すっかり真夏、夏休みにも入ったせいかやたらとどこも人が多い。暑い日差しのこの日、宿泊先は我が家お馴染み「アマン東京(Aman TOKYO)」。超高層ビル「大手町タワー」の33~38階の上層を占める。開業して2年以上経つのに、タクシードライバーでまだ「アマン東京ってどこですか?」と言う人が少なくないから驚く。ナビに情報が入ってない場合も多い。サイドの分かりにくい入口から入ると、
洞窟内のような隠れ家的ホテルエントランスが見える。壁際には2台の人力車が並んで浮かんでいる。タワー周りに造られた「大手町の森」は3600m2、開業当時3年かけて育成した木々・草花(81種56000本)を移植。都会のど真ん中高層ビルにして、自然を身近に感じる環境をわざわざ作った。自然との調和や地域性をコンセプトに掲げるアマンリゾーツならではだろう。その一角には、自然と一体化した戸建ての「ザ・カフェ by アマン」もある。

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アマンの27軒目のホテルにして初の都市型ホテル。設計はオーストラリアの建築家ケリー・ヒル(Kerry Hill)、トロピカル・リゾートを得意とする彼が都心型に挑んだこちらは、彼にとってアマン6軒目の作品となった。世界にアマンの名を知らしめたバリ島「アマンダリ」を手掛けた建築家ピーター・ミュラー(Peter Muller)も、同じオーストラリアの出身でケリーはその次世代を継ぐイメージ。
我が家が京都で常宿としている「俵屋旅館」と「アマンダリ」が似ていると言う都市伝説は有名だが、実のところはピーターが設計前に俵屋に宿泊した事が影響しているとの話。1996年の「婦人画報」でアマン創業者エイドリアン・ゼッカ(Adrian Zecha)と俵屋当主佐藤年が対談しているが、お互いに「似ているとすれば」スモールラグジュアリーで痒い所にも手が届くパーソナルなサービス(ホスピタリティ哲学)、と言う程度の表現で語られていた。

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では館内の話をしていこう、1階ロビーではまず炭画が目に入る、これは麻紙に描かれた菅原建彦の作品。エレベーター前の壁に広がる土壁アートは、左官技能士・挾土秀平の作品で、植物がテーマの三部作の一つ(後2つは33階と34階に上がったところ)。挟土氏の作品と言えば「ザ・ペニンシュラ東京」のフロント背後を思い出す。
エレベーターで上がってやっぱりメインは33階ガーデンレセプション(中庭)。目に飛び込むのは広い空間と大きな窓、高い吹き抜け。見上げれば広がる長さ40m・幅11m・高さ27mの障子の天井・・今やアマン東京と言えばこの景色だろう。和紙を通した光の美しさを改めて思う。アマンを象徴する黒い玄武岩の床や壁はずっと長く伸びていて、天に浮かぶ巨大和紙照明が緩やかに包む。空間中央には流水の中に奥平清鳳の生け花、玉砂利の小庭、

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レセプションデスクは樹齢250年の楠木。仕上げは着物姿の女性が奏でる琴の音。日本だけど純和風ではないモダンな日本、未来的だけど現実的な美しい日本。この点、「リッツカールトン京都」はある意味非現実的な幻想日本だった。奥に並ぶラウンジ、メインダイニングの向こうに見える青い空と皇居の緑、遠くに富士山・・・ここは天空に浮かぶアマンの国。
ゼッカ会長も訪れたそうだが、ケリーが描くゼッカワールドは都市型になっても開放的でダイナミック、そして安らかである事がこのフロア(中庭設定)で十分伝わる。そんなコンテンポラリーな和の真ん中に座ってウェルカムドリンク「青梅ジュース」を頂く。いつもの様に効能などが書かれた紙が添えてある。とにかく広い、何とも開放的で心地よい空間。フロアを囲むような段差は「縁側」をイメージして造られた。各所に飾ってある陶芸は服部将己や星野聖作。

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館内にはその他日高理恵子・風能奈々・浅見貴子など、日本を中心とした16人の作家物が展示されている。奥には見えるのは「ライブラリー」、天井まで続く本棚には1300冊でテーマはモダニズム、日本人形や茶道具まで飾ってある。隣は「ビジネスセンター」と「シガーバー」、そして「バー」、ブラックアフタヌーンティーが人気の「ザ・ラウンジ by アマン」、一番奥に「ザ・レストラン by アマン」と連なって行く。
チェックイン手続きを終え宿泊者専用エレベーターへ。作務衣風ユニフォームのスタッフ2人が37階の部屋へ案内してくれる。ルームキーをエレベーターでもかざすセキュリティ。そうそう34階には「アマン・スパ」がある。「フィットネスセンター」を含め2フロアで2500m2。中でも33階の吹き抜け8mと全長30mの「ブラックプール」は美しい。夜は石壁に埋め込まれた照明が、点々と黒いプールの水面に浮かんで幻想的な世界になる。

