今年も恵比寿ガーデンプレイスを彩るクリスマスイルミネーションが華やか、特に今年は森田恭通氏のデザインによる「バカラ創設250周年記念シャンデリア」が見所だ。テーマは「Session of Sparkle」。「バカラ(Baccarat)」を代表する2種類のシャンデリア(ゼニス/ソルスティス)17基を、何とミラーと共に4層にも組み合わせている。
高8.4m・幅4.6m、LED電球410灯で重さ1.8t!バカラ史上最大と言うから圧巻。森田氏が最後にバカラのシグネチャー「レッドピース」を取り付けて完成となったとの事。この日は恵比寿ガーデンプレイスと同様、「シャトーレストラン ジョエル・ロブション(Château Restaurant Joël Robuchon)」も20周年と言う事で、お城の2階黄金の「ガストロノミー ジョエル・ロブション」で20周年ガラディナーが行われる事になっていた。

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私達が車で城に到着した時、ちょうど1階の「ラ ターブル ドゥ ジョエル・ロブション」では、「バカラ創設250周年記念シャンデリア」のお披露目パーティーが始まった頃で、関係者が集まり仰々しい雰囲気で乾杯が行われていた。言わずもがな「ジョエル・ロブション」の内装を手掛けた森田恭通氏も出席していた。
さて、2階「ガストロノミー ジョエル・ロブション」で行われる「シャトーレストラン ジョエル・ロブション20周年ガラディナー(Diner du 20ème anniversaire du Château Restaurant Joël Robuchon)」の為に、ロブション氏本人数日前から来日していた。ダイニングの中心にも「バカラ シャンデリア」が、黄金の壁にはキラキラクリスタルとミラーが輝く。スタッフ達と挨拶を交わしながらいつもの席へ案内される。

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テーブルにはいつもの様に「バカラ スタンドライト」と白い薔薇、そしてクリスタルが散りばめられている。恵比寿ガーデンプレイスのシンボルでもある「シャトーレストラン ジョエル・ロブション」は、1994年に「タイユバン・ロブション」としてオープン。ロブション城を建設するに当たって、何とフランスの西部ポワトゥ地方のショヴィニーの石が運び込まれた。
最初は本物のフランスのシャトーを輸入しようとしたと言うのだから驚く(さすがに認可が下りなかったとの事)。10年後2004年に「ジョエル・ロブション」としてリニューアルした・・と言う事で20周年だ。この夜は特に常連の人達ばかりだとの事で、何となく年齢層も高め、しっとり落ち着いた雰囲気。我が家もタイユバン・ロブション時代からお世話になっているので、色々と思い出もあり感慨深い。

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当然ながら長年ロブションを支えてきたスタッフ達にとっても、20周年ガラは一つのお祭りだろう。中でも20年勤務しているベテラン勢と言えば、山地誠総支配人、原田聡メートル・ドテル、神田敬市メートル・ドテル、松澤剛レセプションマネージャー、渡辺雄一郎エグゼクティブ・シェフ。
「1994年からの今日までの料理の軌跡(Retrospective des plats de 1994 a ce jour)」と題された今宵のメニューは、これまでのスペシャリテを少量ずつ組み合わせたものと言うから楽しみ。そうそうもちろん20周年ではあるが、実はパリ16区「ジャマン」でロブションシェフが初めて3ツ星を取ってから、今年は30年目と言う節目でもある。さぁまずは乾杯と行こう、お待ちかね信国武洋シェフ・ソムリエの登場だ。

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信国ソムリエも「ジョエル・ロブション」オープン以来、「ワインの城」を10年守り続けている。やはり10年以上のベテランメンバーを中心に、ロブションシェフとの厚い信頼関係を築いているようだ。ロブションのハウスシャンパーニュと言えば今や「ヴーヴ・クリコ イエローラベル」だが、信国ソムリエは何が良いですか?と「サロン」や「クリスタル」など挙げてくれる。
結局選んだのは夏にもこちらで頂いた「アンリ・ジロー フュ・ド・シェーヌ アイ・グラン・クリュ マルチビンテージ(Henri Giraud Ay Grand Cru Fut de Chene Multi Vintage)」。良年のみオーク樽で発酵・熟成させたトップ・キュヴェ「フュ・ド・シェーヌ」は去年「マルチ・ヴィンテージ」に変更された(今年はロゼMVも出た)。とろける様な飲み口、洋ナシ・甘露・・奥にシェリーの香りにうっとりする。

