今年は暖冬で秋が長かった、そこで今秋我が家が楽しんだワインの中でも、特に美味しかった古めのワインを整理してみよう。まずはクリスマスが似合うレストランと言う事でこちらから。芝公園「レストラン クレッセント(THE CRESCENT)」、風格ある赤レンガ造りの洋館だ。東京タワーを間近に臨む個室「ヴァイカウントルーム」には、アンテークのシャンデリアや棚、女性の肖像画などクラシカルな風情。
そんな中で「アンリ・ジロー アイ・グラン・クリュ ブラン・ド・ブラン 2002」をじっくり楽しんだ後は、本命の「アルマン・ルソー シャンベルタン(Armand Rousseau Chambertin Grand Cru) 1978年」を開ける。畑山正治ソムリエがパリから独自のルートで5本のみ直接仕入れたもの。前回訪問の際是非にとお願いしていた1本だ。

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御存じジュヴレ=シャンベルタン村にあるトップドメーヌ「アルマン・ルソー」。自然な抽出から滋味深く、品格ある味わいが我が家のお気に入りの造り手。所有畑は15ha超、その内8haはグラン・クリュ6つ。この「シャンベルタン」は4区画の2.55ha。平均樹齢40年以上で手摘み(除梗80割で全房2割)、リュット・レゾネ。
最近はなかなか手に入りにくいところに、しかも70年代「1978年」のブルゴーニュ、20世紀最高のビンテージの一つと言われているのでワクワクする。冷夏の為果実が熟するのは遅れた(開花は6月9日~7月6日)が、9月に天候が回復。連日10時間の日照に、成熟終わりに好ましい北風も吹いた。その結果「曽孫のためにカーヴに何本か残しておいてもよいビンテージ」という評価を得ている。

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このようにビンテージ的にはかなりの差があるので否が応にも期待が高まる。もちろん古酒の場合、その頃のドメーヌの調子も一つの情報になる。「アルマン・ルソーは1950・60年代に名声を博したが、70年代後半から80年代は原因不明のスランプに陥り、1985年から改善したと言われている。
グラスに注がれた「シャンベルタン 1978」は綺麗でクリア・・グラスの向こうが透き通るようなレンガ色だ。奥深い妖艶な香りが、ピュアながらグイッと迫ってくる。「完璧な状態です、Perfumeのようですね」と満面の笑みの畑山ソムリエ。挽いた胡椒・炭焼きコーヒーの様な熟した感じ。トリュフ・上質のなめし皮・・時間と共に更に開いてくるが全く落ちない。

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酸味も突出してなく、ある意味力強さと言うか骨格は残ったまま。その後は微かに梅のニュアンスに長い余韻になっていく。最後の最後までバランスは崩れず品格を保った大満足のワインであった。ちなみにその前月には「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」にて若い「アルマン・ルソー シャンベルタン 2011」を、
翌月は大阪「ユニッソン・デ・クール」にて「アルマン・ルソー シャンベルタン クロ・ド・ベーズ 2006」を開ける、ルソーついていた秋となった。続いては恵比寿の城、我が家お馴染みの「ガストロノミー ジョエル ロブション(Joël Robuchon)」で行われた、豪華「ロブション来日特別ガラディナー2015」にて。

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いつもの様にiPadのワインリストから赤ワインをボトルで選ぶ。白トリュフと言う事で、やはりボルドーの古い年代に目が行く。チョイスしたのは「シャトー・ラトゥール(Château Latour) 1966年」。ポイヤックに位置し1331年からの長い歴史を誇る。ラベルには14世紀中頃に建てられてた「サン・ランベールの塔」が描かれている。1993年にフランソワ・ピノー氏が所有権を獲得し、数年に渡る大規模改革を行った。
ここ「ジョエル・ロブション」で「ラトゥール」を開ける事も多い。近年開けた「1989年」「1988年」「1978年」「1986年」はどれも保存状態が良くとても満足した。更に秀逸なボルドービンテージ「1966年」なので否が応にも期待が高まる。しかもマイナスイオンが出ているロブション地下セラーで、20年近く管理されていた、旧タイユバン・ロブション時代からの貴重な1本。

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タイユバンの名物オーナー故ジャン=クロード・ヴリナ氏の「ラトゥール・コレクション」の残り数本と言う事だ。抜栓、丁寧にデカンタージュされていく。ネックは少し下がり気味だが全く問題のないコンディション。信国武洋ソムリエも「澱も綺麗なライン状になっていますね」とデキャンタしたボトルに目をやる。
1966年は暖冬から早く春が訪れたが、少雨冷夏になり8月の気温は上がりきらなかった。それでも9月から日照が増えて盛り返し、そのため10月初頭に理想的な果実での収穫となった。枯葉・腐葉土・湿った森・動物の皮・・飲み干した後に微かな旨味が酸味と共に口元に残り、そこからチャーミングな酸味が余韻を押し広げる。

