既に春を通り越して蒸し暑い梅雨、南国の夏を思わせる博多。「こんな日はイタリアンに行きたいわ」とお決まりの妻モード。思えば博多はイタリア料理の店がすこぶる多いのは良く知られた話。陽気で祭好きの南国博多人にはイタリア気質が合うのかもしれない。そんな多くある店の中でも我が家お馴染み博多イタリアンと言えば「リストランテ サーラカリーナ 福岡(Sala Carina)」。浄水通り近く御所ヶ谷にある上品な戸建てレストランだ(2017年8月で閉店)。
緑に包まれた様なメインダイニングはこれからの季節特に美しい。この日はベテラン今井正三オーナーシェフではなく、若手チームが腕を振るってくれるとの事。未来を味わう貴重なディナーとなった。そう、料理に加えてこちらでの楽しみはイタリアワインだ。いつも原田勲マネージャー(ソムリエ)が上質でいて飲み頃のワインを勧めてくれる。我が家にとって料理とワインは車の両輪。ワインの品揃えが面白くない(愛情の感じられない)店からは自然と足が遠のいてしまう。

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お勧めの中から選んだのは「カサノヴァ・ディ・ネリ ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ リゼルヴァ(Casanova di Neri Brunello di Montalcino Riserva) 1993年」。1971年ジョヴァンニ・ネリ氏によって創設された家族経営の「カサノヴァ・ディ・ネリ」。モンタルチーノ最高エリアの135エーカーの葡萄畑で、収穫量を抑えた剪定により凝縮感ある味わいを生み出す。代表的なのは最上キュヴェ
「ブルネッロ ディ モンタルチーノ チェッレタルト」。特に「2001年」は世界的に評価された事もあり「テヌータ ヌオヴァ」なども入手困難となっている。と言う事で「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ リゼルヴァ 1993」をゆっくり味わう。グラスから甘い果実味が流れ出す。ドライフラワー、藁、黒胡椒。緻密でありながらまだ抑揚のあるタンニンが心地よい。バリックの生きたモダンな味わいは、まだ若々しいがイタリアワインらしい味わいであった。

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ちなみに前回訪問時は「カ・デル・ボスコ ヴィンテージ・コレクション ドサージュ・ゼロ(Ca’del Bosco Franciacorta Riserva Vintage Collection Dosage Zero) 2001年」と「フェルシナ ファンタローロ(Felsina fontatalloro) 1998年」を開けた。このその前も赤は同キャンティ・クラシコ地区の「サン・ジュースト・ア・レンテンナーノ ペルカルロ(San Giusto a Rentennano Percarlo Toscana IGT) 1999年」を開けた。
更にその前はヴェネト州「アジィエンダ・アグリコーラ・ダル・フォルノ・ロマーノ ヴァルポリチェッラ・スペリオーレ ヴィニェート・ディ・モンテ・ロドレッタ(Azienda Agricola Dal Forno Romano Valpolicella Superiore Vigneto di Monte Lodoletta) 1999年」だ。イタリアを代表する生産者ダル・フォルノ・ロマーノと言えば「アマローネ」だろうが、この時は「ヴァルポリチェッラ」。コルヴィーナとコルヴィーナ・グロッソ70%、ロンディネッラ20%、クロアティーナ5%、オゼレータ5%。

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手摘み収穫後30日以上陰干し、ステンレスタンクで醗酵・新樽100%で36ヶ月間熟成、そして瓶内12ヶ月以上熟成。繊細なタンニンが舌先に美しく広がる・・濃縮した果実の香りに複雑な味わい。この「1999年」は状態が万全ではなかったようで?香草のような香りもまた独特。妻は「ロミオとジュリエットのヴェローナで造られたワインよ♪」とそれだけで楽しそうだった。思い出せばその前はスプマンテ「フェッラーリ・ペルレ・ネロ(FERRARI Perle Nero) 2002年」も開けたな。
フェッラーリ社の創業100周年を記念した、ピノ・ネロ100%。妖艶な香りが何とも印象的・・オレンジ・蜜・ピーチネクター、奥にはシェリー。余韻は軽いミネラル感と共に、微炭酸で落ち着いた酸味が伸びる。ややオイリーな口当たりも雰囲気を醸し出したのを覚えている。それに続けて開けたのはキャンティ・クラシコの「マルティーニ・ディ・チガーラ ペルカルロ サン・ジュスト・ア・レンテンナーノ(Percarlo San Giusto a Rentennano Martini Di Cigala) 1998年」。

