春の気配も感じる季節ではあるが、まだ夜はかなり冷える。この夜は「ルイ・ヴィトン 六本木ヒルズ店」で2015春夏プレビューショーを楽しんだ後、すぐ隣にある話題のレストランに向かう。六本木けやき坂通りにシックに浮かぶ「JG ジャン-ジョルジュ 東京(JG JEAN-GEORGES TOKYO)」。
ニューヨークで8年連続ミシュラン3ツ星を獲得しているジャン-ジョルジュ・ヴォンゲリスティン(Jean-Georges Vongerichten)シェフの、最高級レストランとして昨年誕生した。アルザス出身のジャン‐ジョルジュ氏は南仏やリヨンの名店で修行し、タイやシンガポールなどを経てニューヨークへ進出。今や世界に24店舗あり、東京進出は彼の長年の夢であったとの事。

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今ちょうど11日から明日15日まで、ジャン・ジョルジュ氏が来日している。実際にシェフ自らキッチンに入り料理を作られているとの事だ。そうそうこちらの店舗は「ル・ショコラ・ドゥ・アッシュ」跡地、1999年に塩見一郎氏が設計した建物。それをJGオープンにあたり見事に洗練ゴージャスな内装に造り変えたのは、日本を拠点とするフランス人デザイナーのグエナエル・ニコラ(Gwenael Nicolas)氏。
彼は我が家がお世話になっている「ルイヴィトン 銀座並木通り店」の内装も手掛けている。そう言えば松坂屋銀座店跡地(銀座6丁目)で開発中の商業施設の内装もグエナエル氏が担当していて、今まさに大活躍の人気デザイナーなのだ。店内に入ると全体がゴールドの印象・・なるほどゴージャスシックな光の使い方が彼らしく、正に我が家の好みで妻も嬉しそうだ。

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こちらの正式店名は「Kaiseki Style French Restaurant」。ジャン・ジョルジュシェフが日本割烹スタイルに感銘を受けたと言う事で、1階はカウンター14席。カウンターチェアも特注品だそう。ベージュの大理石はカウンターだけでなく、最新式オープンキッチンや壁など全面に使われており、40坪程の狭さながらも豪華な空間となっている。
2階は落ち着いたテーブル20席。2階にあがる階段吹き抜けには、日本を代表するテキスタイルデザイナー・須藤玲子氏の「布の彫刻」が緩やかに浮かぶ。フランス人エルベ・デスコット(Herve Descottes)氏の照明デザインで、ふんわり白いオーガンジーが漂う感じがとても優雅。ちなみに「ルイヴィトン銀座並木通り店」のショーウィンドウにも彼女のテキスタイルが使われている。

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そんなトレンド感あふれる「ジャン-ジョルジュ東京」を任されているのは、NY本店で6年中2年スー・シェフを務めていた米澤文雄シェフ・ド・キュイジーヌだ。ジャン・ジョルジュ氏からの信頼は厚く、日本出店にあたって「是非米澤シェフに」との強い意向だったと聞く。そして見事期待に応え、東京店開業わずか9ヶ月でミシュラン1ツ星を獲得している。
名前を告げるとスムーズにオープンキッチンの真ん前のカウンター席に案内される。2本のカウンターが列を少しずらした状態で設置されている。カウンターの割烹スタイルを参考にしながら、周りの客が気になると言うカウンターの欠点をうまく覆い隠せる。座り心地や座面高もちょうど良い。キッチンは少し低く設定してあって料理をする様も良く見える。ジャン・ジョルジュ氏が選んだと言う旬の食材もディスプレイされている。

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週末のこの日は外国人、そしてカップルが多い・・確かに愛を語るにはこの距離感と華やかな雰囲気は効果的だろう。料理は「JGおまかせメニュー」24000円、「8コース JG早春のテイスティングメニュー」18000円、「6コース JG早春のメニュー」13000円のほか、アラカルトメニューも用意されている。ランチでもコース料理とアラカルトメニューがあり使いやすそうだ。
そこで私達は「JGおまかせメニュー」を頂く事に。カイセキと名付けられているだけあって箸も添えられてる。まずは乾杯。既に隣のルイ・ヴィトンで「ヴーヴ・クリコ イエローラベル」を頂いていたので、入口に飾られていた早桜に合わせ「ビルカール・サルモン ブリュット・ロゼ(Billecart-Salmon Brut Rose)」ハーフにしよう、「わ~い、春はやっぱりピンクがいいね~♪」と妻はご機嫌だ。

