稼働率が80%を超える東京都内のホテル。少なくとも「2020年東京オリンピック」まではホテル高需要が続くだろう。我が家は用途や立地によってホテルを使い分けるが、やはり好みは絞られてくる。この日宿泊したのは日本橋三井タワー最上部に位置する「マンダリンオリエンタルホテル東京(Mandarin Oriental Tokyo)」。
「フォーブス・トラベルガイド2016年 格付け」で、東京のホテルとして唯一2年連続「ホテル部門」「スパ部門」の5ツ星を獲得。「アメリカン・アカデミー・オブ・ホスピタリティー・サイエンス」では6ツ星を10年維持。そんな安定感で、2005年の開業以来我が家も年に数回ずつは宿泊している。

20160512morora7

2014年には防災・BCP改良工事を完了し、ハード面も安心だ。ティノ・クワンらしいライティングが印象的な1階エントランスから、38階メインロビーに上がる。そこには大きなフラワーディスプレイ、フロント背後にはスカイツリーが美しくそびえる。そして「マンダリンオリエンタルホテル東京」は、この38階を中心に12のグルメがあり、レストランの総合的なレベルも高い。
フレンチファインダイニング「シグネチャー(SIGNATURE)」。イタリアン・オールデイダニング「ケシキ(KSHIKI)」、その一角に設けられた「ピッツァバー オン サーティーエイス(THE PIZZA BAR ON38TH)」、「オリエンタルラウンジ(Oriental Lounge)」内には「タパス モラキュラーバー(Tapas Molecular Bar)」もある。

20160512morora1

そう言えば話題の代々木上原「セララバアド(Celarabird)」の橋本宏一シェフも、独立前はここの料理長だった。我が家的にはディナーはホテル外に出かける事が多いため、翌日のランチ時はなるべくホテル内で食事をしたいと思っている。そう言った意味でこちらは重宝する。
と言う訳でこの日も、フロント横に位置する江戸前「鮨 そら」でランチを楽しむ事にした。入り口には山本洋司氏の毛書体ロゴが浮かび、1万個のスチール製パーツから出来た「ススキのパーテーション」が見える。内装デザインは37階のレストランやバー同様小坂竜氏。東京スカイツリーを含めた景色を楽しめるように「樹齢350年の尾州檜カウンター」が配置してある(8席)。

20160512morora2

美しい御影石の床に瓦素材の壁、金箔や盆栽、麹谷宏氏が手掛けた「ガラスの蹲踞」・・洗練された和モダンの空間が心地よい。職人さんのユニフォームは侍風、女性スタッフは空をイメージした着物風ドレスで、共にコシノジュンコ氏デザイン。席にセットされた「たとう紙」にはナプキン。
さてまずは喉を潤そう、運ばれたグラスシャンパーニュは「シャルル・エドシック ブリュット・レゼルヴ(Charles Heidsieck Brut Reserve)」。熟成させたリザーヴワイン40%に、ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエをブレンドしているため、ノンヴィンテージであっても品質の高さには定評がある。1851年に創立された英王室御用達のメゾン。

20160512morora2b

日本には長らく輸入されていなかったが昨年から取り扱いが増え、レストランでも目にする機会も増えた。我が家では「シャルル・エドシック ブラン・ド・ミレネール 1995」なども開けた。この「ブリュット・レゼルヴ」は柔らかな果実味と穏やかな酸味が調和しつつ、そこにリザーブワインが下支えするためふくよかさも感じられる。確かに「鮨 そら」の繊細で上品な寿司には合いそうだ。
ホテルらしく様々なコースを設定しているが、私達はまずは「お任せ」で10貫程を握ってもらい、その後色々と伺いながら追加していく事にする。板長の今泉祐史氏がまず握るのは、羅臼昆布で2時間半ほど締めたと言う「キス昆布締め」。白い器に美しく映える。続いて綺麗に包丁を入れた「アオリイカ」はツヤツヤで、ねっとりした食感と甘み。

20160512morora3b

切れ長で形良く握られた「コハダ」は、キリッとした酸味が余韻に響く。小さめのシャリは古代米酢と、酒粕から作る赤酢「ミツカンの山吹」(地域限定販売)を使っている為、赤みを帯びている。続く「トリガイ」は、歯ごたえの後に柔らかな旨味。「アサリ」は春らしい旨味と香り。
そして「赤貝」は口の中で磯の香りが流れ出す。お楽しみの「マグロ」、これは勝浦の一本釣り164キロのものだと言う。そして「雲丹軍艦」が登場する。板長がおもむろに紙袋から出した箱・・羽立水産の生うにだ。これは「すきやばし次郎」にも卸している事でも知られている妻の大好物。やっぱり「次郎」同様なかなかの迫力で、北海道産のウニの甘みにふんわり包まれる。

20160512morora4

妻は「オブジェみたいに美しいわね」とそのこんもり盛られた雲丹箱に引き込まれている(笑) ここからは板長にお勧めのネタを聞きながら、握りを追加して行く。こちらは日本酒も充実してる。女性酒師もいるので、色々とコメントを聞きながらチョイス出来るのが良い。運ばれた「檜カウンターの端切れで作ったグラスホルダー」の中から、日本橋発祥の江戸切子など好きなお猪口を選ぶ。
そして、錫の内側に金箔を貼った豪華な器に注がれるのは新潟・塩川酒造の「越」だ。美しい青いボトルに入ったそれは、燕市の農家田中氏の栽培した「亀の尾」を100%使った純米吟醸との事(日本酒度+7)。米の風味を柔らかに漂わせつつ、フルーティで仄かな甘み、ふっくらした旨味が穏やかにスーッと広がる。

20160512morora6

そこにさっとタイミング良くつまみが供される。ねっとりと溶けていくような「子持ちヤリイカ」だ。添えられた「葉ワサビ」との清々しいアクセント。その他にも、酢を入れず醤油にくぐらせただけの「新生姜」なども楽しいアクセント。お蔭で昼間と言うのも忘れてクイクイと日本酒が進む。
と言う訳で続けてお願いした握りは、鹿児島のはえ縄の「マグロの中落ち」。207キロの鮪を、先程の葉ワサビの出汁にサッとくぐらせて、風味を漂わせている。妻は「艶やかだわ~♪」と嬉しそうだ。更に大き目の「車海老」は甘酢オボロ漬けで頂く。香る「ハマグリ」は、ねっとりしたツメと融和して美味。

20160512morora5

そして和歌山の引き網「大トロ」は、脂の甘みがとろりと広がる。この日はこれで3種の鮪を楽しんだ事になる。妻は上機嫌に「これもお代わりしたい~」言う(笑) 追加をいくつかお願いして後は、とろけるような江戸前らしい「穴子」、そして甘くスイーツ的「玉」となる。締めの巻物は「キュウリと赤貝のヒモ」で、サッパリ爽やかに頂いた。
お茶などと運ばれた爪楊枝は、こちらではお馴染み日本で唯一の専門店「日本橋 さるや」の物。この日は季節の「桜」柄ピンクの袋だった。小さめなシャリは女性向き(大きさは希望で調節してくれる)。砂糖を使わず塩も控えめで、街場の江戸前店のように強い味わいではなく、タネを引き立てる繊細な味わいだ。年齢層や用途も幅広く、外国人にもお勧めできるだろう。

20160512morora6b

そんな上品なシャリに細かな仕事を施した握りを、丁寧なサービス・豊富なアルコールと共に堪能できた満足のランチであった。前夜にフレンチを食べる事の多い我が家のランチ鮨には、洗練されたホテルならではの雰囲気も含めて、いつもながら気分にぴったりであった。