一気に冬らしい寒さのこの日、向かったのは我が家の定番「ルイ・ヴィトン福岡店」。先日「ルイ・ヴィトン 六本木ヒルズ店」で妻の冬物を購入したので、今回は地元で私の物をメインに選びに来た。ショーウィンドウにはジェフ・クーンズとのコラボ「MASTERSコレクション」第2弾のステンレス製バルーン・ラビットがキラキラと輝き、妻は嬉しそうに写メっている。
加えて建築家・青木淳デザイン博多湾さざ波モチーフのファサードには、正面に大きなクロード・モネ「睡蓮」、サイドにはジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー「古代ローマ」が掛けられている。いつもの様に2階のVIPルームに入り、早速運ばれて来た「ドン・ペリニヨン(Dom Perignon, Vintage) 2006年」を頂きながら新作を拝見する。「ルイ・ヴィトン 2017-18秋冬メンズ(Louis Vuitton Fall-Winter 2017)」と言えば、

20171120lvuifk2

夏に表参道のポップアップストアが大人気過ぎて早期終了となった「シュプリーム(Supreme)」とのコラボコレクション。その後の「大阪ヒルトンプラザ店」「ナゴヤミッドランドスクエア店」とここ「福岡店」での3日間限定再販も大変な騒ぎだったよう。よって現在当然ながらコラボ商品はないので、メンズ・アーティスティック・ディレクター キム・ジョーンズ(Kim Jones)らしい新作を見て行く。
私は毎シーズン、スーツ類一式を購入する。今シーズンはかなり軽くなり、肩のラインの変化や久しぶりにゆったり目のライン。気分も変わって良い感じだった。帰り際は妻の誕生日祝いの花束も頂いた。いつもながらLVのホスピタリティには感心する。楽しい買い物を終え、スタッフ達に見送られながらエレベーターに乗り込み、同ビルの上階へ・・今夜のディナーは「リストランテASO 福岡・天神店」だ。千葉篤志支配人が笑顔で出迎えてくれる。

20171120lvuifk1

メインダイニングの真ん中には秋らしい紅葉華やかな、大きなフラワーアレンジメントが飾られている。それを眺めつつ我が家はお馴染みの個室に案内して頂いた。今夜は「白トリュフフェア」と言う事で、グラスワインが5種もコースに付いていた。「ドゥラモット ブリュット ブラン・ド・ブラン(Delamotte Brut Blanc de Blancs Sélectionné pour Hiramatsu NM)」
「クロ・デュ・マルキ サン・ジュリアン(Clos du Marquis Saint Julien) 2007年」「ルイ・ジャド ヴォルネイ プルミエ・クリュ サントノ(Louis Jadot Les Santenots Volnay Premier Cru) 2009年」など。そうではあったが我が家は、いつものようにワインリストからボトルをチョイスして行く。近年ホテルだけでなく京都に料亭「高台寺 十牛庵」や「レストランひらまつ 高台寺」の出店など話題に事欠かない「ひらまつグループ」。

20171120kubotsu1

色々と内部改革も行われているよう。先日10月からは平松博利会長が全国の店舗のワインを一旦函館のワイン庫に集めて、自らリストを作り直し各店にワインを再配分したとの事。この日の「リストランテASO 天神店」のワインリストの中にも面白いワインが安い値段で見受けられた。そこでまず選んだのは「サロン ブラン・ド・ブラン ル・メニル ブリュット(Salon Blanc de Blancs Le Mesnil Brut) 2002年」。
我が家でも定番シャンパンの1つで「ひらまつ」では良くチョイスする。昨年は「レストランひらまつ博多」で行われた「ル・ジャルダン・デ・サンス」ローラン・プルセルシェフ来日ガラディナーにて「1996年」を開けた。見ればこの日のリストの値付けは何と4万円、市場価格よりもかなり安い。先程LVで若い「ドン・ペリニヨン 2006」を飲んだばかりだったので「違いが分かって面白いね」と妻。まだまだ硬い印象のはずの「サロン 2002」が、

