先日の「前半」に続き、恵比寿ガーデンプレイスにあるミシュラン3ツ星、シャトーレストラン2階「ガストロノミー ジョエル・ロブション(Gastronomie Joel Robuchon)」での話。バカラ・シャンデリアが輝く黄金のダイニング、いつものテーブルで極上のワインと「MENU DEGUSTATION」を堪能する。担当は、我が家の過去データを知り尽くしている村林篤メートル・ド・テル、
そして高丸智天シェフ・ソムリエ。「キャビア アンペリアル ロブションスタイル」から始まってここまでで12皿(全18皿)、いよいよメインの肉に入る。ワインは高丸ソムリエにお勧めを出してもらい、グラスの「テタンジェ・コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン 2005」「アンリオ・キュヴェ・デ・アンシャンテルール 1998」「トマ・モレ バタール・モンラッシェ グラン・クリュ 2013年」まで来た。

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いよいよお待ちかねの赤ワインは、とっておきのロブションワインリストの中からフルボトルでチョイスしよう。25000本のワインが眠る地下セラーにはマイナスイオンまで出ている。iPadには、アラン・ヴェルゼロリ(Alain Verzeroli)シェフの高性能カメラで撮影した写真や、地域や畑に分類されたワインの解説(信国武洋エグゼクティブ・ソムリエがコツコツと打ち込んだ)まであって分かり易い。
そんな充実のワインラインナップにいつもながらわくわくする。この夜、高丸ソムリエお勧め数本の中から選んだのはブルゴーニュ、コート・ド・ニュイの「ジョルジュ・ルーミエ ボンヌ・マール グラン・クリュ(Georges Roumier Bonnes-Mares Grand Cru) 1982年」。オールドヴィンテージ収集家として世界的に名高いピーター・ツーストラップ(Peter Thustrup)氏のコレクションから、信国ソムリエが仕入れていたわずか2本のうちの最後1本。

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しかも「1982年」はクリストフ・ルーミエが父ジャン・マリーと働き始めルーミエの躍進がスタートする記念すべきヴィンテージでもある。「1982年」にしては液面も高く、ネックから透けて見える色も透明感がある。高丸ソムリエが丁寧に抜栓してグラスに注ぐ・・透き通ったルビー色。冷めた紅茶・しおれた薔薇・乾いたスパイス・・複雑に交差するブーケに思わず目を合わせる。
「こんな風になるもの??香りすごいね」としきりに感心する妻。熟成が綺麗に進んでおり何ともエレガントな旨味に驚く。「昨年開けた時よりさらに熟成が進んでます」とにっこりの高丸ソムリエ。すっかり溶け込んだシルキーなタンニンとまだ生きてる酸が骨格を形作り、その中心に自然に熟したような果実が確かに残っている。飲後の長い余韻とともに何とも優しい満足感に包まれていく。高丸ソムリエから最近のブルゴーニュ訪問時の話を聞きながら、

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刻々と味わいが変化する「ジョルジュ・ルーミエ ボンヌ・マール」を堪能する。つい先日自宅で開けた若い同「ジョルジュ・ルーミエ ボンヌ・マール」の印象とどこか繋がる。作り手の個性を残し、テロワールを活かしたまま、きちんと綺麗に年輪を重ねたワインの素晴らしい世界を改めて認識されてくれた。そこへ上階のワイン会を抜け出して信国ソムリエが挨拶にやって来た。
素晴らしい「ボンヌ・マール」に加えて福岡・朝倉の災害など色々話題も尽きない。ちなみに後日、信国ソムリエのSNSではこの1本について「誰もが一度は飲んでみたいルーミエのボンヌマール、1年ぶりに味わった一雫は大きく成長して進歩して洗練されていた」と書かれていた。そうそう他のエリアにいた、「タイユバン・ロブション」からの23年ベテラン組の一人神田敬市メートル・ド・テルもやって来て、独特の空気で笑わせてもらう。

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そんな最中Le Plat “Tradition”、メインの肉がトロピカルな花に囲まれて、ボックスに入った状態で運ばれて来た。クラシックなスペシャリテの1つ「牛フィレ肉 フォアグラと抱き合わせロースト“ロッシーニ” 風に仕上げて」だ。牛・フォワグラ・黒トリュフと言うクラシックな「ロッシーニ風」をロブション的に再構成したもの。このプレートは以前、シャトーブリアンで食し、
ロブションスペシャリテ「ポテトのピュレ」が添えられてた記憶がある。その時も目の前で手際良く村林メートル・ド・テルがデクパージュしてくれた。フレンチレストランで牛肉を選択することはほとんどないが、ロブションのこれは別だ。牛肉断面のピンクとフォアグラ断面のオレンジのコントラストが何とも美しい。取り分けた後テーブルでソースが掛けられ出来上がる。添えられるパフパフ「ポテトのフリット」の不思議な食感も楽しい。

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サービスの美しい所作を楽しめるところもグランメゾンの醍醐味の一つだろう。そんなデクパージュに見とれながら、村林メートル・ド・テルから秋に行われるサービスコンクールの話を伺う。高丸ソムリエとは、更に発展してきた「ボンヌ・マール」を味わいながら「DRC」のボトル個体差や、デキャンタージュの是非などブルゴーニュ談義でかなり盛り上がる。
そんな気分の良さに調子に乗って、少しタンニンを感じるボルドーも飲みたくなってきた(笑)「ブルゴーニュで盛り上がってるのに何それ!!」と妻にダメ出しされるが、高丸ソムリエは「もちろん大丈夫です」とサッと抜栓して、素晴らしいボルドーをグラスで出してくれた。メドック格付第2級、サン・テステフ「シャトー・コス・デストゥルネル(Chateau Cos d’Estournel) 1989年」。パゴダ風シャトーの絵柄のラベルが印象的だ。

