7月1日から「博多祇園山笠」が始まり福岡市中心部では当番法被(長法被)姿の男衆を多く見掛ける・・呼応するように33~35度の暑さが続く。5月の「博多どんたく港まつり」と共に博多を代表する大夏祭り。700年以上昔に施餓鬼棚に乗って祈祷水を撒き疫病除去したのが起源だ。正式には「櫛田神社祇園例大」で祭神「素戔嗚尊」に対して奉納される祇園祭という事になる(国指定重要無形民俗文化財)。
7月1日からは神事に加えて、天神・中洲・博多・ヤフオクドーム前などの14ヶ所に「飾り山笠」が設置される。高さ10mを超え、中洲・上川端にある博多の氏神「櫛田神社」に向いた面を「表」とし、その裏側を「見送り」と呼ぶ。共に博多人形師によって、博多織など豪華に彩られた大きな人形が制作され、15日朝まで飾られる。道行く人々が足を止めて見入り、周りに出店が囲む所もある。これらが登場すると「夏が来た!」と思わせてくれる博多風物詩の一つと言う訳だ。

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今年はユネスコの無形文化遺産に登録後初の祭りと言う訳で見所も多い。2日には過去最大スケールと言う「スター・ウォーズ山笠」もお披露目された。昨日はいきなりの台風上陸に飾り山の安全も心配されたが、ネットを掛けるなど対策をうち無事事なきを得たようだ。今後は「朝山」「他流舁き」「追い山ならし」「集団山見せ」と賑やかに行事が進み、15日明け方の「追い山」でフィナーレを迎える。
地元人的には込み合う「追い山」見物には行かずテレビ中継を楽しむのが恒例(笑)私も若い頃水法被に締め込み姿でゲスト参加した事もあるから想い出だ。そんな暑い博多の街、この夜向かったのはJR博多シティのすぐ近く、追い山が入るコース沿いにある「ホテル日航福岡」。ベージュ色の大理石が美しいスモールラグジュアリーホテル。2階のメインダイング「レ・セレブリテ(Les Celebrites)」は我が家お気に入り定番レストランで、

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妻に言わせれば「ここが我が家の毎日の食卓だったらなぁ」と言うくらい落ち着く。ロビー中央階段を上って行くと西祥史ソムリエが出迎えてくれた。店内は豪華リゾート風でありながら、ベージュ色に統一した上品な大人のダイニングが広がる。既にこの日は予約時点で満席状態だった。よっていつものテーブルではなく静かで優雅な個室を用意してくれた。
そこに挨拶に来られたのは持光誠一郎支配人と森田安彦シェフ。シャンパーニュ地方で修行した森田シェフの料理を、個室で集中してじっくり楽しませて頂こう。まずはシャンパーニュで乾杯、ここへ来る前に「ルイ・ヴィトン 福岡店」で初夏らしい軽やかで甘い味わいの「モエ・エ・シャンドン ブリュット・アンペリアル(Moet et Chandon Brut Imperial)」を頂いたので、少し深い味わいシャンパーニュをチョイスすることにしょう。

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リストの中から選んだのは「アンリ・ジロー フュ・ド・シェーヌ アイ・グラン・クリュ マルチビンテージ(Henri Giraud Ay Grand Cru Fut de Chene Multi Vintage)」。1625年からアイ村のグラン・クリュでシャンパーニュ造りを続け、イギリスやモナコ王室ご用達でも知られる老舗シャンパーニュ・メゾン「アンリ・ジロー」。ルイ13世統治下で創始者フランソワ・エマールが、
アイ村の葡萄畑8haを手に入れ栽培を開始。1990年に作り出されたプレステージ「フュ・ド・シェーヌ アイ・グラン・クリュ」は2000年までで、その後は複数年のブレンドによる「マルチヴィンテージ」に変更。ピノ・ノワール70~75%、シャルドネ25~30%。オーク樽で一次発酵12ヶ月熟成、6年瓶内熟成。美しい黄金色に微細な泡が煌めく。洋梨・トロピカルなニュアンス・・そこに生姜などハーブの香りが差し込んでくる。