20171120kubotsu2

ドン・ペリニヨンの還元的なニュアンスの後だろう、かなり柔らかく感じる。仄かな蜜・熟した果実に穏やかなオイリーさも微かに感じられて、複雑さを醸し出す。フンワリと羽毛のようなアタックから続く透き通るようなミネラル感が麗しい。最後まで料理と料理の合間の時間に寄り添ってくれた。サロンを飲みながら千葉支配人と歓談していると、衝撃的な情報を聞かされる?!
来年1月25日、「リストランテASO 天神店」はなくなり「リストランテKobotsu」として再スタートを切ると言うから驚きだ!渡されたカラフルな博多織柄の冊子には、三日月が2つ向かい合う中にKのロゴ。窪津朋生料理長の名前を冠した「RISTORANTE Kubotsu」と記してあるではないか。妻は余りの衝撃にキャーキャーはしゃいで本当に?!本当に?!と長坂滋郎マネージャーにも確認している(笑) 銀座の「アルジェントASO」もなくなり、新たに浅見淳料理長の名前を冠した

20171120kubotsu3

「リストランテAsami」になると言う。「ASO」の名は代官山本店だけにすると言う訳だ。平松グループは若手シェフに順次切り替えてるが、そのスピードを加速させ各店舗のオリジナリティを追求して行こうと言う事だろう。阿曽達治シェフが現場を離れて長いため内部的には変化はない。それでも一時期はミシュラン2ツ星まで獲得したブランドを1店舗のみ残す思い切った決断である。
未だ驚きを隠せない当人の窪津朋生シェフも「最初平松会長に打診された時は本当に驚きましたが、九州の魅力を五感で味わい尽くすレストランにしていきます」と気合十分で頼もしい。雇用を確保しつつモチベーションを上げ責任も負わせて、各店舗を競わせると言う平松会長らしい方針だ。そんな話題で賑やかに盛り上がっているところ「白トリュフ特別コース」がスタートする。言わばフライング「リストランテKubotsu」と言う事だ。

20171120kubotsu4

まずは「柴山芋のテリーヌ 本年度のチャンピオン牛 宮崎牛の牛タンと」。大分の組子の上にガラスをはめた皿は窪津シェフの発想と言う新作。紅葉もあしらわれて和の風情、それにテリーヌと牛タンが盛られている。和牛のオリンピックで二年連続チャンピオンの名誉に輝いた宮崎牛の中から、小林市の牛を一頭買いしたもの。対馬の塩とシンプルながらも滋味深い味わいだ。
続いてやって来たのは「燻製オイルでマリネした西米良サーモン 糸島産二種の大根と合わせて」。「西米良サーモン」はニジマスとエゾイワナを掛け合わせて養殖した宮崎のオリジナル品種。控えめな川魚っぽい香りがあるが燻製したオイルでマリネして、バルサミコ酢のジュレと共に味わう。昆布出汁を少し入れて土佐酢っぽいイメージのバルサミコジュレが良い塩梅だ。「紅くるり大根」と「青首だいこん」を銀杏と紅葉形にくり抜き季節感と辛みも添えた。

20171120raso2

さて、赤いワインも新リストからチョイスしていこう。特価の「DRC」を見つけて思わず飛びついたが、若き重松冬樹ソムリエが言うには「すいません、もう出てしまいました」と(笑) そこで再度眺めて選んだのは「ガヤ コスタ・ルッシ ランゲ・バルバレスコ(Gaja Costa Russi Langhe-Barbaresco) 1999年」。我が家が自宅で一番良く開けるイタリアワインと言えば「ガヤ(ガイヤ)」。
ピエモンテ・バルバレスコの代表的な生産者「アンジェロ・ガヤ」は、14の畑から造られる(ネッビオーロ100%)バルバレスコがフラッグシップだ。これは3バルバレスコ畑(ソリ・サン・ロレンツォ/ソリ・ティルディン/コスタ・ルッシ)の1つ。グラスに注がれると透き通った太陽を感じる香りが立ち上がる。動物の毛・・タンニンは滑らかであるが余韻に苦味を残す。開ききれないため大きくはない。それでも噛みしめるような黒い果実感が、美しい酸味と調和しバランスが取れている。

