行楽の秋、快晴で過ごし易かったシルバーウィーク。アジアの玄関口博多は、外国人観光客に加え、九州中から集まる旅行者で賑わい、またいつもとは違う喧噪になっていた。さてもう先月の事になるが、博多を代表するイタリアン「リストランテ サーラカリーナ 福岡(Sala Carina)」での話をしよう。
浄水通りから一本入った御所ヶ谷の住宅街、坂道沿いに静かに佇む戸建てレストランだ。外壁には緑が覆い、木の温かみある内装・・この美しい建物は1フロアーのみバリアフリー、エコ環境を得意とする白川直行氏の設計で福岡市都市景観賞も受賞している。地中に潜ませたようなダイニングは、蔓日々草・アンティークローゼ・キソケイ・パンジー・セージ・・さまざまな植物に囲まれた様な癒しの空間だ。

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中に入ってエントランスには、タイル貼りのピザ釜が鎮座しバーカウンターもある。緩やかに上る廊下を進むと緑に包まれたような円形ダイニングが広がり、オープンキッチンは明るく今井正三シェフほかスタッフが動く様が良く見える。奥にはシェフズテーブル的個室もある。前回訪問時に次回はパスタ好きな妻の為に「バスタ尽くしコースはいかがですか?」と勧めて貰っていたので、今回それをお願いし楽しみに伺った。
いつもの席に座ってまずは乾杯しよう。今宵も原田勲マネージャー(ソムリエ)のお勧め数本の中から、選んだのは「アンリオ・キュヴェ・デ・アンシャンテルール(Henriot Cuvee Des Enchanteleurs) 1998年」。ミニ・ピッツアも運ばれた。200年以上の歴史を誇る「アンリオ」は我が家お馴染みシャンパーニュ・メゾンの一つ。家族経営によるエレガントなワインには定評がある。

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そのプレステージシャンパンが「アンシャンテルール」だ。シャルドネ約50%、ピノ・ノワール50%。グラスに注がれると、まだ明るい店内に美しい薄いゴールドが煌めく。泡は溶け込み、青リンゴや白桃、仄かな蜜、微かなシェリー・・それぞれの要素が穏やかながら確かな存在感を示してくる。旨味と美しい酸味のバランス取れた、上品なミネラルに覆われた味わいは、まだまだ暑かった晩夏にぴったりだった。
さぁベテラン今井正三シェフによる特別メニュー「パスタコース」がスタートする。プレアンティパスタは「桃とフルーツトマトの冷製カッペリーニ」、こちらの夏の定番人気メニューだ。薄く切られた山梨産桃の清廉な甘さが、冷たいカッペリーニと調和する。まさに甘くフルーティ、「アンシャンテルール」に良く合う。続いて「前菜盛り合わせ」は3種類。

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トマトの爽やかさが嬉しい「北海道数種トマトのテリーヌとモッツァレラブッファラ」、風味と食感も楽しい「西米良サーモンのカルパッチョ マスの卵添え」、そして滑らかな口当たりの「バンデ産ウズラのパテ 梨とパンデピスとともに」だ。いつもの様にそれぞれが完成度の高い美味しさ。特にウズラのパテはクリーミーな口当たりと、梨やパンデピスの風味が「アンシャンテルール」に上手く寄り添ってくれた。
続いてこの時期らしい鮎を使った一皿「鮎のグリルと焼きリゾット クレソンのサラダとアサリのスープ 鮎魚醤の泡で」が登場し、更に気分が盛り上がる。テーブルでクリアなアサリのスープが注がれて完成だ。芳ばしくグリルされた鮎の身はもちろん、下に敷かれた焼きリゾットが何とも良い。アサリや鮎の身がタッブリと詰まっている。タイナミックに添えられたクレソンの、サッパリした苦味がまた余韻を引き締めてくれる。

