秋らしい風が吹くようになると、やはりフレンチが食べたくなる。そこで向かったのはJR博多駅近くの「ホテル日航福岡」、スモールラグジュアリーな地元密着型ホテルよ。その2階にあるメインダイングのフレンチレストラン「レ・セレブリテ(Les Celebrites)」。昨年ホテル開業25周年を迎えリニューアルされ、更に居心地の良さが増したわ。
ホテル日航「レ・セレブリテ」ブランドと言えば、セーヌ河畔の15区にある旧「ホテル・ニッコー・ド・パリ(Hotel Nikko de Paris)」。我が家お馴染み、愛するフレンチの巨匠ジョエル・ロブション氏が1978年から1981年までディレクターとして関わり、無星から2ツ星まで引き上げた事でも知られている。福岡の「レ・セレブリテ」は明るく豪華リゾート風のダイニングでありながら、上品で落ち着いた大人の空間。

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そんな中でシャンパーニュ地方での修行歴があり、「ボキューズ・ドール2015」日本第3位の森田安彦料理長が作るモダンフレンチを味わえる。福岡では我が家のお気に入りのフレンチレストランの1つよ。ホテルに車を付けロビーに入ると、休み明けの平日夜と言う事で人影もまばら。ベージュの大理石が艶やかで美しい中、中央階段で「レ・セレブリテ」に上がって行くとスタッフが出迎えてくれる。
実は実は、この日のゲストは私達だけ!つまり56席と個室(8名)、このホテルならではの上質な空間だけでなく、森田シェフ率いる厨房、ソムリエやサービススタッフ全てを独り占め出来ちゃう夜ということ?!ほんとほんと?!何て素晴らしいサプライズ♪ ガラパーティーなどイベント事によく参加するので誤解されがちだけど、こう見えて我が家は人混みが苦手。人との交流も敢えて望まないタチなので(笑)

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地元レストランでは空いている平日か、個室を使わせて貰う事が多いの。例えば私の誕生日には、レストランの定休日に特別に開けてもらい(もちろん特別料金をお支払いして)、夫婦二人で貸切を楽しませて頂いた事もある。思い返せば昔、静かさが気に入っていた某レストランで、「ゲストが多い方がお好きかと思いまして・・」と常連に声を掛けわざわざ席を埋めた所があった。
ご厚意とは言えかなりガッカリした記憶があるわ~・・話がずれてしまった。とにかくこの夜はホテルのメインダイニングを悠々と使い、スタッフとも懇談しながらディナーを頂ける貴重な機会になった。貸切なんて幸せすぎるわ~♪ せっかくなのでいつもとは違う席に座りながら「レ・セレブリテ」の全てを楽しませて頂くとするよ♪

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そんな中、森田シェフを始め新しくなったサービススタッフ達と挨拶を交わし、妻が選んだテーブルに着く。まず乾杯のシャンパーニュを開ける。こちらではすっかりお馴染みの「クリュッグ グラン・キュヴェ(KRUG Grand Cuvee Brut)」ハーフボトル。合わせてアミューズブーシュ「食前の楽しみ」も出される。サクサクのガレットに乗ったこんもり「オシェトラ・キャビア」だ。
下にはライム風味のクリームを敷いている。ヴェルヴェーヌのヴィネグレットソースや小さな青林檎のジュレも、「クリュッグ」の柑橘系のニュアンスにピッタリ合う。この日のメニュー表には「Menu Specialite pour Mme.&M. ○○」と書かれている、これは楽しみだ。まずテーブルに運ばれて来たのは、活きのいい大きな伊勢海老。前菜一皿目はこれを使った「長崎産活き伊勢海老と茸のサラダ仕立て 胡麻が香るヴィネグレットで」だ。

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妻は「あ~殺生なんだよね~・・」と矛盾した落ち込みを見せる。暫くしてやってきた美しいプレート、テーブルで大きな「オーストラリア産黒トリュフ」がふんだんに削られて完成する。胡桃のヴィネグレットでソテーされた、プリプリの長崎産伊勢海老。その風味と塩気が野菜の苦味も引き立てる。そして口の中でキノコの風味が続き、最後に黒トリュフがふんわりと香り立つ。
シンプルながら滋味深い温前菜で、身も心も温まっていくようだ。ここで今宵の赤ワインをリストから選んで行こう。ソムリエと話しながらチョイスしたのは「コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエ シャンボール=ミュジニー プルミエ・クリュ(Comte George de Vogue Chambolle-Musigny 1er Cru) 1999年」。シャンボール=ミュジニー村1450年からの旧家「コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエ」は、グラン・クリュ「ミュジニー」70%を所有する最大ドメーヌだ。

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思い返せばこちらでは「シャンボール=ミュジニー 2000」「シャンボール=ミュジニー 1997」「ボンヌ・マール 1999」を以前もチョイスしている。繊細な上品さと力強さのバランスが良い、森田シェフの料理には合わせやすいのかもしれない。プルミエ・クリュは特級ミュジニーから選別されたワインも含まれているが、多量にアッサンブラージュされたこのキュヴェは、並大抵のグラン・クリュを凌ぐ。
今回の「ヴォギュエ シャンボール=ミュジニー」は、半分薔薇のドライフラワー、もう半分は凝縮した赤い果実の果実感が入り混じる。奥から野性の動物香も微かに顔を覗かせる。アタックから中盤に掛けては滑らか。その特徴的な硬いミネラルも優しく解けつつある。余韻には旨みとスパイシーさが広がる。時間と共にグラスの縁からハーブのニュアンスも流れ出す。2時間経つ頃にはより華やかさが現れ、きめ細やかでしとやかな飲み心地になった。