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入口右側にあるセラーには、フランスワインとアメリカワインに絞り込んで200本ほどあると言う。また各コースにワインペアリングも用意されていて、「おまかせメニュー」のペアリングは12000円、早春のテイスティングメニューのペアリングは8000円という感じだ。ワインの値付けは3掛け+αといった感じで、最近のレストランにしてはかなり高い方だろう。
例えばシャンパ-ニュで「ドラモット ブリュット N.V.」17000円、「ボランジェ・スペシャル・キュヴェ N.V.」19000円、ボルドーだと「シャトー・ラフィット・ロートシルト 1998年」192000円、「シャトー・ラトゥール 1996年」198000円など。余り在庫はおかず高値で利益を出し、あとはワインペアリングに誘い込むという営業戦略かな?と思ったが、「バンバンボトルが空くので、メニューの入れ替わりも頻繁です」とソムリエ氏(笑)

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確かに今回もWEBで事前に見ていたワインリストと実際のワインリストはかなり違っていた(飲むつもりだったワインがなかった)。そんな中運ばれたのは「ボルディエバターとクッキー」。注がれる「ビルカール・サルモン ロゼ」はグラスの中に繊細な泡が美しく立ち上がり、ゴールドの照明にキラキラ輝く。カウンターに沿った低い照明は、料理やグラスだけでなく人肌も美しく見える。
まずはアミューズ「ウニのトースト」が登場、ライムジェリーを乗せて酸味を効かせた味わい。ウニの苦み・甘みと混じり合った際のバランスも楽しい。続いて鳥の足型の器でやって来たのは「淡路産メイヤーレモンのジュレ オシェトラキャビア、クレームフレッシュ」だ。オレンジとレモンを掛け合わせたメイヤーレモンのジュレ。花のシロップも入っている。ロシア産オシェトラキャビアやクレームと共に爽やかに楽しむ。

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これもバランスよく上品だ。次に登場したのは「ホタテと黒トリュフのタルタル仕立て クリスピークルト」。タルタル仕立ての帆立を、贅沢に切られた黒トリュフと共に頂く一品。まさに黒トリュフを食べるようにその存在を際立たせている。シェリービネガーとヘーゼルナッツのオイルで上品にまとめられた味わい。
添えられたクリスピークルトのカリッとした食感・香ばしさと共に頂くと、その滑らかでオイリーな食感、黒トリュフの艶やかな味わいがより活きる。ディナーの気分を徐々に盛り上げてくる、そんなコースの流れとしても上手な流れだろう。さぁ更に食欲をそそる香りが漂ってきた・・葉っぱの様な個性的な器で運ばれたのは「毛ガニのリゾット 海藻と柚子」。北海道産毛ガニの身をほぐしてカニ味噌と和えたコシヒカリのリゾットだ。

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カニ味噌には海藻ボルディエバターを入れたクリーム状態で力強く、全体の味わいを印象づける。そこに海苔・柚子・ディル・レモングラスの爽やかな香りや、エビ殻など食感のアクセントも添えて、フレンチらしい完成度の高い一品だった。妻は「これお代わりしたいくらい」と大層気に入っていた。続くは「パースニップのスープ ココナッツフォーム、ライムとミント」。
目の前で暖かい白ニンジンのポタージュを注がれて完成する。ココナッツミルクのフォームとライムの泡が蕩けて馴染んで行く仕掛け。味わいを自分で調整しながらその変化も楽しめる。散らされた生ミントの葉も爽やかで特徴的だ・・これも「香り」に惹かれていく。笑顔が素敵な米澤シェフに直接サーブしてもらい、説明を聞きながら食せるのも嬉しい。どのプレートも高いレベルでバランスが取れて、旨味に収斂していくので日本人には解り易い。

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次は「信州サーモン 黒トリュフのクランブル 滑らかな根セロリのピュレ」。黒トリュフ・パン粉・ハーブをバターでペースト状にして、信州サーモンの表面に施す。サラマンドルで熱を入れ、溶けてきたところにまた黒トリュフを削ったものだ。添えられたのは金時ニンジンのフリット。根セロリのピューレには、酸味の中にも少し甘みのあるレーズンビネガーも流している。
黒トリュフだったり、パン粉の香ばしさだったり、サーモンのしっとり感だったり・・そういった要素がひとまとまりになって美味な味わいに昇華している。妻は「これもかなり美味しいね」と絶賛だ。気が付けば店内は満席、かなり賑やかになって来た。ここで赤ワインといこう、リストの中から選んだのはボルドー・グラーヴ地区「シャトー・オーブリオン(Chateau Haut Brion) 1995年」メドック1級。

