マンダリンオリエンタルホテル東京の特別宿泊プラン「ノーマ・パッケージ」。2015年1月9日から2月14日まで限定出店された「ノーマ・ジャパン(noma mandarin oriental hotel Tokyo)」。38階ロビーに展示されている同デンマーク「スカーゲン(SKAGEN)」のインスタレーションを見ながら、吹き抜けの階段を下りていくと、レストラン入り口に「ノーマ」のスタッフ達が既に並んで客の到来を待っている。
シンプルでカジュアルなユニフォーム、そして気さくな笑顔だ。「ノーマ・ジャパン」の為に「シグネチャー」は内装をがらっと変えて、家具や食器も全て用意された。デンマークの「フーグリ(hyggelig 居心地のよさ)」を表現した北欧らしいナチュラルな世界に驚く。まずガラスの仕切りだったレストラン入り口が白壁になり、木が生えたようなディスプレイ。

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その向こうはオープンキッチンが煌々とする以外は、照明をグッと落として穏やかで静かな世界が広がる。デンマーク・コペンハーゲンにあるレストラン「ノーマ(noma)」は、英「Restaurant」誌が毎年発表する「世界のベストレストラン50(The World’s 50 Best Restaurants)」において、過去5年間で4度の世界1位に輝く。2014年は一昨年の2位から1位に返り咲いた。
当然世界中から人々が訪れるわけで現在ウェイテイングリストは58000人、かなり予約は難しい。そんな中「ノーマ・アット・マンダリン・オリエンタル・東京(Noma at Mandarin Oriental Tokyo)」のニュースが飛び込んできた。デンマーク本店以外の初営業が日本・東京、しかも本店を休業しレネ・レゼピ(Rene Redzepi)シェフとスタッフ全員が移動してくる言う事で、世界中で話題になった。

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2002年から開始した「世界のベストレストラン」は、世界の料理評論家・メディア・シェフ約900人が投票して決めるランキング。消費者目線は反映されていないし、純粋な味というよりは「造り手サイドから見た、世界の料理界の潮流を示唆する1つの物差し」と理解するのが正しいだろう。
ちなみに日本のレストランとしては「ナリサワ」14位、「龍吟」33位、「石かわ」99位にランクインしている(「アジアレストラン50」のランキングでは「ナリサワ」2位、「龍吟」5位、「石かわ」16位、「カンテサンス」22位、「レフェルベソンス」25位、「すきやばし次郎」38位、「さわ田」41位、「ハジメ(大阪)」42位、「鮨さいとう」43位、「天空龍吟(香港)」50位)。

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ヨーロッパやアメリカからわざわざ日本に足を運ばないといけない立地条件、そして情報発信力も劣るため、日本レストランのランキングはどうしても実力よりも下になってしまうのだと思う。さて、そんな物差しの1つとは言えども、「世界NO,1レストラン」をここ日本に居ながらにして楽しめると言うのは、ラッキーな事で逃す手はない。今宵は心ゆくまで「noma」の世界を満喫することにしよう。
「シグネチャー」で我が家お気に入りだったソファー席は何と姿を消しており!テーブル席へと変貌している。この木の風合いが素敵な黒いテーブルと椅子は、デンマークを代表するインテリアブランド「カール・ハンセン&サン(Carl Hansen & Son)」が担当。あのハンスJウェグナーの椅子「CH46」を、デンマークの森林から伐採した樹齢200年オーク材で制作。

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それに合わせた特注テーブルもデンマークのオーク材、黒革クッションも特注だ。見渡すと日本人客はほとんどおらず、様々な大陸から客が集っている。日本人客の予約率15%程度と言うのは本当のようだ。テーブルを担当してくれたのは、ロンドンから「ノーマ」に来て在籍8ヶ月と言う広島出身の兼子ゆきやすソムリエ。その他も多国籍のスタッフ達が全て英語による説明で、サバサバとした明るいサービスだ。厨房からは時折体育会系の威勢良い掛け声も聞こえてくる。
テーブルにセットされているのは印象的な、赤木明登氏の和紙を使った朱い漆皿、その下には福岡県うきはの大村剛氏による黒皿が重ねてある。おしぼりトレイも赤木氏の漆皿か。北欧インテリアに赤と黒の和のコントラストがシックだ。さぁまずはワインリストを拝見しよう。「シグネチャー」の物ではなく、兼子ソムリエともう一人のソムリエ2人で用意したものだと言う。