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サンジョベーゼ100%、熟成はフレンチオークのバリックで22ヶ月。枝付きの干しブドウ・ブルーベリー・インク・香草・・何とも美しく滑らかなアタックだが、凝縮感もあって飲みごたえもある。収穫時期が遅い影響か、完熟した果実味も感じさせる。シルキーな口当たりから、スパイシーでいてハーブのような爽やかな余韻へと極めてスムーズに流れていく雰囲気がエレガント。
軽やかなボルドー左岸的なニュアンスも時間と共に出てきて、妻も機嫌よく楽しんでいた。その他も、珍しいスプマンテ「ドリガーティ・トレント メティウス ブリュット リゼルヴァ(Dorigati Trento Doc Methius Brut riserva) 2006年」を開けた。トレンティーノのメッゾコローナ地区に1858年創業の老舗ワイナリー。「メティウス」と言う名は、この土地が昔「Methius Coronae」「Methius Sancti Petri」Methius」と言われる2村であった事から来たとか。

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ダークグリーンのラベルも、窓の向こうの木々の緑と相まって美しい。シャルドネ80%、ピノ・ネッロ20%、ステンレスタンクとフレンチオーク・バリック30%使用、60ヶ月瓶熟成。グラスに注がれると、繊細な黄金泡が立ち上がり夕日にキラキラと輝く。甘い果実味と香り・・スパイス香もほのかに感じる。まろやかながら上品なミネラルもあるため、今後梅雨時期にピッタリの爽やかさだろう。
その時合わせて開けた赤は「テヌータ・ディ・トリノーロ チンチナート(Tenuta di trinoro CINCINNATO) 2001年」だった。テヌータ・ディ・トリノーロと言えば以前もこちらで「パラッツィ ロッソ・デ・トスカーナ 1999年」を、自宅で同「2010年」を開けたが華やかなアートラベルが特徴的。この「チンチナート」は対照的に極力シンプルだ。聞けば「1999年」「2001年」「2003年(生産本数1300本)」のみ作られた幻のワインと言う。

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しかもこの葡萄品種チェザーゼ・ダフィーレは、既にサルティアーノの畑から抜かれているため二度と作れないとの事。ニューヨーク生まれでローマ育ち、今やトスカーナの鬼才と言われるアンドレア・フランケッティ(Andrea Franchett)氏の作品は、個性的で気まぐれで面白い。ローズがかった濃い赤。干しブドウ・黒オリーブ・黒砂糖などを複雑に煮詰めた香り。そこにハーブの清涼感が綺麗に蓋をしてくる。「ナニコレ魅惑の香りね!」と妻は満足していた。
ピュアに凝縮したまさに葡萄そのもの、そしてイタリアの太陽の強い日差しや風土を感じさせる。アルコールが15%もあるのだが、ふくよか果実味がしっかりと受け止めてバランスは良い。アマローネ系の雰囲気もあり、食後酒でも楽しめそうだった。その他も記憶にあるのは「ポデーレ・サリクッティ ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(Podere Salicutti Brunello di Montalcino) 2000年」。

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「サリクッティ」は1994年設立と比較的新しいドメーヌだが高い評価を得ている。この「2000年」は生産量わずか500ケースと言う事だ。植物を感じるハーブの香り、ドライフラワー、透明感のある綺麗な香りがグラスの縁から溢れ出す。いかにもサンジョヴェーゼらしい香り・・まだ若々しいが、アタックから中盤にかけて優しく果実味がふくらみ、柔らかい酸味と調和して飲みやすい。
1時間もするうちに少しずつ開き初めて、なめし皮、落ち葉のような熟成による複雑さもわずかだが出始め、美味しく楽しめた。その別日の乾杯は「ヴェツオーリ フランチャコルタ ネフェルティティ ブリュット(Franciacorta Nefertiti Brut Vezzoli) 1999年」を開けた。「1999年」は生産量わずか5000本という希少なビンテージ、当然ながら期待も高まる。グラスに注がれると落ち着いた黄金の泡が揺らめき美しい。

