今年も恵比寿ガーデンプレイスでは「Baccarat ETERNAL LIGHTS -歓びのかたち-」と題して、去年お披露目された「バカラ創設250周年記念シャンデリア」が登場した。1999年からスタートしたここでのバカラシャンデリアの点灯も、今や東京を代表するクリスマス・イルミネーションの1つとなっている。
いつもならこの時期に合わせて、ジョエル・ロブション氏が恵比寿のシャトーレストランに来日し、2階「ガストロノミー ジョエル・ロブション(Joel Robuchon)」で「一夜限りの特別ガラディナー 白トリュフ祭り」が開催される。昨年は「開業20周年」を兼ねて盛大に催された。毎年2月には「特別ガラディナー 黒トリュフ祭り」を、更に今夏は城の1階「ラ ターブル ドゥ ジョエル・ロブション」では初となる、ロブション来日ガラディナー「フード&ライフ」も開催された。

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実は今年の「特別ガラディナー 白トリュフ祭り(Extravagance d’automne a la Truffe Blanche)」は少し早目の開催。LVMHグループ「ヴーヴ・クリコ(Veuve Clicquot Ponsardin)」の最高醸造責任者ドミニク・ドゥマルヴィル氏来日と合わせたからだろう。六本木ヒルズでは期間限定「ジョエル・ロブション×ヴーヴ・クリコ ポップアップラウンジ」がオープンし、2人揃ってのメディア露出やPRイベント「プロフェッショナルランチ」「プレスディナー」も行われた。
全世界のジョエル・ロブションのレストランで「ヴーヴ・クリコ イエローラベル ブリュット(Veuve Clicquot Ponsardin Yellow Label Brut)」がハウスシャンパンに採用されてからもう3年。当時は我々客だけでなく、信国武洋シェフ・ソムリエも含めスタッフも一様に驚いたものだった。安価なシャンパーニュにはあまり興味がない」と明言するロブション氏も「ヴーヴ・クリコ イエローラベル」は例外と言う。

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「私が惹かれるのはあくなき品質の追求。マダム・クリコが掲げていた『品質はただひとつ、最高級だけ』と言うモットーを大切に守っている」からだそう。「特別ガラディナー 白トリュフ祭 2015」の夜、黄金に輝くダイニングに入ると既に賑やか、白トリュフの妖艶な香りに満ちている。奥のテーブルに着くと、山地誠総支配人や渡辺敏伸マネージャー他いつものスタッフ達と挨拶を交わす。
そしていつもの様に「ヴーヴ・クリコ イエローラベル マグナム(Veuve Clicquot Ponsardin Yellow Label Brut Magnum)」が振る舞われる。残念ながらこの日の朝、既にドゥマルヴィル氏は日本を発ったそうだ。せっかくなので私達は、イエローラベルではなくヴーヴ・クリコのプレステージ・キュヴェ「ヴーヴ・クリコ ラ・グランダム(Veuve Clicquot Ponsardin La Grande Dame Brut) 2004年」で乾杯しよう。

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「偉大な女性」と言う名の通りマダム・クリコに捧げられたもので、19世紀初頭にマダム・クリコが買い付けた8特級畑の葡萄のみ使用している。今宵我が家のワインを担当するのは高丸智天ソムリエ。学生時代を福岡で過ごした彼は、2005年「第5回ロワールワインソムリエコンクール」のファイナリストを経て、もう長年信国ソムリエの下で「ロブションのワイン」を支えている。
ソムリエのフィリップ・ジャムスと開発した、ヴーヴ・クリコ専用グラスに注がれた「ラ・グランダム」は美しいゴールド。洋ナシのコンポート・キノコ・白花・・酸味が中心でフレッシュだがエレガントな味わい。さてまずは一品目「軽やかなコンテチーズのムースを詰めたスフレ」が運ばれる。パスタ生地を薄く軽くあげて、中には軽い味わいのコンテチーズのムース。