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どれか1本で通すのはなかなか難しそう・・そこで各プレートに自動的にワインが合わせられると言う「テイスティングコース」をオーダーする事にした。グラスシャンパーニュは「ジェローム・プレヴォー ラ・クロズリー レ・ベギン(Jerome Prevost la Closerie les Beguines) 2010年」。ジェローム・プレヴォーと言えばフランス北西のグー村、セロスの愛弟子だ。
そこに出てきた一皿目は、衝撃の「長野の森香るボタンエビ」。見ての通り生の北海道産ボタン海老の上に、数匹の蟻が乗ったプレゼンテーション!「ants」はノーマの特徴とは聞いていたが、直に目にすると流石に驚く。しかもノーマのスタッフ達が自ら長野で捕獲したと言う蟻達なのだ。ボタン海老の触角がふらりと動いたので、妻はびっくりして「ひゃ~!動いてる!」とジタバタ。

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私も恐る恐る手を伸ばすと海老が跳ね出したので、考える暇もなく口に運ぶ(笑) さすがに刺激的な光景だ。ボタン海老のネットリした甘さに続いて、蟻の何とも言えない風味と酸味が残る。子供の頃蟻を触った後の残り香のような??いずれにしろ日本にはない食文化・・挨拶代わりのこの一品で、ノーマの世界観に一気に引き込まれていく。
客席はアジア・ヨーロッパほか様々な国からの客で満席だが、一品食べ終わるとさっとスタッフが引いて、次のプレートがかなりテンポ良く提供される。2品目は「柑橘とピパーツ」。シェフは一年以上前から日本を訪問し、北は北海道・青森から、南は四国・福岡・沖縄まで日本各地の食材を実際に手に取って今回の「ノーマ東京」に備えた。旅行客ではなく日本に住んで日本に向き合うことで、日本文化を理解した挑戦をしたかったと言う。

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この一皿も高知産「八朔」「かぼす」「みかん」「文旦」が、綺麗に切り揃えてある。底には粉末にした昆布と白ごまオイルを和えたソースが潜んでおり、酸味の後に面白い旨味が味わいを包んでくる。沖縄石垣島産ロングペッパーの輪切りもかなり振られ、最後にそのスパイシーさが味わいの印象を変化させて蓋をする。「面白いバランスね~??」と妻も目を白黒させている。黒い深皿は一柳京子氏の作品。添えられる赤いフォークと黒いスプーンは赤木明登氏の漆塗だ。
続いて運ばれた「削られた鮟鱇の肝」も赤木氏による黄色い漆器。液体窒素で凍らせたあん肝のスライスは、薄い温かいトーストに乗せられ、溢れんばかりの風情で布生地の上に置かれている。妻は手で食べるのが少し気になる様子。

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舌の上で冷たい食感を感じるとあっという間に溶けていく。その儚さがかえって味わいを印象付ける。口の中から消えた後に、あんこうの風味が余韻に残る。モダンでクリエイティブなプレートだか、塩気と旨味はしっかりと付けてある。更に続いて「甲烏賊の蕎麦」、ノーマ風イカソーメンといった趣きの一品だ。
宮崎・増渕篤宥氏作の黄色い深皿に竹簾、それに乗せられた蕎麦風にカットされた烏賊は、烏賊の内蔵のガルムが塗られ、所々イカスミのような黒さもたたえている。内田鋼一氏の個性的な白い器には氷、その中には安藤雅信氏作の黒い椀(内側は白)に入った「出汁」。出汁はヨーロッパの松の葉から取ったものだが、確かに仄かに香る風味がそれっぽい。

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ローズオイルと浮かんだローズペタルも一緒に香味のように頂くと、口一杯に薔薇が広がり南国アジアン風だ。続いて「一口どうぞ」とメニューには載っていない、タコ焼き風にアレンジされた「エイブルスキーバー(Ableskiver)」が出てきた。エイブルスキーバーとはクリスマスに必ず登場する丸く甘いデンマークの伝統料理。
本店でも色々変えながら提供してる定番を、ジャパニーズ・スタイルにアレンジしたと言う。上には刻んだ山葵とピクルスが乗せられている。中にはからし菜が詰められ食感も味もしっかりしている。ほくほくと身体が温まりそうな、なるほど北欧らしい一品で妻も気に入っていた。