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今井シェフらしい、ピタリとはまった塩梅の美味しさだった。さて赤ワインに行く前に、原田支配人に白ワインをグラスでお願いする。出てきたのは「クイントデチモ ジャッロ・ダルレス グレコ・ディ・トゥーフォ(Quintodecimo Giallo d’Arles D.O.C.G. Greco di Tufo) 2013年」。南イタリア・カンパーニャ州に、ルイジ・モイオ(Luigi Moio)氏が2001年設立した「クイントデーチモ」。
ブルゴーニュやボルドーで栽培・醸造を学んだ彼は、カンパーニャ州トップ生産者達のコンサルティングやナポリ大学醸造学教授も務めている。この「ジャッロ・ダルレス」はグレコ100%、バリック&ステンレスタンクで10ヶ月熟成。レモンの皮・アプリコット・バニラ・・ある程度の厚みはあるも、爽やかな柑橘系と引き締まったミネラル感が季節にぴったり。余韻も長い。

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「イタリアのリキュールって感じね♪」と妻も美味しそうに飲み干す。いよいよここからパスタが3種類出てくる。まずは「唐津ウニのフェデリーニ ハーブオイルソース」、妻の大好物だ。ハーブオイルのオイリーさに、フェデリーニの滑らかさが良い感じで絡み合う。そこに赤ウニの甘苦さが追いかけてくる。
2皿目の「旬のキノコとサマートリュフのタヤリン」は、ジロール・プルロット・マッシュルームなど、茸の風味に溢れている。そこに目の前でふんだんに削り落とされた、サマートリュフの香りが蓋をする。それとなく加えた鯛の身の、ふっくらしたピュアさにシェフのセンスを感じる。最後3皿目は「リコッタのとろけるニョッキとトルテッリーニ、ハンガリー乳飲み仔羊のラヴィオリをゴルゴンゾーラソースで」。

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各チーズの旨味が二重三重に食べ手に迫ってくる。しかし今井シェフらしく一線を越えず、繊細な美味しさだ。妻は「これは好みだウマイ~♪赤ワインが欲しいでしょ?!」と言う事で、予め原田支配人が勧めてくれていた「サン・ジュースト・ア・レンテンナーノ ペルカルロ(San Giusto a Rentennano Percarlo Toscana IGT) 1999年」を開けて、ゆっくり楽しんでいこう。
キャンティ・クラシコ地区のトップ生産者「サン・ジュースト・レンテナーノ」、名はイタリア西部の古国エトルリアが起源。中世時代シトー派修道院だった現醸造所は、1204年に記録が残る歴史的土地にある。総面積160haのうち葡萄畑は30.5ha。凝灰岩45%・砂質65%、アルコール度数高めになるのはそのためだ。現在はキャンティの祖リカーソリ家の分家であるマルティーニ・ディ・チガーラ家の、ルカとフランチェスコ兄弟が仕切っている。

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「ペルカルロ」はサンジョベーゼ100%、サン・ジューストの畑で最良の区画6クリュから、更に厳選した最上サンジョヴェーゼを使用。1本あたりの収穫は1.2kg~1.4kg、房が小さいので小粒なだけ凝縮感が出る。濃いルビー色、干し葡萄・プラム・・エレガントでふくよか。加えてイタリアワイン独特の動物の赤身肉、トマトの皮、タンニンは毛目細やかで美しい。
肉厚でふっくらしたイタリアらしい美味しさに「太陽の香りがする、温かくセクシーな味ね」と妻もとても満足そうだ。リコッタチーズの濃厚さにもぴったり。実は昨年もこちらで「ペルカルロ 1998」を開けて良かったが、この夜のは更に「サンジョヴェーゼ最良」と言われる理由がわかった1本だった。口直しの「ヴェルヴェーヌのグラニテ」で一息付いたらメインだ。

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宮崎尾崎牛イチボ肉、岩手短角牛肉、天草梅肉ポークロース、ビュルゴーシャラン鴨などの中から、「ニュージーランド産ワカヌイラム」をチョイスする。何とも肉厚な仔羊が登場して妻が声をあげる(笑)付け合わせはグリルしたゴーヤや茄子。きめ細やかな肉質を最後まで楽しめた。満腹になった後のデザートは、暖かいほうじ茶を注いで頂く「ほうじ茶のジェラート」、
その風味も穏やかにコースを締めくくった。カロリーを気にして挑んだ「パスタコース」であったが、さすが考えられたもので量も適度に楽しかった。もっと量を増やすことも出来るそうだが、我が家的には十分。ベテランらしい落ち着いた確かな美味しさの料理に、いつもながら気分にぴったりの美味なるワイン。今夏を締めるに相応しい満足の博多イタリアン・ディナーであった。

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