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言わずもがな500年以上の歴史を有する名門シャトーだ。ゴールドの店内に美しくボルドーカラーが揺れる。カベルネ・ソーヴィニヨン45%、メルロ37%、カベルネ・フラン18%、甘く芳しい果実味が印象的。タンニンはまだ溶け込みきってなく若々しさを感じる。それでもすべらかで綺麗なアタックから長く魅惑的な余韻が広がる。
そこへ登場したのはとっても立派なエビ?!「車海老のフリット 柔らかな寒キャベツと発酵ハラペーニョ」だ。薄い皮をまとった大きな車海老に、「すきやばし次郎並ね!」と妙な感心をする妻(笑) 敷かれた甘いキャベツがエビの旨味をたたえた甘さを増幅する。そこにライムのゼストとミント、更にハラペーニョのピリッとしたニュアンスが重なり立体的な味わい。

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自分でスダチを搾るところも懐石っぽい仕立てだ。見た目よりさっぱり頂けるのも特徴的。次は「フォアグラの鉄板焼き グリーンアップルのピュレ 鰹出汁のフォーム」、これはいかにも海外のシェフらしい発想で、JG独特の世界観にあふれた1皿となっている。ランド産フォワグラの下には青リンゴのピュレの爽やかな甘みを添えて。
そこには何と「ポン酢の泡」と言う濃いソースが、油をきりつつ爽やかにまとめてくる。柚子ジュース・鰹出汁・醤油を使った鰹出汁のフォームが独特な余韻を印象づける。進化したフレンチと言う感じだが、ちゃんと日本人に解り易い美味しさで食べ手に最後まで寄り添う。メインの「飛騨牛フィレ肉のシアード ハバネロホットソース、ハーブの薫るスピナッチ」が運ばれてくる。

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妻が「これまた良い香りがするわね」と楽しそう。お腹は結構一杯なのだが、カウンターから直ちに運ばれてくる一品一品の香りが食欲をそそる。A5フィレ肉の炭火焼きの下にはちぢみほうれん草とハーブのソテー。それをオレンジのハバネロソースとバジルのオイルで絡めつつ頂く。米粉を使ったオニオンリングのサクサクの食感もセンスあるアクセント。
熟成を始めた「オー・ブリオン」が負ける位の塩気も含めた強めの味わい。カリフォルニアの若めのワインが確かに合いそうだった。一息付いたら可愛い出で立ちの「数種の柑橘のパブロバ ブラッドオレンジのソルベ」が登場。カウンター段差辺りにズラッと飾ってある多種の柑橘類、これらは1月にジャン・ジョルジュ氏本人が、高知や山口を自ら回った際に発見した物。

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このデセールは彼が思う「日本らしさ」をより引き出したプレートと言う事だ。メレンゲの上には蜜柑のクリーム・日向夏など季節のフルーツ。さらにブラッドオレンジのソルベが乗せられ、周りにはブラッドオレンジとエストラゴンのソースが流されている。コースの区切りに程よい甘みと自然な酸味が爽やかにしてくれた。
そして最後、チョコレート好きにはたまらない「チョコレートスープ パッションプルーツとデーツ」がやって来た。目の前で温かいショコラソースがたっぷり注がれ始めると、さすがに妻が歓喜の声をあげる(笑) 皿に並んでいるのは、「パッションフルーツのギモーブ」「チョコレートのクロッカン」「ユズのセミブレット」「キャラメルのアイスクリーム」「チョコレートのキャビア」、

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それらをチョコレートソースが少しずつ溶かして行くと言う、楽しさと美味しさにあふれるプレートだった。そうだ、ここでお勧めの食後酒をお願いする。出てきたのは「シャトー・リューセック」のセカンド「カルム・ド・リューセック ソーテルヌ(Carmes de Rieussec) 2011年」。最後はパート・ド・フリュイや生キャラメルなどのプティフールで締めた。
モダンな味わいと洗練された空間、丁寧なサービスは大人のデートにはお勧め。無駄な動きなく調理する様を見ながら臨場感あふれて楽しめる。米澤シェフはニューヨークで鍛えられただけあって、料理の腕だけでなく説明も要点を押さえてスムーズ、笑顔でデキパキと適度な会話も好印象だ。そして料理は、クラシック系ではなくモダン多皿系が好きな人はかなりの確率で気に入るだろう。

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とは言え繊細すぎたり、味わいの輪郭がぼけていることもない。また先鋭すぎて難しい味でもない。素材の味を中心に添えつつ、柑橘や辛み、そして和の風味も随所に的確に盛り込んだ多彩な味わい。ある意味力強さもあり、輪郭もくっきりした旨味があるので、ワインにも合わせやすい。妻は「また1つ好みのレストランを見つけたね♪」と十分に満足した様子だった。
帰りはお土産にJGオリジナルチョコレート「タブレットプラリネ柚子」を頂き、米澤シェフやスタッフに見送られながら、名残惜しい気分で真ん前にある宿泊先の「グランドハイアット東京」に戻った。また近いうちに再訪したい、そんな思いになる楽しいディナーとなった。

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