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カベルネ・ソーヴィニヨン60%、メルロー38%、カベルネ・フラン2%。グラスに注がれると深みのある濃い赤。熟したボルドー左岸の典型的なブーケが、クリアな輪郭と共に美しく香り立つ。凝縮した黒系果実の香りが心地よい。口に含むとの甘美なタンニンと旨味が口中に広がる。何ともロブションならではの贅沢なワインの楽しみ方だ・・ブルゴーニュに加えてボルドーにも満足し、増々機嫌が良くなり酔いが回る。
そこへ運ばれたのはLes Fromages de France「チーズワゴン」、この日は21種類、相変わらず豊富な品揃えと素晴らしい保存状態だ。妻は「シェーブル」好きで絶対選ぶのだが、こちらはアランシェフがシェーブル好きなので、他のレストランよりも種類が豊富で状態が良い。と言う訳で食べ頃お勧めの「コンテ24ヶ月」「シェーブル」「エポワス」などを丁寧に切り分けて貰う。アプリコットや胡桃などドライフルーツも添えられる。

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しばしワインとチーズを楽しみながらまたワイン談義を続行、やはりこの時間が至福だろう。そこへいよいよ更なる満腹別腹なLes Dessertsが、本を開いた様な不思議な皿に乗って3種やって来た。まずは「キャラメル フレッシュマンゴーと弾ける飴を忍ばせ、マンダリンのソルベと共に」。お馴染みキャラメルチョコのプレートに丸穴デザイン、その下には夏らしいマンゴーにパチパチするハニーキャンディ、
定番マンダリンのソルベが軽やかな美味しさ。ここで高丸ソムリエがサッと合わせてくれた食後酒は、ソーテルヌの最高峰「シャトー・ディケム(Chateau d’Yquem) 2011年」。黄金色に輝くそれは妻のお気に入り。以前こちらでも「2003年」「1995年」「2002年」「1998年」と良く頂いている。美しい黄金色の液体はまさに果実を噛みしめるような凝縮した味わい。複雑なスパイスを練り込んだトロリとした蜂蜜のようだ。

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デセールは、下のグラスには淡いピンクの「白桃 シトロンでマリネ、ベルベーヌのグラニテとバニラクリーム」、桃の甘さとベルベーヌの爽やかさが心地よい。右は「ダリア ライム風味のチーズケーキ ショコラのソース」、これもいつかのロブション氏来日ガラディナーで食べた。真っ赤なダリアが印象的なチーズケーキ、濃厚チョコソースがまた良い。「ディケム(イケム)」の芳醇な甘みに包まれながらそれらを味わう。
最後はLe Café express ou le Thé、いつもの様にやって来た「デザートワゴン」、ショコラタルトやフルーツケーキなどホールで何種類も並んでいる。更にキラキラ「ミニャルディーズワゴン」は夏のマリン仕様で、爽やかなブルータワーが華やかだ。せっかく水野シェフ・ド・ランが勧めてくれたのだが、残念ながらもう満腹すぎて少しも食べられなかった。気が付けばダイニングも静かになって貸切状態に。テーブルにはお馴染みパパブブレの、

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緑が鮮やかな「メルシーキャンディー」が運ばれ〆る。品数はとても多いのだが、それぞれの素材と複雑ながら調和した調理がハーモニーを奏でている。これだけ多いと散漫になったりするのだが、各素材のイメージ、美味しさが記憶に刻印される。ただ今回の「MENU DEGUSTATION」42000円はロブションプレートを何度か味わってきた客には記憶喚起されて面白いが、
ワンプレートずつしっかりロブションワールドを味わいたい向きには、「MENU A PRIX FIXE」皿数により30000円~10000円が良いかもしれない。今宵もまた美食と美酒に大層満足しすぎてご機嫌ふらふら・・高丸ソムリエに見送られながら手を振り、ダイニングからエレベーターで1階に降りる。エントランスでは信国ソムリエと渡辺敏伸総支配人が待っていてくれた。そのまま妻は総支配人と賑やかに腕を組みつつ、お決まりの筋肉談義に爆笑している。

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それに付いて、私や村林メートル・ド・テルも一緒に城を出る(笑) 思えばオープン以来この城全体を任されてきたアラン総料理長は、料理人としての才能は言わずもがな、料理に反映された美術感覚や繊細さ、何より彼の真面目で優しく穏やかな人柄が私達は大好きだった。「次に会うときはNYやアートの話も沢山したいわね」と妻は感慨深げに、浮かぶ恵比寿の城を見上げつつ車に乗り込んだ。
皆手を振って車を見送ってくれる。更けた夜の中静かに車を走らせながら「楽し過ぎてまた沢山飲んじゃったね・・」と言う妻の満足した声を聞くか聞かない内に、気が付けば大手町の宿泊先「アマン東京」に着いていた。残念ながらロブション氏による来日ガラディナー(祭)はなくなったが、次はまた「実りたっぷりの晩秋」に訪れるのを楽しみにしよう。

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