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キノコ・獣の皮・洋梨・シロップ漬けの白葡萄・・多用でいて優しい香りがゆっくりと流れ出す。ブラン・ド・ブランらしい柔らかい口当たり、それでいて一定の厚みあるしなやかな飲み口だ。「ネフェルティティ」とは古代エジプトのツタンカーメンの義母の名、そのネーミングが相応しい美しい味わいであった。それに続いて開けたのは
「アジェンダ・アグリコーラ ラ・チェルバイオーラ サルヴィオーニ ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(AZIENDA AGRICOLA CERBAIOLA SALVIONI) 1996年」。ジュリオ・サルヴィオーニ氏が作る「幻のブルネッロ」だ。肉厚でまろやかな風味が印象に残る。予想よりもまだまだ若々しく力強かった。果実のふくよかさとタンニンの繊細さの調和が取れていた。ちなみに「サルヴィオーニ」のラベルは今も手で張っているそうで、ボトリングも2004年まで手作業だったとか。

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そうなるとやはりこれ、「アジィエンダ・アグリコーラ トゥア・リータ レディガフィ(Azienda Agricola Tua Rita Redigaffi) 2001年」だろう。「レディガフィ」とはワイナリーに流れている小川の名前。イタリアワインでメルロー100%というから面白い。メルローらしい完熟した香りがテーブルに漂っていた。
タンニンはしっかりと感じるがメルローらしく飲みやすい。ゆっくり味わううちに、ボルドー右岸を彷彿させる鉄っぽさも奥にかすかに感じ始める。豊かな果実味と酸のボリュームのバランスが良くて、「ネフェルティティ」に続いて好きなエレガント系の1本で満足だった。妻は派手なラベルや「トゥア・リータ」の文字間に小さなハートがあるのも気に入っていた。

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そうだ基本の「カデル・ボスコ キュヴェ アンナマリア・クレメンティ(CA’DEL BOSCO Cuvee Annamaria Clementi Franciacorta) 2003年」(以前こちらでは「アンナマリア・クレメンティ ロゼ 2003」も開けている)の後に開けた「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ ビオンディ・サンティ(Biondi Santi Brunello Di Montallcino)1978年」も良かった。
ブルネロディモンタルチーノの「伝説」とでもいうべきビオンディ・サンティ。長熟と言われるが、30年の時を経て何ともスムーズでシルキーな舌触り。独特のしっとりした酸味が、溶け込んだ果実とほどけたタンニンを優しく包みこんでいる感じだ。時間が経過すると葉巻の香りも漂う。余韻は穏やかに広がる。熟成によって柔らかくなったビオンディ・サンティが繊細な仔羊とうまく共演してくれた。

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そうそう数年前にはこちらで、インポート・マネージャーのジョヴァンニ・マッツォーニ(Giovanni Mazzoni)氏を迎えての「オルネッライア(ORNELLAIA) メーカーズディナー」も行われ参加した。1981年イタリア・トスカーナのボルゲリ地区に創設された「オルネライア」。「サッシカイア」「アンティノリ」と共にスーパータスカン(スーパートスカーナ)と言われる。
我が家的には実は「サッシカイア」「アンティノリ」の方が飲む機会は多い。例えばイタリア・フィレンツェの「エノテーカ・ピンキオーリ フィレンツェ」や東京「リストランテASO 代官山」でそれぞれ「アンティノリ ソライア(Antinori SOLAIA) 1990年」を、ザ・リッツ・カールトン京都「ラ・ロカンダ」では同「ソライア 2009年」を開けたし、「サーラカリーナ」でも同「ティニャネロ(Antinori Tignanello) 1988年」を、

