えめ。余韻には苦みの残るミネラル感につつまれる。もう少し甘みや旨味があるとバランスが取れそうだが、重心の偏った味わい。葡萄の果実味は余り感じずリキュールっぽい味わいでもある。奥行きや高貴さはなく日本で食する緻密な料理には合わせにくい。

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パーティの最初の乾杯には良いだろう。本物のシャンパーニュ好きにはお勧めしないが、まさにインスタ映えはするシャンパンと言える(笑) さてプレフェスティブも良いが、次は私の趣味で開けた「エリック・ロデズ グラン・クリュ アンボネイ アンプラント・デ・テロワール ピノ・ノワール(ERIC RODEZ Grand Cru Ambonnay”Empreinte de Terroir”Pinot Noir) 2004年」。さすがに少し飲みごたえのあるシャンパーニュを欲した。
アイ村・ブジー村と並ぶピノ・ノワールのアンボネイ村。そのRM「エリック・ロデズ(ERIC RODEZ)」。「クリュッグ」のチーフエノロジストだった当主らしいのその味わいは、我が家でも定番のシャンパーニュの1つとなっている。2005年からはオリジナルのアロマテラピー農法を開始。225Lのオーク小樽で醸造しマロラクティック発酵(MLF)は行わない。ノンフィルター・ノンコラージュとこだわっている。ナチュラルな木箱に入ったこれは、

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中でも古樹のピノ・ノワール100%で造られる最上級キュヴェ「アンプラント・デ・テロワール(テロワールの足跡)」。グラス注ぐと美しいゴールド、ナッツ・林檎のコンポート・黄桃・微かなメープルシロップ・・オーク樽のニュアンスは「ジャック・セロス(Jacques Selosse)」や「アンリ・ジロー(Henri Giraud)」よりも軽めとは言え、複雑で色気あるアロマ。溶け込んだ微細な泡が心地よいミネラル感と共に、
飲みごたえある飲み口を構成する。古樹ピノ・ノワールらしいふくよかな味わい。そこに乳酸発酵しない切れのある酸が重なり、上品さを醸し出す。エレガントさと力強さの共存した美味なブラン・ド・ノワールであった。では次は妻が喜ぶ愛のピンク天使「アムール・ド・ドゥーツ ロゼ(Amour de Deutz Rose Brut) 」も開けよう。アイ村のメゾン「ドゥーツ」が、新プレスティージュ・キュヴェとして発売したもの。年間生産量6000本限定のうち日本には600本のみ入った。

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セラー室には「2007年」と「2006年」があったが、結局また「2006年」を開ける事にした。グリアボトルに揺れるオレンジがかったピンクの波、そこに煌めくクリーミーな泡が美しく、まさに女性好みだろう。我が家お気に入りの白い「アムール・ド・ドゥーツ」と同様、淡いピンクのボックス帯には天使のエンボス。フランスの彫金師パスカル・モラビト(Pascal Morabito)デザインのピンクゴールドのミュズレは、
天使の右手に光るダイヤモンド(ガラスだが)が埋め込まれており、ペンダントにもなると言うロマンティックな演出まである。言うまでもなく「アムール(愛)」と「ダイヤモンド(永遠の絆)」でクリスマスにもうってつけだろう。ピノ・ノワール55%、シャルドネ45%。グラスに注ぐと立ち上がるピンクの泡・・クリーミーなアタックから酸味と品の良いミネラル感の後に仄かな苦みを残す。今年は2本目を開けた事になるが、変わらずクローズ気味で複雑さには今一つ欠ける。

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味わいが統合するにはもう少し時間がかかりそう。やはり「アムール・ド・ドゥーツ」であれば白い天使の「ブラン・ド・ブラン」の方がお勧め。そんな華やかさが増す12月とは言え、平日には軽い赤、ピノ・ノワールで喉を潤したくなる。セラー室から「ファミーユ・ヒューゲル ピノ・ノワール・グロシ・ローイ(Famille Hugel & Fils Pinot Noir grossi laue) 2010年」をチョイスする。
1639年から家族経営するアルザス地方を代表するドメーヌ「ファミーユ ヒューゲル」。「グロシ・ローイ」とは最上位の新シリーズだ。アルザスの方言で「最高のテロワール」と名付け、ブルゴーニュのグラン・クリュと同じ位置づけをした意欲作。発売前から注目を集めていた。しかもヒューゲルというと白ワインのイメージであるが、これは珍しいピノ・ノワールだ。グラスに注ぐと向こうが透けて見える透明感のあるルビー。控えめながら赤い果実の洗練されたフローラルな香り。

