慌ただしくも楽しく過ごせた年末年始、気が付けば2017年も10日以上過ぎ、今日は鏡開きを行った。このまま行くとまた色々とお蔵入りになってしまうので、恒例の「年末年始に楽しんだワイン」をザッと上げておこう。色んな人と色んな酒を頂くホリデーシーズンではあるが、やはり自分が気分で選んだワインが美味しく感じる。まずはクリスマス・イブ。
アフタヌーンティーとしてチェリ~が選んで来たクリスマスケーキは、「ジャン=ポール・エヴァン(JEAN-PAUL HEVIN)」の新作バッグ型「ビュッシュ・ファッション」。食感が魅力的なショコラ・ノワールのクルスティヤン・シュトロイゼルの上に、ムース・ショコラ・ノワールを乗せたという濃厚な一品。よってこれに合わせて開けたワインは「シャトー・ペトリュス(Chateau Petrus) 2011年」。

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言うまでもなくボルドー右岸ポムロールの代表的なワイン。ちょうど3年前の正月に「ペトリュス 2004」を開けて楽しんだ。思えばイタリア「エノテーカ・ピンキオーリ・フィレンツェ」で飲んだ「ペトリュス 1990」は、まだまだ果実味にあふれた力強さが特徴的だったし、某ホテルレストランで開けた「ペトリュス 1976」はすべらかなバランスが印象的だった。
乾杯のグラスは妻一番のお気に入り「シャトー・バカラ ワイングラスXL レッドスタンプ」。シャトーバカラはタンブラーまで全てのシリーズを愛用しているが、中でもこのグラスはバカラ250周年を記念して作られた物。バカラのシンボルカラーの赤いクリスタルに「B」マークを封蝋のようにあしらっている。直径11.5cmの大きな膨らみと、24.5cmの高さも華やかだ。

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そしてデカンタは「リーデル ブラック・タイ ブリス」、高さ36.5cmで容量1210ml。真ん中がハート型にあいたハンドメイドな芸術品だ。いつもは「リーデル ソムリエ ブラック・タイ ブルゴーニュ・グラン・クリュ/ボルドー・グラン・クリュ」に合わせて使うが、この夜は妻の指定での登場となった。さて今回の「ペトリュス 2011」、凝縮した黒い果実・樽香・柔らかいスパイス・控えめなハーブが奥に香る。
すべらかなアタック、微細なタンニンは溶け込んでいるが、なめらかでリッチ。細かく砕いた黒コショウを伴ったような余韻は長い。舌の上に膜を張ったような苦みが残るも心地よい。2時間経つ頃には、葉巻・血・鉄・甘草・バニラ・コーヒー・・・複雑なアロマがゆったりとした時間軸で開いてきた。中心部分に果実のエネルギーがたまっており、それがまだ柔らかくもしっかりと留まっているが、メルローの柔らかさで早くからそれなりに飲める。

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まさに濃厚な「ジャン=ポール・エヴァン」のショコラにピッタリな味わいで、妻も満足そうだった。更にその後ディナー時からはシャンパーニュを開ける。選んだのは「テタンジェ アートコレクション(Taittinger Art Collection) 2008年」だ。このコレクション・シリーズは良質のビンテージのみ造られ、各ビンテージごとに異なるアーティストのボトルアートを施している。
1983年にファーストビンテージ「1978年」をリリース、それはハンガリーのヴィクトル・ヴァザルリ(Victor Vasarely)デザインで、ゴールドのボトルにオプティカル・アートが浮かんだとても美しい物だった。我が家も毎回楽しみに飲んでいて、何本かはボトルを保存している。例えばフランスのヴィエラ・ダ・シルヴァ(Vieira Da Silva)が描いた夜空の「1983年」や、アメリカのロイ・リキテンスタイン(Roy Lichtenstein)によるポップ・アートな「1985年」、

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ロバート・ラウシェンバーグ(Robert Rauschenberg)のモダンアートな「2000年」。中でも妻のお気に入りは、チリのロベルト・マッタ(Roberto Matta)による華やかな原色使いの「1992年」だ。そして今回開けた「2008年」は「2002年」以来6年ぶり13回目となる。ブラジルの写真家セバスチャン・サルガド(Sebastião Salgado)の撮った黒ヒョウをデザインしたボトルだ。
彼と言えばユージン・スミス賞を受賞した世界的な報道写真家。ナミビアのダマラランドにあるバラブ・リバー・ヴァレーにいたヒョウの写真を特殊加工したパッケージは、黒いボディにシルバーに光り浮かんで妖艶な風情。妻は「男性へのプレゼントに良いわね」と見入っている。アートなワインにはアートなグラスと言う事で、選んだのはニューヨーク近代美術館(MoMA)に展示されている美しきシャンパンフルート「ロブマイヤー アンバサダー(LOBMEYR Ambassador)」。

