今夏は猛暑続きで雨もほとんど降らなかった博多。そんな暑苦しい先月の某日、「暑い時はやっぱり上品なイタリアンに行きたいわよね?」と妻が言うので、電話をするのは博多を代表するイタリアン「リストランテ サーラカリーナ 福岡(Sala Carina)」。浄水通り近くの住宅街に静かに佇む、青々とした緑に覆われた戸建てレストランだ。1フロアーのみバリアフリーで「福岡市都市景観賞」も受賞している。
地中に潜ませたようなメインダイニングはこの季節は特に美しい。見渡せば蔓日々草、アンティークローゼ、キソケイ、パンジー、セージ・・景色と一体化する木の温もり(内装)に癒される。さぁ今宵もいつもの席で、いつもの様にベテラン今井正三オーナーシェフの「お任せコース」を頂こう。まずはスプマンテで喉を潤す。

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原田勲マネージャー(ソムリエ)のお勧め「カ・デル・ボスコ ヴィンテージ・コレクション ドサージュ・ゼロ(Ca’del Bosco Franciacorta Riserva Vintage Collection Dosage Zero) 2001年」を開けよう。13年寝かして最近リリースされた物だ。「ヴィンテージ・コレクション」は「プレステージ」と「アンナマリア・クレメンティ」の間の位置づけ。ブドウの良年だけに造られる。
この「ヴィンテージ・コレクション 2001年」ボトル裏に書かれたデゴルジュマンは「2015年 夏」。シャルドネ55%、ピノ・ビアンコ25%、ピノ・ネロ20%、アルコール12.5%。グラスに注がれると美しい濃いゴールド、白い花・白きのこ・微かな蜜・・かなりフレッシュで、ミネラル感とドサージュ・ゼロが緊張感を生み出す。

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それでも中心から果実のピュアな甘みが滲み出て、余韻の苦味を和らげつつ複雑さを醸し出す。妻も「これ美味しいね♪」とキュッと喉を潤しつつ機嫌が良い。そこへプレアンティパスト「夏のフルーツカクテル フレッシュ」が運ばれる。キウイ・カシスなどフルーツカクテルに山羊のフレッシュチーズをかけたもの。蒸し暑い日にピッタリの爽やかさで、フレッシュ感のある「カ・デル・ボスコ」にも合う。
続いては涼し気なガラスプレートに盛られた、サーラカリーナスペシャル前菜の「海の幸のマリネ アゲマキ、サイマキ海老、帆立、アオリイカ」だ。有明の大きなアゲマキが目を引く。料理を覆うスダチの泡が目にも舌にもアクセントだ。ナスタチウムやトウモロコシのスプラウト、シーアスパラガスも添えられ夏の彩り。

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 提供直前に仕上げたと言う各素材を、滋味深く引き立てるソースは「サルサヴェルデ(salsa verde)」。好みでスダチも絞りつつスッキリと頂いた。我が家のレストランの楽しみの一つが、そのレストランならではのワイン。ここ「サーラカリーナ」では原田ソムリエの勧めてくれるワインだ。いつもイタリアの上質でいて飲み頃のワインを勧めてくれる。
今宵選んだのは「カ・デル・ボスコ ヴィンテージ・コレクション」に続き「フェルシナ ファンタローロ(Felsina fontatalloro) 1998年」。トスカーナのキャンティ・クラシコを代表するドメーヌの一つである「フェルシナ」。サンジョベーゼ100%の「ファンタローロ」は1983年がファーストヴィンテージ。

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 2区画(キャンティ・クラシコ/キャンティ・コッリ・セネージ)サンジョベーゼをブレンドしバランスの良さを引き出す。伝統的な古い大樽での熟成。バルサミコ酢・干した皮・若い動物の毛・細かい黒コショウ・ジャコウ・オリーブ・オリエンタルスパイス・・複雑で魅惑的な香りが次々と変化しながら顔を出す。ローヌっぽい印象がありつつも、緻密なタンニンがサンジョベーゼらしい。
確かなストラクチャーの下、舌先から甘さと旨味が乗り、心地良い酸味がスムーズに広がる。口中はどこまでも滑らかで細やかなタンニンが満たす。香りはエッジが立ってるが、中盤から余韻にかけてはサンジョベーゼらしい優しさが支配する。気が付けば急に陽も落ちて店内も賑わっている。