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他店でも同「ティニャネロ 2012年」も開けた。カベルネ・ソーヴィニヨンを主体としてイタリアらしくないといえばそれまでだが、安定した味わいは外れが少ない。対して「オルネライア」は、フィレンツェのマルコ・スタービレ(Marco Stabile)シェフが来日した際、料理に合わせて勧めてくれた「レ・ヴォルテ オルネライア(Le Volte dell’Ornellaia) 2010年」を開けた。
「オルネッライア メーカーズディナー」は興味深く、特別に個室で楽しませてもらった。珍しい「オルネライア」の白「ポッジョ・アッレ・ガッツェ(Ornellaia Poggio alle Gazze) 2011年」や25周年記念ボトルの「オルネッライア 2010」「オルネッライア 2006」など詳細な説明を聞きながら飲み比べした。ちなみに「オルネッライア」「サッシカイア」「アンティノリ」は血縁関係。

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本家の長女系列が「サッシカイア」、次女系列が「アンティノリ」と「オルネッライア」だった。その後「オルネライア」は、カリフォルニア「ロバード・モンダヴィ」が参入しオーナー一族は退いた。現在はイタリア「フレスコバルディ」の所有となっている。名前が出たついでに記しておくと、イタリア・フィレンツェ「エノテーカ・ピンキオーリ本店」では、
45000本を越えるという垂涎のワインが素晴らしい(地下セラーも拝見した)。訪れた時にお願いしたのは何杯も飲める「グラスワインコース6」(2人で9000€ この時1€=150円超)。「ギィ・アミオ モンラッシェ(Amiot Guy et Fils Montrachet) 1996年」「アンティノリ・ソライア(ANTINORI SOLAIA) 1990年」「シャトー・レオヴィル・ラスカーズ(Chateau Leoville Las Cases) 1990年」

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「シャトー・マルゴー(Château Margaux) 1990年」「アンリ・ジャイエ ヴォーヌ・ロマネ・ボーモン(Henri Jayer Vosne Romanee Beaumonts) 1990年」「シャトー・ペトリュス(Chateau petrus) 1990年」という錚々たるラインナップだった。唯一のイタリアワインだったその「アンティノリ ソライア 1990」は、サンジョベーゼとさすがのバランス。
熟成を経てふくよかで気品があった。料理とのマリアージュだけを考えれば、むしろソライア1本で通した方が良かった位だった。そうそうこの時、ジョルジオ・ピンキオーリ氏に「奥様への誕生日プレゼントです」とサイン入りでプレゼントされたのが、赤いラベルの「ポデーレ ポッジョ・スカレッティ ピアントナイア(Podere Poggio Scalette Piantonaia Alta Valle della Greve) 2000年」だった。

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ポデーレ・ポッジオ・スカレッティが唯一生産しているのは青ラベルの「イル・カルボナイオーネ(Il Carbonaione)」。このピアントナイアは、ピンキオーリ氏が「エノテーカ・ピンキオーリ」のためだけに作らせている特別のワインだ。葉巻・黒胡椒・動物の毛・・ふんわりとした熟成香が漂う。アタックから心地よい酸味と独特の金属製の甘味が広がる。
メルロー100%らしい穏やかな親しみやすさ。余韻にはエスプレッソコーヒーのような苦味が残る。「大人の苦味が良いわ~」と妻も大満足のよう。フィレンツェの思い出を語り合いながら、ゆっくりと堪能した1本となった。思えば地元の「リストランテASO 福岡・天神」で飲んだイタリアワインと言えば、少し前に「カステッロ・ディ・アマ ラッパリータ(Lapparita Castello Di Ama) 1995年」を開けた。