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ウィーンの建築家オズワルド・ヒエーテル(Oswald Haerdtl)が1925年パリ万国博覧会へ出品する為にデザインした名作。注ぐと微細な泡はすっかりと溶け込んでいる。テタンジェらしいイースト香も柔らかで落ち着いている。マーマレード・白桃と黄桃・グレープフルーツの皮・・アタックから仄かな甘みを伴った旨味が広がる。繊細なミネラルとともに微かな苦みが余韻に長く残る。
フレッシュで柔らかでいて十分な酸が全体を覆っている。シャルドネを生かしたテタンジェらしい上品な味わいだ。シャルドネとピノ・ノワールが50%ずつだが、どちらかというとまだシャルドネの印象が強い。1時間経って白ワイングラスで楽しむ頃には、飲み口には厚みを、香りにはバター、ゴム的な雰囲気も出てくる。数年経つと上のステージに発展しそうな1本、また数年後に開けてみたい。

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さて翌日クリスマスは妻の希望で、予定を一部変更して我が家お馴染みの九州を代表する寿司店「すし割烹 やま中 本店」へ向かう。日曜は定休日だが、年内最後の日曜だけは実は特別営業している。毎年午前中は神棚も造られて「魚供養」が厳かに行われるそうだ。今年も年末のご挨拶と言う事で夜伺った。
持ち込んだのは、妻希望の「ルイ・ロデレール クリスタル ロゼ(Louis Roederer Cristal Rose Brut) 2007年」。昨年の春、お花見ロゼとして自宅で開けている。この夜は樹齢800年の木曽檜一枚板カウンター背後の、艶やかな「朱塗りの壁」と色合わせと言う訳だ。建築家・磯崎新氏の設計するモダンな店舗は、打ちっぱなしのコンクリートにガラス張りで我が家好み。いつも満席で賑やかな店内も特別営業とあって、貸切に近い風情が何ともクセになりそうだ。

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1974年が初ヴィンテージの「クリスタル・ロゼ」。グラスに注ぐと、美しい桜色の中をキラキラと揺れる微細な泡が活発に立ち上る。妻も機嫌良く眺めている。桜餅・チェリー・ドライフルーツ・細かく砕いたスパイス・アーモンド・・柔らかいアタックに繊細なミネラル。チャーミングな果実の酸味が広がる。この「2007年」からビオディナミで栽培する葡萄を使用し、ドサージュは8~9gに減らしたというが甘めに感じる。
最初は低めの温度から味わい徐々に温度を上げて楽しむ。ワインとしての満足度からすると前回と同様に微妙であるが、上質な酒質を楽しんだ。ちなみに「やま中本店」の料理は、五島列島産クエ(17Kg)」の肉厚しゃぶしゃぶ、一晩寝かせた天然ふぐ(3Kg)の薄造り、ふぐの白子焼き、宇部のワタリガニの宝生巻、タイラギの磯辺焼き、蛤のお吸い物など、年末らしい美味しさをたっぷり堪能した。

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と言う訳であっという間に大晦日。大晦日の夕方、老舗ふぐ料亭「博多 い津み」から「天然ふく刺と特撰おせち」が届けられる。博多で河豚と言えばやはり「い津み」が一番上質であり、我が家のお気に入りの料亭でもある。毎年大晦日に「天然ふぐ刺し」をお願いしているのだが、今年は豪華な三段重ねのお節もお願いした。
家族で早めの時間から楽しむと言う事で、今年もセラー室から選んだのは1500ml。マグナムボトルの「ルフレーヴ シュヴァリエ・モンラッシェ グラン・クリュ(Leflaive Chevalier Montrachet Magnum) 2006年」だ。ちなみに昨年の年越しマグナムボトルは「アンリオ キューヴ38 グラン・クリュ ブラン・ド・ブラン」だった。

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ワイン造りに500年、ドメーヌ設立200年の歴史を誇る、ブルゴーニュの白ワイン最高の作り手「ドメーヌ・ルフレーヴ」。我が家でもお馴染みと言ったところだ。中でも「モンラシェ」と共に定評のあるのがこの「シュヴァリエ・モンラッシェ」。「シャトー・バカラ」に注ぐと深い黄金色が優雅に揺れる。ナッツ・シェリー・・何とも厚みのある香り。煌めくようにピュアな酸が下支えしつつ、豊かな果実味が口の中にぐっと自然に開く。
マグナムらしいフレッシュさと10年によって始まった熟成感が程よく調和して、自然の旨味に溢れた天然ふくにピタリと合った。そしてお節と言うと和洋中問わず、強い味付けに疲れが来るのであるが「い津み」のそれは優しい自然な味付けだ。車海老黄身寿し・サーモン小川・菜の花辛子漬・鮑味噌炊き・鳥肝松風・・など皆でワイワイ楽しく頂けた。