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透き通った独特の香水的なアロマも魅惑的。くどくないないジャム・苺キャンディ・・熟成由来と思われる薔薇のドライフラワーや動物の毛のニュアンスも出てくるがどこまでも涼やか。ヒューゲルワインの中で唯一木樽のみで醸造されるが、新樽20%程度であり酒質に溶け込み実によく統合されている。柔らかい果実の甘みを覆った優しいミネラル感が高い酸味とともに軽やかに心地よい飲み口。すべらかなタンニンの苦みを伴う余韻は長い。
冷涼な地区のピノ・ノワールを綺麗に表現したバランスの良い味わいだ。複雑さや重厚さはないがアルザスと言うテロワールを反映したチャーミングな味わいは、平日夜に穏やかに寄り添ってくれた。予想通りの軽いピノではあったがある意味予想よりも美味であった。そこで「比較してみるか」と開けたのはドイツのピノ・ノワール、「ベルンハルト・フーバー シュペートブルグンダー トロッケン マルターディンガー・ビーネンベルグ(Spat-Burgunder Trocken Baden Bernhard Huber Weingud MalterdingerBienenberg R) 2007年」。

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旧世界のドイツワインというと甘口のイメージが強いが、近年辛口も評価を上げて再評価が進んでいる。その中から1987年創業のベルンハルト・フーバー醸造所の作り出すピノ・ノワール(シュペート・ブルグンダー)だ。2008年には独ワインガイド「ゴーミヨ」において最優秀醸造家賞を受賞している(ただしフーバー氏は2014年に死去し現在は息子ユリアン氏が指揮)。温暖なバーデンは温泉地としても知られ、
ドイツといってもフランスとスイスの国境沿いの街。先に飲んだヒューゲルからだと車でわずか1時間30分ほどだ。実はこのバーデン地方だけでもニュージーランド以上の量のピノ・ノワールを生産している。マルターディンゲン村は700年前フランス・シトー派修道僧が、ブルゴーニュのコート・ド・ニュイの地層・土壌(貝殻石灰岩)に似ている事から、ピノ・ノワール栽培地として選んだ由緒ある土地。赤みを帯びた粘土石灰質土壌は正に「シャンボール・ミュジニー」と同じで、

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フーバー醸造所の7割以上がピノ・ノワールを占める。ビーネンベルク畑は2008年、グローセス・ゲヴェクス(特級畑)に認定された。ビーネンベルクとは「蜂の丘」を意味し、日当たりが良くミツバチの飼育をしていたことから名付けられた。グラスに注ぐとピノ・ノワールの滋味深いアロマ。スダチを垂らしたような特徴的な香りから、時間とともに麝香やスパイスのニュアンスが滲みでてくる。
豊富な酸がピュアな果実味を包み込んでいる。1時間半もすると熟成を感じさせるキノコ的なニュアンスも出てきた。どこかブルゴーニュの自然派?という趣きもある。妻にブラインドで出すと「ブルゴーニュ?でも何か違うかな~」と楽しそうに首を傾げる(笑) 樽香もほとんど感じず統合し、凝縮感はなく柔らかいテクスチャー。エレガントではあるが飲みごたえは今一つかなと思いながらも飲み進めるうちに、身体に馴染んでくるように最後まで気軽に楽しめた1本であった。

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と言う訳でクリスマス前の週末には、お気に入りのブルゴーニュを開けたいと言う事で「ポンソ シャペル シャンベルタン グラン クリュ(Ponsot Chapelle-Chambertin Grand Cru rouge) 1999年」にした。モレ・サン・ドニに1872年設立の老舗名門「ポンソ」。1934年にはドメーヌ元詰めを開始、1977年から自然栽培と言う何事にも改革先進的で知られる。今では11ha中7haをがグラン・クリュ7銘柄で、
クロ・ド・ラ・ロッシュの最大生産者だ。1954年生まれのローラン・ポンソ(Laurent Ponsot)が1990年から当主を務め、評判を高めてきたが、2017年息子と共にドメーヌを去りネゴシアンを立ち上げると衝撃の発表。その意味でも過去の「ポンソ」は貴重になるだろう。この20年近い時を経た「シャペル・シャンベルタン」も新樽を使わず低温浸漬しない造り。グラスに注ぐと赤い果実・オレンジの皮・動物の毛・麝香・・複雑に微かに絡み合う香りが立ち上がる。

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やや熟成したジビエ肉のような獣ぽさが、時間とともに支配的になってくる。タンニンは溶け込みすべらか。アタックから質感は軽く、中盤から余韻にかけてのふくらみも控えめ。それでもゆっくりと時間をかけて開かせながら穏やかな変化を楽しんだ。さぁいよいよ2017年も残すところ1週間、まさにフェスティブシーズン本番大忙しだ。来る2018年も家族の健康と幸せを第一に願いつつ、お気に入りのワインと共に新年を迎えることにしたい。ん~何を開けようか・・続く