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キャンティ・クラシコの名門「カステッロ・ディ・アマ」。サンジョベーゼの素晴らしいワインも作り出しているが、こちらはメルロ100%。ポムロールから持ち込んだクローンが、粘土質の土壌にピタリとはまり高い評価を博している。「1985年」がファーストビンテージだ。グラスに注ぐと落ち着いたガーネット。柔らかながらも動物香・凝縮した太陽・血・皮・土・・様々な要素のブーケが軽やかに混じり合う。
細やかなタンニンはなめらなタッチ。黒胡椒のようなスパイシーさに微かなハーブのニュアンスも重なる余韻は長い。時間と共にチョコレートの雰囲気も出るが、上品な酸が決して印象を崩さない。メルロ100%でありながら、ボルドーで言えば右岸より左岸のスパイシーなものを彷彿とさせるエレガントさもあった。そうそう「リストランテASO」では「ジャコモ・コンテルノ(Giacomo Conterno) 1964年」も開けた。1960年代屈指のビンテージと言われている。

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生産者として1770年から続くコンテルノ家が、1900年に「ジャコモ・コンテルノ」を創業。古典派バローロの最高峰「王のワイン」と呼ばれる。かなりかすれたラベル、グラスに注ぐとロゼを通り越したかなり薄い色調だ。ただ色程に朽ち落ちているわけではない。獣っぽい香り・ワインのエキスを含んだ葡萄酢・・50年の時に感謝しながら少しずつ口に運ぶ。ワインの風味をまとった聖水という趣きだろう、妻は案の定一口で止めた(笑)
ちなみに「サーラカリーナ」が2017年夏に閉店する時に、記念で同「ジャコモ・コンテルノ モンフォルティーノ バローロ リゼルヴァ(Giacomo Conterno Monfortino Barolo Riserva)1995年」を開けたがまだ早かった。更に遡ると「リストランテASO」では「チェレット バローロ ブリコ・ロッケ(Azienda Agricola Ceretto Barolo Bricco Rocche) 2001年」を2本開けていた。すみれ・ミネラルの鋼をびしっとまとった印象だ。

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「ガヤ」にも感じるバリックで丁寧に作ったネッビオーロ特有の澄んだアロマが、香りの奥に潜んでいる。細かいタンニンが口の中にこぎみよい存在感を見せる。そして余韻にはかすかな心地よい苦みを残す。ブルゴーニュに感じる紅茶ではなくて、砂糖を入れたミルクティーのようなニュアンス。家族経営で丁寧なワイン作りをしているチェレットらしい上質さであった。その他はASOのパーティで出て来た
「ラ・マッサ キャンティ・クラシコ ジョルジオ・プリモ(La Massa Chanti Classico Giorgio Primo) 1999年」か。「ひらまつグループ」秘蔵のダブルマグナム(3L)が3本提供された。1992年に創設されたドメーヌだが高い評価を得ている。干葡萄・ローズウォーター・動物の皮・・・4時間前に1度デキャンタージュしていることで柔らかい口当たりが印象的だった。さてさて、去年2016年の「世界のベストレストラン」では、

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イタリア北部エミリアロマーニャ州モデナにある「オステリア・フランチェスカーナ(Osteria Francescana)」が初の世界一に輝いた。そのオーナーシェフであるマッシモ・ボットゥーラ氏が来日しフェアが行われ参加した時には、「ガヤ バルバレスコ(GAJA BARBARESCO Denominazione di origine conterollata e garantita) 1998年」を開けた。
白はグラスで「ガヤ カ・マルカンダ ヴィスタマーレ(Gaja Ca’marcanda Vistamare ) 2014年」をお願いした。我が家が自宅で一番良く開けるのはその「ガヤ(ガイヤ)」。ピエモンテ・バルバレスコの代表的な生産者「アンジェロ・ガヤ」は、14の畑から造られる(ネッビオーロ100%)バルバレスコがフラッグシップだ。最近でも「ガヤ バルバレスコ 2005」は数本開けている。他も「ガヤ ソリ・サン・ロレンツォ ランゲ 1999」