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その後妻が「最後は当然ボルドーにしてよね!」と語尾を強めたので(笑)、当然セラー室から選んだのは妻の愛する「シャトー・ラトゥール(Chateau Latour) 1988年」。思えば1988は「ジョエル・ロブション来日 黒トリュフガラディナー」でも開けた。「リーデル ソムリエ ボルドー・グラン・クリュ」に注ぐと、杉・土・ピーマン・曳いた黒コショウ・・複雑かつ深いクラシックなラトゥールらしいブーケに満たされる。
しなやかながら伸びるタンニンと落ち着いた酸が絡み合いながら、若干の苦みを伴った余韻を構成する。年末も押し迫る3時間後には、枯葉と湿気た土が混じった森の雰囲気が立体的にせり上がり、終わる2016年と来たる2017年を目出度も美味しく越せた。と言う訳で開けた新年、お屠蘇代わりという理由を付けて昼から頂くシャンパーニュが嬉しい(笑)

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実は大晦日には妻の大好きな「ドン・ペリニヨン(Dom Perignon)」の、しかも「1955年」を乾杯に開けて、その残りを元日お屠蘇代わりに戴こうと言う計画であった。ところが肝心の「ドン・ペリ 1955」が良くなかった。ネックがかなり下がっていたので不安であったが、やはり案の定。薄い出がらしのシェリー酒を水で更に薄めた様な状態にガックリ。過去に「ドン・ペリニヨン」はブショネに遭遇した事がなく、古酒でも外した事もなかったので最後のオチと相成った(厄払いに間に合った)。
ちなみに1955年のシャンパーニュ地方は、9月末から10月上旬にかけて大収穫となり「非常に良質でコシが強く爽快な酸もあり、秀逸なヴィンテージ」とされている。そうは言ってもこれだけ古くなると当然、リスクも高くなる。妻はしみじみと「可哀想に・・開けるべき時に開けてあげなくてごめんね」とボトルに話しかけていた。

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こんな失敗も古酒の醍醐味に内在するものとは言え、今年は余り無理せず適度に飲み頃のワインを美味しく頂く事を目指そう。そう言った訳で結局、元旦昼間のお屠蘇代わりにしたのは、新年らしいフレッシュで上品なシャンパンを・・と方針転換で「ローラン・ペリエ グラン・シエクル(Laurent-Perrie Grand Siecle) 」をチョイスする。1812年創業「ローラン・ペリエ」のプレステージ・シャンパーニュ「グラン・シエクル」は1960年に初リリース。
ルイ14世の結婚300周年を機会に「偉大なる世紀(ルイ14世時代)」と名づけられた。丸い独特のボトルは「ヴェルサイユ宮殿のカラフ(ルイ14世代)」を再現したものだ。基本3ヴィンテージのブレンドでヴィンテージ表記はない。シャルドネ55%、ピノ・ノワールが45%。

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シャルドネは、アヴィズ、クラマン、オジェ、ル・メニル・シュール・オジェ等、ピノ・ノワールはアンボネー、ヴェルズネー、ブージー、アイ等、グラン・クリュの中でも評価の高い畑の葡萄を使用する。そう言えば昨年は珍しい単一年の「グラン・シエクル ラ・キュヴェ 1990」を開けた。ルイ14世の流れと言う事でグラスは、ルイ15世認可で創設された「バカラ」から、日光に煌めく「ベガ」シリーズにした。淡い黄色、香ばしいイースト香を伴った白い花のアロマ・柑橘の皮・・クリーミーな泡が口中を刺激する。
切れのある酸味が程よい旨味とチャーミングに広がる。余韻に微かな苦みを気持ち残すミネラルも和らかい。余韻は長くないが、まとまりをもった上品な味わい。積極的にレストランのリストからチョイスすることは少ないが、外したくない時に「アレクサンドラ・ロゼ」と共に視野に入る、完成度の高いシャンパーニュの1つだ。

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ただ3ヴィンテージをアッサンブラージュしながら情報はボトルに明記せず、デゴルジュマンも不明なので、ボトル差が結構あるのは注意を要する。前社長のイヴ・デュモン氏は「シャネルNO.5がどのようなコンポーネントか書いていないのと同じ」と言っていたが、ちょっと古い考えだろう。今回は信頼できる販売店で最近購入したものだから、おそらく若いもの。購入してから数年落ち着かせて飲むようにすると、更に美味しく飲めるかなと感じた1本であった。
取りあえずイブとクリスマス、大晦日と元日のワインをザッとアップしてみた。さぁ新年早くもフル稼働で多忙ではあるが、家族みんな楽しく日々邁進しつつ、上質なレストランでの時も刻み、上質なワインとの出会いを求めて行きたいものだと、改めて思う年明けであった。