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次に登場したのは涼しげな出で立ちの「蜆とサルナシ」、言わば「しじみ貝のタルト」だ。これも「鮟鱇の肝」と同様布生地の上に置かれて手で食する。最初から使われているベースの黒皿同様、この小さい平皿も大村剛氏の作品。タルトの上に綺麗に並べられた生の青森産シジミは約40個、実に印象的だ。8時間かけて仕込んだものと言うから驚く。
その下には長野産「ワイルドキウイ」とパセリのソースが敷かれている。サクサクと軽く繊細な生地の食感に続いて、淡水のシジミの鉄分が、仄かな酸味と共に残る・・その何ともユニークな味わいは日本人にはない着地点。「ノーマ東京」は1ヶ月強という短い期間だが、少しずつ料理を入れ替えていく。このタルトの次バージョンは「ウニのタルト」と言う事だ。

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さてここで合わせられたのは、何とワインではなく日本酒、千葉県・寺田本家の無濾過自然酒「醍醐のしずく」だ。無濾過自然酒らしいフィルターにかけてないやや濁った味わいが特徴的。酸味が確かにしじみの鉄分と微妙なハーモニーを描く。続くのは「できたてトウフと天然のクルミ」。安藤雅信氏作の黒い椀に盛られた料理は、鄙びた温泉旅館の夕食のようなどこか懐かしい味を再構成した印象だ。
「京都 菊乃井」で研修までしたレネシェフらしい京都へのオマージュも感じさせる一品である。「豆腐と言うか圧倒的に胡桃だよね?」と妻。確かにクルミの食感が支配的で「自家製豆腐」は風味程度な感じ。底に敷かれた西京味噌と「パセリのオイル」を絡めつつ頂くと、一つの優しく親しみやすい味わいを構成する。

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次に登場した料理は「二日間乾燥させた帆立 ブナの実と昆布の香り」。生のホタテを2日間かけて完全に乾燥発酵させて、それに蜜糖とオイルを合わせ、液体窒素でフリーズドライしたもの。口の中に運ぶと一瞬で消えていく。底に敷かれた昆布と白胡麻のオイルが不思議なネットリした旨みを湛える。「この旨味は何の味だろう?」と追いかけるがもう消えて残っていない・・そんな儚さも美味しい。
一方妻には魚介の凝縮感が強いようでスルスルとは行かない感じだった。黒い深い器は福岡の秋月焼、伊藤環氏の作品。こちらの料理にはフルゴーニュの白、自然派シャルドネの「アレクサンドル・ジュヴォー ル・モン(Alexandre Jouveuax Le Mont) 2012年」が合わせられた。クールモダンなラベルデザインが印象的。

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「ほっこり南瓜 ウワミズザクラの木のオイルと桜の花の塩漬け」は「高知産ほっこりカボチャ」を使用した一皿だ。日本の食材を理解するため、北海道から石垣島まで自らの足で回ったレネシェフ。この南瓜も高知で見つけたものになる。とろとろに煮た南瓜は甘みがしっかり出ている。飾られた昆布のスティックの風味と南瓜の甘さ、少量のバターと白麹を使ったソースの、どこか懐かしい香りと仄かな酸味、それぞれのバランスも良かった。
この緑がかった皿は伊賀焼土楽窯の福森道歩氏の物。これに合わせられたのは、華やかアートなラベルが印象的なスペイン・カタルーニャの自然派「メンダール(ロレアーノ・セレス) フィンカ・アベウラドール(Laureano Serres Sense DO Mendall Finca Abeurador Blanc) 2013年」。とにかく生産数が少ない事で知られる希少な白ワインだ。

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濁った黄金色、イーストや酵母の様な独特の風味は、好みが分かれる感じだが、「八重桜の塩漬け」とワインの広がりを合わせて楽しめた。さて次は噂の黒い「にんにくの花」が登場する。豆腐と胡桃時同じ安藤雅信氏作の黒い平皿に、大きな植物の様なものが2枚黒く光っている。ニンニクを60度で1週間ほどトロトロになるまでひたすら煮込んだもの。
それをペースト状にして「ねずの実」「山椒」「ベリー」「レモングラス」と共に一ヶ月発酵させた。そしてここにも「蟻」が入っていると言う!それをシート状にし織る様に綺麗に整え、まさに「花」に見立てた。これも手で頂く。昆布を煮詰めたお菓子と言った感じ、ないしは干し柿様のゼリー菓子と言った食感。ネットリした噛み応えでほのかに「蟻」も香る?(笑) 日本にはない不思議な風味の口直しだった。