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ヴォギュエ家のミュジニーの選別の厳しさを伺い知る一本であった。続く前菜は「ヴァンデ産鴨のフォアグラと無花果のキャラメリゼ バニュルス風味のジュと共に」。テーブルでソースが掛けられて仕上がる。トロリと蕩けるような分厚いフォワグラのソテー。上にはピスタチオやアーモンドなどのナッツも振っていて、香ばしく良い香りだ。キャラメリゼしたイチジクの奥深い甘さ、
煮詰めたソースや根セロリのピューレとともに楽しむ。現代的でいてシンプルなおいしさがストレートに伝わって来る。そこへ次に出てきたのは「久保田農園バターナッツのエスプーマ なめらかなアマレットのグラスをアクセントに」。瓢箪型のバターナッツという品種のカボチャを、シンプルにエスプーマにしたもの。甘くて艶やかな黄色がハロウィンの季節にぴったりだ。フランス産白トリュフも香る。

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クランブルの食感とアマレットのアイスがバランスを取り、そこにハーブやオキザリスが絡んで、見事にフレンチに昇華する一皿。続いて「しっとりと火を入れた玄界産[E:#x29E8A]のコンフィ バジルが香るエマルジョンソースで」。博多でこの季節の高級魚「アラ(クエ)」は外せないだろう。大相撲九州場所が始まると、相撲部屋関係者が大物の「アラ」をこぞって買い求めるため、アラの高値に拍車がかかる。
美しい断面を見せるアラは、キチッとギリギリの火入れで、上質の旨味を存分に引き出している。テーブルで注がれる鮮やかなグリーンの「アサリとバジルのエマルジョンソース」も何とも良い塩梅だ。タッブナードや「キャビア・ド・オーベルジーヌ」も添えられる。青っぽい爽やかさが軽さを演出しつつも、塩気と旨みがフレンチらしい黄金律で美味しく頂けた。一息付いて「大分県カボスのグラニテ」。/span>

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柑橘系の酸味と微かなオリーブオイルのニュアンスで、サッパリとした口直し。さぁいよいよメインの<「南小国産ジャージー種 乳飲み仔牛のロースト 香り高い網笠茸のソースで」がやって来る。熊本・阿蘇の南小国、ジャージーミルクのみで飼育した仔牛と言う。肉厚ジューシーで、グラデーションの美しいピンク色が食欲をそそる。噛むごとに溶けゆくような滋味深い肉質だ。
ジロールにモリーユ茸、そして牛蒡のアクセントも満足度を高める。刻んだモリーユを使ったペリグーソースの優しい甘さも良かった。妻も「このお肉なんなの~?!火入れも絶妙♪」と大層気に入った様子。すっかり満足してデザートに向かう前、ここで改めてシャンパンをもう1本開けるとしよう。サービス陣初対面、そしてせっかくの貸切状態なのだからスタッフ皆で乾杯だ。選んだのは4月に発売されたばかりの「ドン・ペリニヨン(Dom Pérignon Vintage) 2005年」。

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私達には食後酒として、彼らにとっては「新生レ・セレブリテの門出」と言ったところか。御存じLVMHグループのモエ・エ・シャンドン社は、シャンパーニュ最大の畑所有者(1100ha超)。そんな中でも「ドン・ペリニヨン」は最優先の状態で造られているのだから素晴らしい。シャルドネは「シュイィ」「クラマン」「アヴィーズ」「ル・メニル・シュール・オジェ」、
ピノ・ノワールは「アイ」「ブジー」「ヴェルズネイ」「マイィ」「オーヴィレール」といった具合だ。この「2005年」はシャルドネ60%、ピノ・ノワール40%。9月の雨量が多かった為14日にシャルドネを、17日にピノ・ノワールの収穫を開始。結果生産量が例年の半分近くになったが、品質は優れているとの事。我が家では日常乾杯の「ドンペリ」、妻の好物とあって消費量が多くセラーには欠かせないが、

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こうやって新ビンテージを皆で乾杯するのもいつもと違った美味しさだ。ここで「横溝矢倉園シャインマスカットのヴァシュラン 爽やかなライムのエスプーマと共に」が運ばれた。当然ながらドンペリとぴったりで妻も大喜び。福岡・田主丸のシャインマスカットの、実だけではなく皮の美味しい厚みも印象に残る。マスカットとミント風味の2種類のアイスクリームを、
ライム風味のエスプーマと共に、実に爽やかに頂いた。更に運ばれてきたのは「デザートワゴン」(妻は拍手)。リニューアル時に取り入れられたとの事。「ショコラケーキ」「フルーツタルト」「パイナップル入りのチーズケーキ」「マンゴー・カシスのムース」など。私達だけの為に、これだけ品数を揃えてくれてた事に感謝しながら、それぞれを少しずつ頂いた。

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メンバーの入れ替えによって更なる活性化を目指すホテル日航福岡「レ・セレブリテ」。今の時期は、5万円からと価格を上げて挑戦する「食のダイヤモンド 白トリュフ」コースや贅極まる美食コース「グルマン」22000円など、森田シェフの料理を思う存分楽しめる企画を試行錯誤しているよう。今後も地元福岡人に愛されるホテル日航福岡らしい、上品な大人のフレンチレストランとして、
新しい風を吹かせながらもこれまで通り謙虚に、そして伝統を守りながら頑張って欲しいものだ。ホテルのメインダイングを贅沢に独り占めさせて貰った幸福感と、未来に夢を託す様な清々しい気持ちで日航福岡を後にした。実りの秋から冬に向かうこれから、ここ博多駅界隈は美しくライトアップされ沢山の人達で賑わうだろう。

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