20171120raso3

まだ液体に溶け込みきれずに自然と存在感を感じさせるタンニン。それが柔らかなテクスチャーのおかげで慈しむように楽しめる。そんな中運ばれたのは、マルケの白トリュフを使ったプレート「フレッシュフォワグラと十勝ポワロー 白トリュフ卵のザバイオーネ」。サバイオーネにも、白トリュフと一緒に保管し香りを纏わせた卵を使用した。北海道産ポワローの焦げたニュアンスと白トリュフの香りが何とも調和して美味。
フォワグラを食すというより香りを楽しむ一皿だ。続いて妻楽しみのパスタは「白トリュフのタヤリン 白トリュフ卵とのマリアージュ」。マルケの白トリュフが別で、紅葉に飾られトレイに乗せられてやって来た。ガラスの蓋を取ると部屋中にその香しさが広がる。自家製タヤリンに白トリュフがガシガシと削られていく・・芳醇な香りに妻は「この時期ならではね♪」と上機嫌。タヤリンの中に潜んだ半熟玉子を潰しつつ合わせて頂く。

20171120raso4

次にやって来たのは「五島直送の鮮魚と佐賀産渡り蟹 蕪とハーブのアクセント」。テーブルで、蒸しあげたアカハタにスープを注いで完成だ。スープはアカハタの骨とワタリガニの殻から出汁を取り、菊の香りもまとわせたもの。上に添えた有機ハーブの香りも余韻に印象を残す。蕪はワタリガニの出汁と一緒に炊いた。塩気を効かしたアカハタの身と、ほぐしたワタリガニの身のハーモニーを香り豊かに楽しんだ。
続いて「国際うずら肉のグリッリアータ 白トリュフのリゾットを添えて」。埼玉産鶉の4部位(胸・もも肉・胆・砂肝)をグリルして提供するプレートだ。塩を効かせたリゾットは、白トリュフもかなり感じる。ソースはウズラのジュをベースにしたシンプルなものだが、ねっとりした厚みがある。スライスした柚子の香りも加えて、軽やかさと白トリュフとのコントラストも狙った。チーズワゴンも美味しそうであったが、妻がもうお腹一杯と言うのでパスして、

20171120raso5

デザートの「大分産栗と白トリュフのジェラート リンゴを添えて」をお願いする。落ち葉をイメージしてドライにした林檎の下に、白トリュフのジェラートが隠れている。上にもスライスした白トリュフを振った。余韻に白トリュフに包まれるようなデザートだ。そして最後はハーブティで締めた。「リストランテASO 天神」オープン時からの吉越謙二郎シェフの後を引き継ぎ、2014年に料理長就任した窪津シェフ。
妻と「そろそろいきなりの東京戻りも覚悟しなきゃかな~」と話していた矢先、「リストランテKubotsu」になるのは何とも嬉しい報せ。内装やカトラリーも含め色々デザイン変更も楽しい大変さだろう。ASOらしいプレゼンテーションや吉越シェフの味わいの着地点も忘れずに、窪津色も加えて更なる進化をしてくれる事を期待する。そうだ、先月は「レストランひらまつ 博多・中洲川端(Restaurant Hiramatsu Hakata)」でディナーを楽しんだので、

20171120raso6

その時のワインを中心にざっと紹介しておこうか。いつもの様に個室でゆっくり過ごさせて頂いた。乾杯は「ポメリー キュヴェ・ルイーズ(Cuvee Louise Pommery) 1998年」をチョイス。担当は広尾本店から配属された藤山陽生ソムリエ。初めて辛口シャンパーニュを世に送り出したことでも知られるポメリー社、「キュヴェ・ルイーズ」はそのプレステージ・シャンパーニュとなる。
シャルドネ65%・ピノ・ノワール35%。エレガントで丸く優しい味わいは和食にも合わせやすく、使い勝手の良いシャンパーニュの一つだ。パリ「ルレ・ルイ・トレーズ(Le Relais Louis XIII)」にて、同じ名前と言う事でコースにボトル一本付いていたと言う思い出もある。レストランでも「攻め」のシャンパーニュではないが、失敗したくない日の「守り」にはチョイスしやすい。すっかり溶け込んだ極小の泡がゴールドの中にわずかに煌めく。