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続いて運ばれてきたのはワインではなくまた日本酒。京都の向井酒造「伊根満開」。古代米(赤米)で作られていると言う事で、まるでロゼワインの様にほんのりピンクで妻が喜ぶ。なるほど、女性杜氏が作っているんだそう。フルーティで甘酸っぱい中にも、米の風味を感じる所がやっぱり日本酒。こういったチョイスも面白い。そしてこのピンクが揺れる「伊根満開」は、次の料理「様々な根菜類 生姜と共に」にも合わせられた。
月の様に白く美しく浮かぶ秋月焼は伊藤環氏の器。フリーズドライ帆立時の黒い器とはまた違った趣きだ。一見普通の「和懐石の煮物」の様に見えるが、ふんわりクリミーな香りが立ち上がる。聞けば酒粕と白麹との事、まろやかな味わいのソースが野菜の味を自然に引き立て、確かに日本酒に合う。

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シソ科の根っこ「チョロギ」に「ムカゴ」「クワイ」「百合根」「牛蒡」「レンコン」「黒芋」と多種の根菜が綺麗に仕事されている。レネシェフが土の中をイメージして創作した一皿と言う。20日程熟成させた「秋田産卵黄」が、ふっくら弾力があり何とも言えないコクを添えたアクセント。このプレートは素材の味を生かした日本人には馴染みのある味わいだろう。
添えられた黒い小皿(これも安藤氏作)には「生姜の酢漬け」。寿司屋のガリ的なイメージとは違って、固めのスティック状で辛さと酸味が強め。これはネットリした卵黄の口直しに、と言う事だった。ダイニングは日本人は少なく、海外からの団体が賑やかに楽しんでいる。とそんな中我が家のテーブルにやってきたのはびっくりの、真っ黒に焼かれた「野生の鴨 マツブサの実」だ。

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自然を食するという意味を実感してほしいというノーマらしいプレゼンテーション。秋田産の野鴨は顔がしっかりと見える笑。。一旦テーブルから引かれて、改めて各部位毎、内臓も綺麗に切り分けられた状態で運ばれてくる。皿は最初からずっとベースで使われていた黒い平皿、福岡うきはの大村剛氏によるもの。並んだそれらは燻製の鴨のような味わい。ちなみに黒い箸は京都の数寄屋建築家・三浦史朗氏作。
そのまま食べると日本では良くある地鶏の炭火焼的な味わいだが、添えられた赤い「野生の葡萄のソース」が面白かった(黒い小皿は肉と同じ大村氏作)。酸味が効いたベリーソースの様・・これを付けると何とも不思議な、全く違った日本人には馴染みのない味わいに昇華する。そんなワイルドな鴨に合わせられたワインは「マタッサ マタッサ・ルージュ(Matassa Matassa RougeCalce-Roussillon) 2012年」。

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カリニャン100%、もう明らかに「野生の葡萄のソース」と一体化する味。ベリーの様な酸味が、飲んでいるのか付けたソースなのかわからなくなる楽しさ。ワインとのハーモニーもさすがに脱帽であった。ちなみに「ドメーヌ・マタッサ」は2002年にピレネー山脈の麓カルス村できた新進。ヴァン・ド・ペイ・デ・コート・カタランにこだわり完全オーガニックという個性派。
ラベルにもあるマタッサのロゴは漢字の「森」からデザインしたと言う・・なるほど「ノーマ」のイメージに近いワインだ。アップテンポで変化に富んだプレートに圧倒される様に、あっという間に時間が過ぎていく。秋田の田村一氏が作る美しい白い器に、炊いた白いカブが神秘的に佇んで登場する。それに安藤氏作の黒い水差しから流れ出たのは緑色のスープ・・白い中に美しく注がれていく。