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外側には白トリュフを纏って何とも香しい。そこへバターとパン3種も運ばれる。さぁ原田聡メートル・ドテルが大きな白トリュフの塊を持って登場。妻が「今日のトリュフボーイは原田さんだね!」と言っていたら水野敬介シェフ・ド・ランも白手袋で登場(笑)この日の料理は白トリュフの為に構成された、この日限りの特別メニューである。
2皿目は「とうもろこし ブルーテにしてジュレ、白トリュフをまとったウズラ卵を浮かべて」が運ばれた。三層構造で白トリュフが敷かれ、更に白トリュフが削られると言う贅沢さ。テープルに一気に広がる白トリュフの得も言われぬ芳醇濃厚な香り。ちなみにこの日の為に白トリュフ300万円分を仕入れたと言う。

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ブルーテの中には、白トリュフの小さなカットまで入り、何とも贅沢な食感の変化である。続く料理は「白イカ タリアテッレ仕立てに切り、香り高いアロマートオイルでミ・キュイ、海の栗(ウニ)と白トリュフを散らして」。40度で20分、ゆっくりとと火を入れたイカ・・それはまるでパスタ?!唐辛子なども入ってペペロンチーノ風に仕上げてある。
とそこへまたザクザクと白トリュフ塊が削られていく。イカやウニの磯の香とまろやかさ・・と言うより、もう圧倒的に白トリュフを食べるような贅沢な一品。ここで我慢できずに、高丸ソムリエに白ワイングラスを所望する。出してくれたのはブルゴーニュの白最高峰「ボノー・デュ・マルトレイ コルトン・シャルルマーニュ(Bonneau du Martray Corton-Charlemagne Grand Cru) 1997年」。

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我が家もお気に入りドメーヌの一つ「ボノー・デュ・マルトレイ」は、所有する特級畑11haのうち9haがこの「コルトン・シャルルマーニュ」だ。平均樹齢は70~80年で1株に6房以下、馬と手作業による収穫で180樽以上は造らないと言う。グラスに揺れる濃く美しい黄金色。良い加減で熟成感がチラチラと顔を出し、深い香りも艶やか。
深い果実味・マーマレード・・・美しく穏やかなミネラルに乗って旨味が広がる。当然ながら「これは白トリュフにはピッタリ♪」と妻。次に運ばれて来たのはお馴染みレイノーとアンヌ=ソフィ・ピックシェフのコラボプレート「ルナ」、蓋には赤や黄色に色付いた落ち葉を飾っている。毎度アラン・ヴェルゼロリシェフがプレートにデザインを施しているが、料理に加えアートな飾りも楽しみの1つだ。

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蓋を取るとふんわり立ち上がる秋の香り・・「セップ茸 秋の香りいっぱいのカプチーノ仕立てに、様々な茸のラヴィオリと共に」の登場だ。セップ含めてキノコのデュクセルをラヴィオリが包み込んでいる。そこに原田メートル・ドテルが、またたっぷりの白トリュフを削りかけてくれる(妻は拍手)。「さすがフレンチの王道」といった味わいにすこぶる満足する。
さぁいよいよ赤ワインを選ぼう。いつものようにじっくりとiPadのワインリストを眺め、高丸ソムリエと話し合いながら絞っていく(地下セラーには25000本)。白トリュフと言う事で、やはりボルドーの古い年代に目が行く。高丸智天ソムリエのアドバイスも参考に色々考えるも、結局チョイスしたのはボルドー5大シャトーの1つ「シャトー・ラトゥール(Château Latour) 1966年」。

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ボルドーの北西メドック地区ポイヤックに位置し、パリ万博前1855年に格付け第1級を獲得。ラベルには14世紀中頃に建てられてた要塞「サン・ランベールの塔」が描かれている。1331年からの長い歴史を経て、1993年にフランソワ・ピノー氏(ケリング)が所有権を獲得。数年に渡る大規模改革を行い現在に至る。妻のお気に入りとしてここ「ジョエル・ロブション」でも「シャトー・ラトゥール」を開ける事も多い。
近年開けた「1989年」「1988年」「1978年」「1986年」はどれも保存状態が良くとても満足した。更に今回は秀逸なボルドービンテージ「1966年」なので、否が応にも期待が高まる。しかもマイナスイオンが出ている地下セラーで20年近く管理されていた、旧タイユバン・ロブション時代からの貴重な1本。