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何とも美しい熟成感だが、まだどこか力強さも感じる。十分飲み頃に達しているが、まだ熟成していきそう。これの少し前に「1986年」を開けていたのだが、さすがに「1966年」が更に良かった。前述の「アルマン・ルソー シャンベルタン 1978」が今年のベスト1かと思っていたが、この「ラトゥール 1966」も並び立つ印象であった。「偉大なワインというものはなく、偉大な1本があるのみである」と言う格言を思い出す。
古酒はドメーヌ、ビンテージはもちろんのこと、どのように保存されて来たかもポイントだろう。「グラン・メゾンが大事に保存する古酒」の素晴らしさにはまってしまいそうだ。さて、クリスマスイルミネーションに沸く銀座からは、我が家お気に入り「レストラン エスキス」での1本。若林英司ソムリエお勧めの、ボルドー「シャトー・パルメ(Chateau Palmer) 1978年」蔵出し。

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若林ソムリエはそのボトルを妻の横に掲げて「ピッタリでしたね」と言う。妻のゴールドネックレスが、ちょうど黒いドレスに映えてまるで「パルメ」ラベルの様だったのだ。そして白ワインのグラス「ポール・ペルノ・エ・セ・フィス ピュリニー・モンラッシェ フォラティエール 1995」は、「パルメ78の品格に合わせて敢えて選びました」との事で、これもすこぶる良かった。
1814年イギリス人少将チャールズ・パルメが買い取ったメドック地区マルゴー村の「シャトー・パルメ」。英国王ジョージ4世の愛飲ワインでもあった。格付け第3級ながら時として1級に劣らない事は周知の事実。特に70年代は、マルゴー地区で最も優れていたシャトーと評価とされている。この「1978年」は、カベルネ・ソーヴィニョン53%、メルロー40%、カベルネ・フラン5%、プティ・ヴェルド2%。

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この年は春が低温で葡萄の成長が遅れ、夏も天候に恵まれず葡萄畑の状態が良くなかった。しかし一変して9月の天候がとても良く、10月も夏の様な温かさで葡萄完熟。10月半ばに無事収穫となった。若林ソムリエが丁寧に抜栓、デキャンタージュしていく。クリアに揺らめく美しく深い赤。香り豊かな果実の凝縮感、そして花・土・・綺麗に透き通った熟成で、何とも味わい深く品を感じる。
ゆっくり味わって2時間、まろやかさ、立ち上がる優しく華やかなブーケが印象に残る。羽の様な繊細さが料理にしっとりと寄り添ってくれた。その他にも最近飲んだ80年代で言うと、福岡「レストラン花の木」の個室モンロールーム(Room 1953)にて開けた「シャトー・ムートン・ロートシルト(Chateau Mouton Rothschild) 1985年」。

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ベルギーの画家ポール・デルヴォーが描く、ノスタルジックなラベルが印象的(妻の赤いドレスに合わせた)。樹齢45年以上、カベルネ・ソーヴィニョン77%、メルロ11%カベルネ・フラン10%、プティ・ヴェルド2%。枯葉のニュアンス、ムートンの獣っぽさは控え目。軽いアタックから優しい余韻が広がる。
同「1985年」は2007年と2013年にも飲んでいたが、過去のテイスティングノートを見る限り、緩やかに下っている感じかもしれない。「ボルドーの1985年はいつも優しく、柔らかい年という印象です」といつもながら的確なコメントの黒木昭博ソムリエ。なるほど穏やかな丸い感覚はこのヴィンテージらしさなのだろう。そしてつい先日師走の京都、遅い紅葉はまだ残っていた。落ち葉の絨毯も一興だ。

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町屋が並ぶ情緒ある富小路通にある、我が家お気に入りの京都フレンチ「レストラン モトイ(Restaurant MOTOI)」にて。昔は呉服屋だったという日本家屋を改装した京都ならではの風情あるレストランだ。こちらで開けたのが「フィリポナ レゼルヴ・ミレジメ・ブリュット・ロング・ヴィエイユスマン(Philipponnat Reserve Millesime Brut Long Vieillissement) 1982年」。
中村尚一郎ソムリエの勧めでチョイスしたがとても良かった。1522年にシャンパーニュ地方アイ村に根を下ろしたフィリポナ家。畑を購入したのは1935年と言われている。シャンパーニュ地方では珍しい単一畑の一つで、シャンパーニュの「ロマネ・コンティ」とも言われている。現在所有畑は12ha。我が家でも「クロ・デ・ゴワセ(5.5ha)」を開ける事もあるが、今回のはなかなか手に入らないビンテージ・シャンパーニュだ。

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澱抜きまでの期間を長くとる事が特徴的(このデゴルジュマンは2010年1月)。この「1982年」は収穫量が多かったらしく、グレートビンテージに匹敵する上品で優雅な味わいに仕上がっているとの事で期待する。ピノ・ノワール70%、シャルドネ30%、ドザージュ4.5g/l。美しい細工のシャンパングラス「ラリック&ジェームス・サックリング コラボレーション 100ポイント」に注がれると、細かやかな泡がふんわり立ち上がり美しく黄金色に煌めく。
華やかなラベルも手伝って、妻は「クリスマスにピッタリだわ♪」と嬉しそう。キャラメル・モカ・シロップ・・深く甘い芳ばしい味わいに驚く。最後はデザートに合わせて、田崎真也ソムリエデザインのチューリップ型シャンパングラスで楽しんだ。そんな我が家の「2015年実りの秋」を終え、いよいよ華やぐフェスティブシーズンの到来。今週末からはクリスマス一色に我が家のセラー室の出入りも賑やかだ。どれから開けていこうか・・