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「ガヤ ソリ・サン・ロレンツォ ランゲ 2000」「ガヤ ランゲ スペルス 2001」「ガヤ ランゲ スペルス 2003」「ガヤ ランゲ スペルス 1996」「ガヤ ダルマジ 1995」「ガヤ ダルマジ 2001」「ガヤ・グラッパ ディ・ネッビオーロ コスタ・ルッシ」なども開けて楽しんだ。中でも「ガヤ バルバレスコ(Angelo Gaja BARBARESCO Denominazione di origine conterollata e garantita) 1978年」は、
グラスに注ぐと古酒らしい澄んだレンガ色から麝香、白トリュフ・ジロール・紅茶・土・・表現しにくい様々な香りが複雑に絡み合いながら立ち上る。それらが大きな一つの塊のように集中して迫ってくる。「これは当たりだね♪」と妻も機嫌よい。舌の上にも華やかな凝縮した甘みがずんと乗り、やがてじんわりとした旨味を感じ、長く続く余韻を構成する。以前飲んだ同「ガヤ バルバレスコ 1967年」も良かったが、こちらの方が好みでかなり良かった。

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と言う訳で我が家のセラーにはもう1本「1978年」と、間を取って「1970年」のストックがある(笑) ちなみにその「1967年」のラベルはヴィンテージが穴あき表示されているクラシカルなデザイン。父のジョヴァンニ・ガヤ(Giovanni Gaja)時代の珍しい1本だった。我が家のセラーには「1964年」も眠っているが、このラベルはカラフルでかなりアートなラベルとなっている。
そうそう「1967年」をじっくり味わった後は、ピンクのラベルが可愛いと妻が喜ぶ「ガヤ・グラッパ ディ・ネッビオーロ コスタ・ルッシ(GAJA GRAPPA di Nebbiolo COSTA RUSSI)」を開け、ガヤ尽くしで楽しく長い夜を過ごした。ついでに思い出すと、「アロマフレスカ銀座」では青い鳥が並ぶラベルの白「ガイヤ ロッシバス シャルドネ(GAJA ROSSJ-BASS) 2008年」を開けた。

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バルバレスコのブリッコ地区ロッシィ畑とポッゾ地区バス畑から作られる。アンジェロ・ガヤの娘ロザンナにちなんで名付けらた。グレープフルーツの様な苦みを伴った柑橘系果実と花の香り、上品な蜜、爽やかな酸味が印象的だった。ちなみにその時続けた赤ワインは「アイスーマ バルベーラ・ダスティ(Ai Suma Barbera d’Asti) 1996年」だった。
ところでイタリア人シェフの来日イベント的な物で言うと、イタリアンの3ッ星「HEINZ BECK」ハインツ・ベックシェフが来日した時は、グラスで「カ・デル・ボスコ フランチャコルタ キュヴェ・アンナマリア・クレメンティ 2005年」「ラ・コロンベーラ イル・モンティーノ コッリ・トルトネージ」「シルヴィオ・メッサーナ モンテセコンド キャンティ・クラシコ 2011年」「カヴァロット バローロ リゼルヴァ・ブリッコ・ボスキス ヴィーニャ・サン・ジュゼッペ 2006年」をお願いした。

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そして「アルマーニ / リストランテ」にエンリコ・デルフリンガー(Enrico Derflingher)シェフが来日した時は、グラスで「ベルルッキ キュヴェ’61 ブリュット・ロゼ」、ボトルで「シロ・パチェンティ ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ 2003年」を楽しんだ。次にアート的な物で言うなら、ピエモンテ州「ラ・スピネッタ(La Spinetta Barolo)」。
「バルバレスコ」で有名なラ・スピネッタ社のと言えば、ルネサンス期のドイツ画家アルブレヒト・デューラーによるサイの木版画ラベル(1995年~)と言った印象だが、「バローロ」はライオンの木版画となっている。威厳ある百獣の王と言う位置づけとの事。博多「アンティカ・オステリア・トト」でオレンジラベルの「ヴィニェート・カンペ(La Spinetta Barolo Vigneto Campe) 2004年」と、

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赤ラベルの「バローロ ヴィニェート・ガレッティ(LA SPINETTA Barolo Vigneto GARRETTI) 2008年」は銀座「ブルガリ イル・リストランテ」などでも開けた。2000年に購入した8haの単一クリュで造られる「カンペ」は、ふくよかな果実の香り、バリック使用によるバニラ、ネッビオーロに多い葉巻、藁っぽい香りは控え目で直線的な感じ。
樹齢50年以上と言う古樹のネッビオーロからくる、太陽を照り付けて凝縮したような独特の甘味がアタックから余韻にかけて存在感を示す。その後第2弾としてリリースされた「ガレッティ」は「2006年」が初ヴィンテージ。グリンツァーネ・カブールにある2.2haの畑の樹齢約30年のネッビオーロから造られ、年間生産量は8000本程。「2008年」は若干のざらつきを感じるが、スムーズなタンニンでエレガントさもある。