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タイユバンの名物オーナー故ジャン=クロード・ヴリナ氏の「ラトゥール・コレクション」の残り数本と言う事だ。そんな今宵の「シャトー・ラトゥール 1966」、高丸ソムリエが緊張の面持ちで抜栓、丁寧にデカンタージュしていく。ネックは少し下がり気味だが全く問題のないコンディション。澱もボトルサイドに綺麗なライン状にへばりついている。
さすがに長年ロブションのワインセラーで、静かにお披露目を待っていただけある。1966年は暖冬から早く春が訪れたが、少雨冷夏になり8月の気温は上がりきらなかった。それでも9月から日照が増えて盛り返し、そのため10月初頭に理想的な果実での収穫となった。枯葉・腐葉土・湿った森・動物の皮・・

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飲み干した後に微かな旨味が酸味と共に口元に残り、そこからチャーミングな酸味が余韻を押し広げる。何とも美しい熟成感だが、まだどこか力強さも感じる。十分飲み頃に達しているが、まだ熟成していきそう。ラトゥールフリークの妻も満足そうに機嫌よくグラスが進んでいる。今回のガラディナーの前に自宅で「1986年」を開けていたのだが、さすがに「1966年」が更に良かった。
先日「レストラン クレッセント」で飲んだ「アルマン・ルソー シャンベルタン 1978」が、素晴らしいコンディションで今年のベスト1かと思っていたが、この「ラトゥール 1966」も並び立つ印象である。「偉大なワインというものはなく、偉大な1本があるのみである」と言う格言を思い出す。古酒はドメーヌ、ビンテージはもちろんのこと、どのように保存されてきたかもポイントだろう。

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こうなってしまうと「グラン・メゾンが大事に保存する古酒」の素晴らしさにはまってしまいそうだ。そこに運ばれて来たのは5つ目のプレート「活車海老 殻と共に、ブール・サレでポワレし、手打ちヌイユとブラック・ペッパーを効かせたジュでエスコート」。これには先程とはまた別の、岩のような大きい白トリュフが登場して削られる。
プレートに描かれた日の丸風の赤が車海老を引き立ている。甲殻類のジュの煮詰めたソースが、これまたフレンチらしいリッチな味わいと香り。プリッとした車海老も甘さと旨味が際立つ美味しさだった。続いてメインの「奥州いわいどり 胸肉をしっとり加熱し、なめらかなソースをナッペし、松茸のグリエとハーブオイル、ジュを添えて」がやって来た。

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これもまた別の白トリュフ塊が持ってこられ、いわゆる芯の部分をザクザク削ってくれる。「白トリュフも大きさはもちろんですが、部位によって香りもかなり違います」と原田メートル・ドテル。確かに拳より大きな塊の中心部、色づく程の芯の部分は甘い香りが際立ち明らかに濃い。蔓延する白トリュフ香に妻はうっとりしながら嬉しそうに眺めている。
いつもながらジョエル・ロブション主催の「白トリュフガラ」は、料理の完成度と白トリュフの印象が別格である。鶏胸肉も予想以上にふんわり柔らかく、旨味も溢れて美味。松茸の香ばしさに加えて白トリュフの濃厚さが立体的・・思わずワインも進んでしまう。「これかなり美味しかったね~」と妻も満足そう。更にやってきたのは「クリーミーなリゾット アルオンダ アルポワ産ヴァンジョーヌ風味、金箔をあしらって」。

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中心に心地良い仄かな硬さを残した柔らかめのリゾット。添えられたスープは、スパイスや生姜を効かせてあり、好みでスダチを絞って頂く。リゾットには、渡辺敏伸マネージャーがまた別の白トリュフを持ってきてザクザク削りかける。ねっとりしたリゾットの食感と微かなスパイシーさ、もちろんそこに蓋をしてくる白トリュフの香り。豪華白トリュフ尽くし料理の締めに相応しい一品だった。
満足感に浸りながら一息付く頃チーズワゴンがやって来た。いつもの様に20種類の中から妻定番のシェーブルや、季節のモンドールなどをチョイスする。渡辺マネージャーと「体型維持?」について、通り掛かるサービス陣を巻き込みながら話が盛り上がる。そこにやってきたアラン・ヴェルゼロリシェフまで参加し、皆で大いに笑い楽しい時間を過ごす。