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そこへ運ばれたのは前菜盛り合わせの「豆のサラダ 燻製赤ピーマン風味の牛ロースのサラダ仕立て フォワグラのプリンとカンノーリ」。フォワグラのプリンの上にはキャラメルソース。更にスプーンに乗せたチョコレートをかき混ぜ入れながら楽しむという趣向だ。燻製したスペイン産赤パプリカパウダーの余韻も纏わせた牛赤身ロース肉には、グレープフルーツの酸味も加えている。
複雑ながらまとまりのある味わいだ。白インゲンのピューレを敷いた豆のサラダは、コリアンダーが効いて美味しい。フォワグラを詰めてピスタチオでコーティングしたカンノーリの余韻が「カ・デル・ボスコ」と調和する。続くはお待ちかねパスタ2皿。まずはサーラカリーナの夏の看板メニューと言える「桃とフルーツトマトの冷製フェデリーニ」。

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わざわざ今井シェフ自らサーヴしてくれる。たっぷりと乗せられた桃とフルーツトマト。香りと共にその甘さのトーンの違いがコントラストを生んでいる。「さすがスペシャリテの味わいね」と妻も嬉しそう。そしてパスタ2品目は「夏のフレッシュポルチーニとサマートリュフのタヤリン」。目の前でサマートリュフをたっぷりと削りかけてくれる。
サマートリュフの軽やかな香りにポルチーニを合わせてタヤリンの食感を楽しむ満足の一皿。続く魚料理は「アラのソテー 夏カブのソース」だ。九州では高級魚アラ(クエ)が分厚く新鮮な状態で食せるのが嬉しい。プリプリに仕上げたアラを、ホワイトバルサミコソースで頂く。下には夏カブとユリ根の優しいピューレ、上にはパリツとしたグアンチャーレを添えて、その食感の変化でアラを挟み込んだ。

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サーラカリーナ定番の「鮎の魚醤の泡」が微かな風味と旨味も寄り添わせる。メリハリあっていかにもイタリアンらしい味わい。カボスを絞るとさっぱりとも頂けた。シェフが「今日初めて作った新作です」と言う事だったが、相変わらずの今井シェフの感性でピタリと着地して美味であった。さて「ピンクグレープフルーツのグラニテ」ですっきり口直しした後には、今宵のメイン「ボルドー産乳飲み仔牛」へと進む。
「ファンタローロ」に合わせて急遽合わせてくれたという黒ニンニクのピューレ、そしてマルサラワインをベースにしたソースにもフレッシュトマトで爽やかさを加えた。付け合わせはジロール茸や人参のスフレ、茄子やゴボウなど夏らしい華やかな色合いと味わい。優しく火を入れた滋味深い肉質自体が美味であるが、ソース、付け合わせで変化を添えつつ、「ファンタローロ」と共にイタリアンらしさを楽しめた。

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最後のデザートは「ティラミス」、これには残して置いた「カ・デル・ボスコ」を合わせてる。少し出てきた熟したハニー感をゆっくり味わう。期待した通り、夏の暑さで疲れ気味の身体をしみじみと癒してくれるような料理。とは言え単調ではなく、微かなトーンの変化でアクセントも加えて、綺麗に美味しいイタリアンだ。さすがに妻もお腹一杯で満足なギブアップ(笑)
今宵もワイン・料理・空間・サービスと大人のレストランならではの、そして地元ならではの楽しさを堪能した。帰りは今井シェフ・原田支配人・有吉ソムリエに見送られながら車に乗り込み、走る窓から月が浮かぶ夜空を見上げる。ばたばたしてる間に秋の気配か??そろそろ実りの秋がやって来る・・ワインが美味しい時期になるな~そう色々思いをめぐらしながら2人機嫌よく帰路に就いた。

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