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香ばしい海の香りも感じられ、複雑さを重ねてくる。時間と共にネッビオーロらしい存在感のあるタンニンの苦味が口元に残り収斂性を出てくる。太陽を受けた凝縮感、干しぶどうのような果実味、ふくらみある黒い果実・・非常に綺麗な造りでモダンな軽さもあり楽しめた。そして「モンテヴェルティーネ ル・ペルゴール・トルテ(Le Pergole Torte Montevertine)」。
画家アルベルト・マンフレッディ(Alberto Manfredi)氏作の「女性の顔」が有名なサンジョヴェーゼ100%のワインだ。1976年が初ヴィンテージ。毎年ラベルが変わるのでイタリアの「ムートン・ロートシルト」と呼ぶ人もいる。彼の死により1999年ヴィンテージからは過去の作品が使用されている。「2004年」「2006年」「2007年」「2009年」を開けたが、大柄ではないが繊細で上品な飲み口は平日の自宅やカジュアルなオステリアなどに合う。

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同じ感覚で、グラッパ「ロマーノ・レヴィ(Romano Levi)」の手描きラベルをリストランテで見掛けたらつい飲んでしまう(笑)。さてイタリアワインといえばこちらも外せないだろう。イタリアらしい黒ベースに派手デザインなボトルと言えば「ルーチェ・デッラ・ヴィーテ(Luce Della Vite)」の「ルーチェ(Luce)」「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(Brunello di Montalcino)」を思いつくが、
黒い派手なラベルなら「パオロ・スカヴィーノ バローロ・カンヌビ(Paolo Scavino Barolo Cannubi) 2004年」がお勧めだろう。エンリコ・スカヴィーノが作り出すモダン・バローロの申し子と言われるドメーヌだ。カンヌビの単一畑で生産本数は極めて少ない。1993年から回転式発酵タンクを導入するなどモダンバローロを牽引して来た。グラスに注ぐと濃い色調のガーネット色、粘着性がある。

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バローロらしくない独特の香り、豊かな果実味に続いて絵具やタールのようなむせかえる感覚。アタックは力強いがストンと落ちて余韻は短い。2時間もすると酸味の色調が漂って香には落ち着きと、味わいにもバランスを感じ始める。湿った上質の皮のようなニュアンス・・しっとりとしたその雰囲気が気持ちを落ち着かせてくれる感じだ。エレガントさの奥にある野趣な味わいは面白かった。
さぁ、これからの蒸し暑い季節には赤ワインがなかなか進みにくいが、これなら軽く飲めるだろうと先日選んだのは「ファッレット・ディ・ブルーノ・ジャコーザ バルバレスコ・アジリ(Falletto di Bruno Giacosa Barbaresco Asili) 2005年」。「ガヤ」と並ぶピエモンテ・ランゲ地区の「ブルーノ・ジャコーザ」。繊細なタンニンと上品な飲み口はいつ飲んでも外れが少ない。「バルバレスコ・アジリ」はバルバレスコ単一畑の一つで、1961年から瓶詰めされている名品。

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ネッビオーロ100%。ステンレスタンクで発酵、1100Lオーク樽で24カ月熟成12ヶ月瓶熟。甘い熟した赤い果実の香り。インク・紅茶・動物の毛・・アタックは柔らかく、中盤から余韻もスムーズなタンニンがシルキーに流れる。余韻は枯葉のようなニュアンスが熟成を感じさせる。複雑さは余りないもののチャーミングな飲み口だった。ちなみに以前飲んだ同「バルバレスコ 2005」のラベルと今回のラベルは少し違う。
「ブルーノ・ジャコーザ」には2種類あって、長期契約畑の葡萄から作った「カーサ・ヴィニコラ・ブルーノ・ジャコーザ(Casa Vinicola Bruno Giacosa)」と、自社畑の葡萄から作った「アジィエンダ・アグリコーラ・ファッレット・ディ・ブルーノ・ジャコーザ(Azienda Agricola Falletto di Bruno Giacosa)」。醸造場所や醸造は同じで違いは全くない。これは「FALLETTO」の金文字があるので(コルク栓にも)、自社畑の葡萄から出来たワインと言う事になる。