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今回宿泊するのは「スイート(146m2)」、この部屋ももう何度目かになる。前回の宿泊は最上「アマンスイート(157m2)」で、違いと言えばダイニング側の窓が片面なくなるのとダイニングテーブルが6人用が4人用になったくらい。インテリアなど設備は全く同じ。入口ドアを開けるとふわっと檜の香りがする。広い石床の玄関にはスツール、靴を脱いでスリッパを履くようになっている。ラックには傘も置いてある。
右側にリビングルーム、左側にベッドルームとしっかり二分されている。行き来はこの玄関でしか出来ないので、きっとベッドルームは単独で「デラックスルーム(71m2)」として使われる事もあるのだろう。ちょうど荷物を届けてくれた2人もいたので、結局若い女性スタッフがズラッと4人並んできちんと退出する様はアマンらしいとも思えた。どちらの部屋にも大きな窓からは広がる東京の景色、左手にはスカイツリーも見える。

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窓の外には柱々に岩の様なデザインの黒い仕切り(目隠し?)も設置されている。ハリギリ・クリ・楠などを多用したシンプル和モダンなインテリア。窓際にはアマンと言えばな「ディベッド」がセットされている。フカフカのクッションもいくつかあり、かなり大きめで立派なベッド。 座面に加えスリッパや傘などの小物類まで、ファブリックがネイビーで統一していて白木に良く合う。
星野リゾートも窓際にディベッドがあったりするけど、やっぱりこれはアマンの十八番といった感じ。滞在中はディベッドにいる事が多い。「リビングルーム」には、ディベッド前にソファセットとテレビ、真ん中にダイニングテーブル、サイドにはコンパクトな書斎(トイレもある)がある。玄関側には広めのパントリーがあって、収納棚にはグラス類やネスプレッソも。「第二の我が家」であって欲しいと掲げるアマンだけあって住宅的な作り。長期滞在にも向いている。

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一方「ベッドルーム」は、玄関側に連なるクローゼット、それを背に大きなデスク。繋がる様に真ん中に布団の様なツインベッド、段差降りて棚を仕切りにカフェテーブルセット、窓際にディベッドとなっている。ベッドに横になった状態からも、自然に窓の景色が良く見える仕様は素晴らしい。段差下の棚にはワインセラーやミニバー、そして設計デザインのケリー・ヒル(Kerry Hill)氏が「隠したいテレビ」が仕込まれている。
寝室に隣接する(と言うか寝室の一部)の「バスルーム」は、玄関同様に花崗岩や玄武岩が使われている(床暖房)。細横長にダブルシングとトイレ、寝室と「障子風の引き戸」で仕切ってあるだけの空間も珍しい(バスタブ側は「雪見障子」型)。洗面所と繋がる黒い日本式浴室は、肩まで浸かれる深い浴槽とシャワーエリアもあって広い空間。樹齢350年の檜で作られたと言う「湯桶」「洗い桶」「風呂椅子」があり、湯船脇にはネットにくるまれた「薬湯(この日は大葉)」、

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和の器に入った「檜香の石鹸」「バスソルト」が置かれている。浮世絵風の「Japanese Bathing Ritual」風呂の入り方(儀式)の説明書と、「YAKUYU」由来や効能の説明書も添えられる。大きな窓脇に浴槽があるので、お湯に浸かりつつ東京の夜景が満喫できる事も素晴らしい。基本のバスアメニティ(シャンンプー・コンディショナー・シャワージェル・ボディーローション)は檜の香りを取り入れたオリジナル。
かなり大きめのボトルで、モノクロにAMANのシンプルロゴ。歯ブラシやヘアブラシなどは加工和紙の袋に入っている。無料ミネラルウォーターもシンプルな「AMAN tokyo」のロゴパッケージ。備えてあるのは「今治タオル」、そして軽く柔らかなシンガポール「PLOH」のバスローブ。日本家屋や伝統文化を思わせる、縁側風・障子風・石畳風・茶道具風・床の間風・・各所に畳風フロアマットが敷いてある。

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外国人から見たコンテンポラリーな日本。機能性に加え和の美しさを組み込んだデザインは面白い。パブリックエリア同様部屋にも美術品が置いてあった。リビングのコンソール上には墨アート「キャレモジ」。スイートルーム32部屋のうち24部屋に大型作品が掛けてある。中でもこれは宮村弦の「One(一)」、以前泊まった他のスイートには彼の「To Fly(飛)」「Wind(風) 」があった。
ちなみにベッドルームのコンソール上に飾られている油絵は西村大樹の「春の夜を見て」シリーズ。そうだ、ウェルカムスイーツもあった。和の器に入った「クッキーとドライフルーツ」。寝室棚にはお馴染み「おかき」「ポンポン菓子」。2部屋それぞれにある冷蔵庫のソフトドリンクは無料。日本旅館風でもありながら機能的でプライバシーが守られるラグジュアリーホテル。窓を見下ろせばいかにも大都会東京の景色・・内装の穏やかさや癒し感も特徴的。

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ホテル出入りの際にはスタッフが「いってらっしゃい」「おかえりなさい」と適度なフレンドリーさもアマンリゾーツならでは。夜は全ての照明が和紙を通した様な仄かな明るさで落ち着いた風情になる。もちろん部屋だけでなく館内全体、特にガーデンレセプションの障子の天井は5フロア分だけあってまるで巨大なランタン、黒い庭園の中にふんわり宇宙船の様に浮かび上がる。
東京の夜景は星の様に大きな窓ガラスに煌めいて、昼とは全く違う幽玄な世界が広がる。さぁディナーは今夜もお気に入りのガストロノミーへ、ドレスアップして向かうとしよう♪ 続く・・