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「イーストと椎茸の中で炊かれた蕪」だ。焼いたイーストにパセリオイル、結構苦みも感じる。敷かれているトレイは長野の木工作家・井藤昌志氏作。この料理に合わせられたは、ラベルが華やかアートで個性的なドイツの白ワイン、ボトルの形状も変わっている。薄めのゴールドが揺れるそれはキンハイム-キンデル村の「ヴァイングート・リタ・ウント・ルドルフ・トロッセン フォン・デア・ライ リースリング・シュペートレーゼ(Weingut Rita & Rudolf Trossen Riesling Spatlese Von der Lay) 2013年」だ。
何とも個性的な香りに果実のとろみ??不思議な感覚の味わい。振り返れば最後まで驚きでいっぱいの、ノーマらしい7本の「ワインペアリング」だった。いよいよ残りはデザート3品。まずは「米」、その名の通りお米を使ったデザートだ。

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一柳京子氏作の黒い茶碗に、白く和紙の様に浮かぶライスペーパー。底に沈むのは米と酒粕のアイス。それに蕪の時と同じ安藤氏作の黒い水差し(こちらは少し小さい)から、またもや緑色のソースが流れて来る。この深緑はsorrel(スイバ)、日本では余り使われないハーブから作られたソースとの事。麹の仄かな甘さと少しの柚子が、日本の良さを感じさせてくれる優しい味だった。
続いて2品目はグツグツジュージューとハンドルが付いた黒い器が運ばれてきて驚く。これは福岡・久留米の正島克哉氏作の片手土鍋。鍋の中は真っ赤、甘い香りがテーブルいっぱいに立ち込める・・まるで焼き芋の香り??前述の料理で生姜が入っていた安藤氏作の黒い小皿に、今度は緑色のソースが入っている。名付けて「白下糖でまる一日かけて煮込んだ人参芋」、グツグツが収まってから食べて下さいとの事だった。

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アツアツとろとろの人参芋、まさにスイートポテトだ。緑のソースは「ワイルドキウイ」、酸味を足す感じか。デザートと言うよりは料理、かなりお腹いっぱいになった(笑)そしてここでお願いした「ハーブティー」が運ばれてくるのだが、何と小川甚八氏作の立派な急須と湯呑での登場であった。最後のデザートはまるでプランターな風情、もしかしたら盆栽風なのかもしれない「肉桂と発酵キノコチョコ」。
烏賊の蕎麦時にも使われた内田鋼一氏の個性的な白い器に苔を敷いて、チョコレートをコーティングした肉厚な「セップ茸」を乗せている。その横には「シナモンの根っこ」、これはコーティングしたチョコを舐めると言うか吸うと言うか・・つまり風味に楽しんでくれとの事。色々考えされる楽しい食べ方だ。16種類のコースはテンポ良く2時間半ほどで提供された。食べ手を飽きさせない流れは何とも面白い。

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スタッフも皆さんも陽気で楽しく終始笑いが絶えなかった。コペンハーゲンから来たスタッフ60名程は「マンダリンオリエンタル東京」に宿泊してずっと忙しいとの事だった。コペンハーゲン本店ではデンマークの素材にこだわると言う「ノーマ」。海外のレストランで食した時、「調理法は好きだが地元食材の味自体について行けない」事がある。
それに対して今回の「ノーマ東京」は、日本の食材を徹底的に利用しつつ、コペンハーゲンでのスタイルを実践した。つまり発酵へのこだわり、酸味のアクセントの重視、地元食材や自然への敬意・・そう言った「ノーマ」というレストランの本質が、日本人には分かり易かったかもしれない。また本店を閉店してまで、日本でオープンすると言う前代未聞の「挑戦」の本気度、そして日本という国・文化に対する敬意が伝わってくる。

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その意味でも日本人には嬉しくなるコースと言えた。そして自然を自然のままに食し未来を味わう、目が覚める様なハッと気づかされる様な感覚・・これこそが「世界一」という評価を得ている所以なのであろう。最後忙しい中、にこやかに厨房から出てきてくれたレネ・レゼピシェフ(37歳)。実に誠実な好青年といった趣きで、物腰も穏やかに真っ直ぐな視線で対応してくれる。
レネシェフの自然体の姿と笑顔からは、料理に対するひたむきさ、挑戦する勇気、人に対する温かさと言うものも伝わってきた。世界を魅了して止まない「世界最先端のディナー」を、日本に居ながらにして味わうと言うなかなかない機会。消費者としても色々と刺激を受ける一夜になった。2月14日までの短い期間であるが、この日本で、ノーマの挑戦は更に進化し続けて行くことだろう。