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豊かな酸味と解けつつあるミネラルが調和してるため、深みはあるが重たくない。旨味にあふれた飲み口だ。ただマルチヴィンテージになってから複雑さよりバランス重視の味わいという感じで、2・3杯でやや飽きが来た。じっくり向き合って飲むならやはり、2002年から新プレステージ・シャンパーニュになった「アルゴンヌ(Henri Giraud Argonne)」が良さそうだ。
さて料理のコースはいつものように森田シェフお任せの「Menu Specialite」。まず登場したのはイラン産キャビア・ベルーガ。ペルシャのベルーガキャビア(カスピ海の野生チョウザメ)と言えば、世界でも最高級の一つ。キャビアの真正性と品質を保証するため、イラン政府によって詰め込まれイラン政府によって封印された独特のパッケージが特徴的だ。キャビア好きの妻の目の色が変わる(笑)これは「アミューズ」に使うキャビアで、

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目の前で開封し試食までさせてくれた。ギュと凝縮したベルーガらしい王道の味わい。それを厨房に運んで完成させた「アミューズ」として再度登場する。こんもりと盛られたキャヴィアは黒くツヤヤカな光沢を見せ、サワークリーム上の金箔と共に輝く。沖縄産車海老はオリーブオイルとシャルドネビネガーでマリネした。余韻にはライムの柑橘を香らせて。森田シェフらしい上品で美味しいアミューズであった。
続いて「軽く火を入れた手長海老のシトラスマリネ 八女産桃とプラムのサラダ仕立て」が運ばれる。涼し気なスガハラガラス(Sghr)の平皿に、塩レモンのピュレ、アプリコットのピューレにミュスカのゼリーを配置したサラダ仕立ての一皿。カラフル艶やかな美しいデザインだ。仄かに温かい食感から柔らかな甲殻類の旨味が滲み出てくる。野菜や果物の食感も初夏らしく、甘い香りと共に爽やかな美味しさを楽しんだ。

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ではいつもの様に赤ワインもボトルでお願いしよう。選んだのは「ギガル コート・ロティ ラ・トゥルク(E.Guigal Cote Rotie La Turque ) 1985年」25万円。「レ・セレブリテ」のセラーで20年近く熟成させてきた最後の一本と言う。思えば毎年様々なレストランが誕生してはひっそりと消えていく。風雪に耐えて生き残った歴史あるレストランの醍醐味の一つが、
長く保存した秘蔵のワインを破格の値段で楽しめるところだ。この「コート・ロティ ラ・トゥルク」は「ラ・ムーリンヌ(Côte Rôtie La Mouline)」「ラ・ランドンヌ(Côte Rôtie la Landonne)」と共にギガル3兄弟と言われる。しかも「1985年」はラ・テュルクの記念すべきファーストヴィンテージ。パーカー100点を獲得して華々しいデビューを飾った歴史的な一本なのだ。以前「レストラン ひらまつ」では「1993年」を開けた。

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「ラ・トゥルク」の畑から作られるワイン自体は、20世紀初めにはフランス大統領ご用達のワインとして知られ、その100%をエリゼ宮で消費していたそうだ。「このラ・トゥルク85は、世界中の市場でもほとんどないと思います」という西ソムリエに、妻も「楽しみ~♪」とワクワクしている。シラー93%、ヴィオニエ7%。生産量自体も少なく年4000~5000本だ。
「緊張します」という西ソムリエの抜栓を夫婦して固唾を飲んで見守る。コルクは全体にしっとりし好環境で動かさずに熟成してきたことを伺わせる。ボトルから透けて見える色調もクリアに輝き健全だ。辺縁の薄くなった透き通るように美しいルビー色。ドライフラワー・湿気た動物の毛・腐葉土・乾燥したベーコンの破片・黒トリュフ・・・クリーンで透き通った芳香性は高く、グラスの縁から溢れ出てくるようだ。ジビエの香りは控えめ。