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そして以前開けた同ブルーノ・ジャコーザ バルバレスコの「サント・ステファノ・ディ・ネイヴェ(Bruno Giacosa Barbaresco Santo Stefano di Neive) 1995年」は華やかで複雑な香り。花・野生み・ムスクの様なくぐもった感じがニュイっぽいが、そこまでスパイシーさはない。絵の具・ドライフラワー・カフェイン・エスプレッソなど樽からくるタンニンも感じられる。
アタックから独特のバランスを保った果実味が上品に広がり、色気ある余韻へとつながる良い状態であった。ではもう2本、やはり外せない「ロベルト・ヴォエルツィオ ランゲ・ネッビオーロ サン・フランチェスコ・エ・フォンタナッツァ(Roberto Voerzio Langhe Nebbiolo Vigneti S.Francesco Fontanazza) 2007年」も挙げておこう。1987年創設のロベルト・ヴォエルツィオは、畑の手作業を重視し収穫量は徹底的に抑えている。

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いわゆる「バローロ・ボーイズ」として語られるが、新樽比率は50%前後で自然でエレガントなワインを作り出す。スミレ・黒胡椒・ダークチェリー・インク・・魅惑的な香りが開けた直後から穏やかに漂う。やや遅れて香ってくる動物香もエレガント、チャーミングな甘さがあり涼しげな酸味と調和している。収斂性のある乾いたタンニンはネッビオーロらしい。黒砂糖と苦味が混ざったような余韻もとても長い。
1時間もすると野性味・インクのニュアンスが奥に引っ込み、甘酸っぱいローズウォーターのようなブーケも広がり始める。醸造はごく自然に行い特別なことはしていないという。丁寧な畑作業で収穫量を抑えることで、ここまでエレガントになることをあらためて思い知らされるワイン。「ロベルト・ヴォエルツィオ」といえばバローロであるが、このランゲ・ネッビオーロも十分な味わいであった。

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ザッと思いつくままに我が家好みのイタリアンワインを挙げて来た。記事を書きながらイタリアワインを飲みたくなってこの週末開けたのは「ロアーニャ バルバレスコ アジリ ヴェッキエ・ヴィーニュ(Roagna Barbaresco Asili Vecchie Vigne) 2008年」。1880年から既に化学肥料を使用せず除草もしない環境で葡萄を栽培してきたドメーヌだ。
自然酵母による大樽発酵という昔ながらの醸造にもこだわり、100日にも及ぶマセレーションを行う。その独特の哲学にファンも多い。初めてのワイン?と思ったのだが「これ飲んだよ」と妻。慌ててテイスティングノートをひっくり返すと・・「1990年」も随分前に開けていた。ラベルのデザインでインプットする妻のドヤ顔に圧倒されつつ開けてみた(笑) 透き通った赤果実・スミレのドライフラワー・甘草・キノコ・・

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自然派らしい複雑でいてチャーミングな香り。柔らかいアタックに続く、きめ細かいタンニンがよりやさしさを強調する。アルコール表示は14%であるが、高めの酸がバランスを取ってくれる。余韻はかなり短く力強さ・凝縮感には欠けるが、逆に滋味深く飲み手に何とも言えない優しさを残してくれた。
フランスワイン中心の我が家であるが、イタリアワインも時々飲みたくなる。ただバラエティに富んだ(言葉を変えれば玉石混交で質にばらつきのある)イタリアワインだからこそ、レストランで信頼できるソムリエが勧めてくれるワインも楽しむようにしている。次はどちらで何を飲もうか・・そんな会話で盛り上がった週末であった。