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そろそろデザートの「巨峰 グラニテやジュレにしてフロマージュ・ブランとともに」が出てくるとの事で、高丸ソムリエが出してくれた食後酒は、我が家お気に入り「シャトー・ディケム(Château d’Yquem) 1998年」。ソーテルヌ村中心部、12世紀からの歴史を誇る「シャトー・ディケム」は1999年からLVMHグループが所有している。
前所有者アレクサンドル・ド・リュル・ サリュース伯爵の2004年引退後は、「シャトー・シュヴァル・ブラン(Château Cheval Blanc)」ピエルール・リュルトン総支配人が「シャトー・ディケム」を兼務。畑は103haで平均樹齢30年、セミヨン80%、ソーヴィニョン・ブラン20%。今までもこちらで「2003年」「1995年」「2002年」を飲んでいる。

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この「1998年」はそんな歴史的変化の中、100%新樽で42ヶ月間熟成され(20%が蒸発)、リリースされる5年後まで試飲はなかったと言う。ゴージャスな黄金色からトロリとした蜂蜜・杏・芳しいスパイスが流れ出す。凝縮した個体のような液体が、エレガントに喉を通り過ぎていく。何と言ってもやはり甘口白ワイン最高峰だろう。
続いて更に提供されるのは「ワレ ヴィンテージ ポート(Warre’s 1670 Vintage port) 1985年」、果実の濃く華やかな香りが特徴的だ。「ディケム」では合わないところを見越してチョイスされたそうだが、妻はやはりすぐに「ディケム」に戻っていた(笑)最後に登場したデザートは「フォレ・ノワール 実りの秋で見つけたシャンピニオン」。

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赤いキノコが可愛いと喜ぶ妻。これに赤いソースが流し込まれて完成する。さくらんぼとチョコレートの絶妙な味わいに、キルシュ酒の風味が効いている。確かにこれにはビンテージ・ポートが合うだろう。ゆっくりと味わってきた「シャトー・ラトゥール 1966」。3時間も経つと、動物香の背後にハーブのニュアンスも纏った美しい土っぽさも感じる。
今までにないラトゥールのエレガントな熟成に、妻も「またこんな素晴らしい古酒に当たると良いなぁ」と最後まで名残惜しそう。その後は青々と新鮮な「生ハーブワゴン」が登場し、お勧めのアロマで丁寧に入れられた癒しのハーブティーを味わう。更にやって来たキラキラ「デザートワゴン」、この日はハロウィン仕様でオレンジのタワーとチョコレートのコウモリが賑やかだ。

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当然ながらかなりの満腹感なので、お勧めのショコラなどを少し頂いた。そこへお待ちかねのロブションシェフがテーブルにやってくる。その上優しいアランシェフが忙しいところ再登場で妻は大喜びだ。「おらら~良く来てくれたね~」といつもの様にロブションシェフと頬を付けて挨拶する妻、いつもスマートに誘導通訳してくれるマネージャーの安田氏とも6月以来の再会を喜ぶ。
ボルドーの新レストランや今後のニューヨークの計画などの話を伺ったりわいわい盛り上がる。世界中を飛び回っていつまでもエネルギッシュな巨匠ロブションシェフ、来年もハードスケジュールの様だった。最後は、お馴染みパパブブレの「メルシーキャンディー」が運ばれる、今宵は緑が鮮やか。

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気がつくと既に4時間を超えている、体力のない妻はさすがに眠そうだ。白トリュフの妖艶さ、各料理の完成度、「ラトゥール」の状態に、スタッフ達のホスピタリティー・・今回も充実したガラディナーであった。帰りは、多忙で余り話せなかった妻お気に入りの村林篤メートル・ド・テルも駆けつけ、皆で車まで見送ってくれる。
秋深まる中、ライトアップされたシャトーレストランを見上げ、名残惜しい気持ちで手を振り恵比寿を後にした。ホリデーシーズンはさぞ賑やかになるだろう。