20171120rhirama1

同「1998年」は以前「ASO」やホテル日航福岡「レ・セレブリテ」でも開けているが、熟成がゆっくりと進んでいた。柔らかなイースト香に優しいシャルドネを多く感じるアタック。繊細で上品なトースティな樽のニュアンスの奥には熟成の片鱗、トロリとした蜜のニュアンスも感じる。時間と共に洋梨のコンポート・白桃・・余韻の柔らかくミネラルの軽やかさがルイーズらしい。
そう言えばポメリー社はソムリエ育成に力を注いでいる事でも知られる。2008年を最後に中止されていた「キュヴェ・ルイーズ・ポメリー ソムリエ コンテスト」が2017年度から復活。結果ホテルニューオータニ東京・野坂昭彦ソムリエが優勝した。話を戻してその日の「ひらまつ」ディナー。前菜「新烏賊 プティレギューム トマト」は、焦がしたニュアンスが相乗した赤ピーマンのムースにはタバスコ、カイエンペッパーーを入れて。周りにはトマトのソースを敷いた。

20171120rhirama4

赤ピーマンのニュアンスは控えめで洗練された味わい。タバスコの微かな刺激が食欲をそそった。続いてシンプルな「赤座海老 アスパラガス カルディナル」は、添えられたオーストラリア産アスパラガスの力強い青さが良かった。ひらまつ定番の2皿構成で出てくる「ランド産仔小鳩 林檎」「小鳩もも肉 ドフィノワ」には「ルイ・ジャド レ・ミュジニー グラン・クリュ(Louis Jadot Le Musigny Grand Cru) 2007年」をチョイスした。
ルイ・ジャドも「ミュジニィ」は余り飲んだ記憶がない。1859年設立の大手ネゴシアン、酒神バッカスを施したラベルは誰でも一度は見た事があるだろう。とは言え「コルトン・シャルルマーニュ」など素晴らしい酒質の物も少なくない。ドライフラワー・獣っぽいニュアンス・・香りの量は少なくシンプルで閉じ気味。2時間経ってもイメージは変わらずかな。タンニンは溶け込んで柔らかな味わいではあるが、まだミネラリーさが全体を覆って果実を閉じ込めている様な感もある。

20171120rhirama2

ただ凝縮感もさほどないため余り大きくは発展しないかも。2007年というヴィンテージの問題かもしれない。ちなみに「ひらまつ」の料理はますます軽くなって和の要素が強くなっていた。平松会長の養子となり「ひらまつ 広尾本店」を継いだ平松大樹シェフ(旧姓・小川)が、本店をラボとしてメニューを開発、各店を回って指導している。全国的に共通メニューが増える事になりそうだ。
その中で土生将之シェフの個性をどう表現していくか。我が家好みの重層感や複雑さをどこかに感じ、ぐいっと食べ手に迫って来る味わいのフレンチからはどんどん離れていく様な気もするが、和の要素も取り入れ現代的な軽さを追及していくと言う事だろう。それでももう少し、複雑さやフレンチらしい旨味があっても良いとは思う(決して現代の求める「軽さ」「素材重視」とは矛盾しないから)。美味しさを目で訴求するデザインももうひと踏ん張りか。

20171120rhirama3

とは言え「ひらまつ」の強みであるソムリエやサービススタッフの確かさ含めて、婚礼メニューやホテルで出されれば、食べ手を選ばず幅広い層に満足して貰えるだろう。福岡に3店舗あるひらまつグループ、「ASO」「ひらまつ」はすっかり我が家の定番レストランでもあるし、これからも楽しい時間を過ごせそうで一安心だ。年末年始ホリデーシーズンは、九州全体からいつにも増して人が集まって、さぞ賑やかなダイニングになるだろう。