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シルキーで滑らかなアタックからフンワリと羽毛のように優しくも濃密なエキスも感じるミッドパレット。艶かしい旨味が溢れ、充分な果実味とエレガントなまとまりを見せる。余韻はとてつもなく長く優に40秒以上。因みに余韻を秒数で評するやり方は、終点の捉え方によって飲み手によってかなり異なる。田崎信也ソムリエは「余韻とはワインのキャラクターが香りとともに口内で残る時間」
「苦みや酸味の残る具合は30秒以上になることがあるが、それは余韻の長さには含まない」と言っている。そんな違いを超えた、普遍的とでも言おうか、果てしなく続く余韻の長さに圧倒された。最初から一気に開いて最後まで全く落ちない。まだまだ酒質に溶け込んだ果実の力強ささえ残る、「世紀のヴィンテージ」にふさわしい風格ある味わいであった。そんな「ラ・テュルク」に黒トリュフも感じるなと思っていたら、なんとそこに

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「オーストラリア産黒トリュフ」が丸ごと運ばれてきた!黒トリュフの旬は冬、つまり日本と季節が真逆のオーストラリアではまさに今が旬なのだ♪。これをテーブルで「香り高い玄海産黒鮑と茸のリゾット」にタップリと削って完成する。しかも「ストップ!」と言うまでザクザク削ると言う贅沢至極。見とれていたら大きな黒鮑も見えなくなって、結局2人で丸ごと削ってもらっていた(笑)
ブイヨンで炊いたリゾットにはジロール、セップ茸などキノコも加えてフレンチらしい仕上がり。黒鮑の滋味深い旨みを黒トリュフとキノコに包まれながら食する、何とも食べ応えある贅沢な一皿であった。食事の前に「ルイ・ヴィトン」でプレフォール・コレクションを満喫し、そして料理でも来る秋を先取り味わう感覚に「そうよ、今日はプレフォール日和なのね!」と一人なにやら納得している。そんな中、次に運ばれて来たのは

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「玄海産あらと赤茄子のフォンデュ グリーンオリーブと糸島バジルの香り」。黒のプレートに虹色に輝くような美しい断面を見せるアラ(クエ)が映える。その横には、アスパラ菜・ツルムラサキ・絹さや・スナップエンドウなどをふんだんに添えた。そこにアサリ出汁をベースにしたバジル風味の、鮮やかなグリーンのソースが注がれる。しっとりと熱を通してアラの身質を生かした精妙な火入れ。
プリッとした食感にあさりのソースの旨味が絶妙に絡む。そして各野菜の青みが統合し昇華したフレンチらしい味わいになっている。底に敷かれた赤茄子のフォンデュもアクセントに、飽きずにあっという間に完食してしまった。口直しは鮮やかトロピカルな爽やか「マンゴーのシャーベット」、それに続いてメインの仔鳩「エピスが香るヴァンデ産仔鳩のロースト フォワグラとスリーズのフリカッセ」がやって来た。テーブルで、スパイシーで香り高い赤ワインソースを注いで出来上がる。

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仔鳩の特徴を活かしつつも、とても食べやすい仕上がり。フォワグラとチェリーという定番の組み合わせも添えながら、仔鳩の旨味を堪能する美味な一皿。「ブルゴーニュのリシュブールとミュジニィに対応するローヌワインになろうとしている」と言う、パーカーの評がピタリとくる相性を見せてくれた。デザートはメインに加えて、盛りだくさんのデザートワゴンもあったのだがさすがに満腹なので、
メインの「クレームダンジュとパイナップルのピュレ 南国フルーツのソースで」だけを頂く事にする。これには温度を上げた「アンリジロー」を合わせ、白ワイン用グラスで頂く。夏らしい南国フルーツなデザートに妻も楽しそう、「山笠の期間はこの辺りは一層騒がしいわね」と夏に思いを馳せている。最後はいつもの様にハーブティーと小菓子で締める。元々スキルが高くモダンなプレートを得意とする森田シェフ。

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そこに自然体の美味さを追求することで、分かりやすくも、複雑でフレンチらしい、そして素直に美味しい料理に進化してる。プレート一つ一つに適度なボリュームで食べ応えあり、味わいのバランスとコース全体量が適切だ。いつも美味しく頂いているが「今夜は特に森田シェフの良さが満載で、最高のディナーだったわね」と話す。帰りはシックなフラワーアレンジメントも頂きご機嫌の妻。外までお馴染みのスタッフ達に見送られ、手を振りながら車に乗り込み帰途に着いた。