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今回の料理は各スペシャリテがやや小さめのポーションで提供されるとの事で、かなり多皿になりそうだ。世間のバター不足を物ともせず、相変わらず豪華な「ボルディエバタータワー」もやってくる。スタッフの皆と歓談するうちに最初の一皿が運ばれてきた。「キャビア 甲殻類のジュレになめからなカリフラワーのクレーム」、なんとお猪口サイズでアンヌ=ソフィー・ピックの皿「エクリプス」に乗っている。
一口運べば凝縮した濃密さが広がり、一気にフレンチの世界に引き込まれる。続いて前菜は、小さい3皿がセットで運ばれてきた。貝殻のオブジェも綺麗だ。まずは右上の「スモークサーモン フイヴォリテ仕立てにし、わさびのムース添え」は、泡のように口の中で淡く溶けていくサーモン。クリーミーながら凝縮した旨味に、わさびのムースが加わり絶妙な味わい。

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そして「北海道産インカのめざめ マリネしカルパッチョ仕立てに、フォワグラのコポーに白トリュフを削りかけて」。フォワグラの薄切りとインカの目覚めの組み合わせに、香ち立つ白トリュフ。酸味が良い感じの味わいだ。ピスタチオの香りを移したオリーブオイルも垂らしている。最後一番手前のガラス皿「オマール海老 甘酸っぱい蕪のマリネ、ローズマリーの香り」。
蕪をまとったオマール海老は、オマールというより蕪のほのかな甘酸っぱさが活きた一品だった。信国ソムリエが合わせてくれたグラスの白ワインはブルゴーニュ「ルフレーヴ ピュリニー・モンラッシェ レ・コンベット(Leflaive Puligny-Montrachet 1er Cru Les Combettes) 2011年」。蜂蜜バター・ナッツ・クリーム・・上品な樽香に包まれたリッチな味わい。エレガントな酸味が長い余韻。

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そこへやってきたのは「パンワゴン」、色とりどりの一口サイズがたっぷり美しく盛ってある。定番・新作合わせて45種とはさすがロブションならでは。「岩塩のデニッシュ」「アンチョビとブルーチーズのクロワッサン」、新作の「イカスミを練り込んだミルクパン」などを頂く。さて次も3皿で登場する。見覚えのあるスペシャルな料理が、小さめポーションになっていて不思議だ。
まず「とうもろこしのなめらかなヴルーテ仕立て ターメリック風味のオイルをまとわせて」は、相変わらず何ともすべらかな口当たり。鴨のベーコン・スパイスのゼリー、そしてメレンゲも浮かせている。脇に添えられるのはポップコーン。奥の小皿は「秋野菜とフォワグラのミルフィーユ仕立て」、こちらは初めて頂くかもしれないな。大根などとフォワグラが何とも美しくテリーヌ仕立てになり、チリメンキャベツをまとわせている。

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絶妙な仕立てで美味だ。手前には「ウズラの卵 カリッと焼いたリゾットにのせ、白トリュフを散りばめて」。白トリュフの香りと共にふんわりと玉子を絡めつつ頂くリゾットは、まさに黄金律の美味しさ。20年ものの醤油を数滴垂らした、贅沢な卵かけご飯といった趣き。3皿あってボリュームを感じるが、味わいの変化と完成度にあっという間に食してしまう。
とそこにソムリエールのシュードル・セシル・幸子嬢が挨拶に顔を見せる。いつもキュートな笑顔で和ませてくれる。そんな彼女が何と、11月いっぱいで故郷のフランス・ボルドーに帰る事になったと言うではないか?!彼女もロブションでもう5年目。信国ソムリエの元で着々と実力を付けていた彼女に、ここで会えなくなるのは残念だ。色々話も尽きないところへ料理が運ばれてくる。

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次に運ばれたのはまたしても3皿の料理。これらも過去のガラディナーで登場した印象的なプレートばかり。それが少量ずつ頂ける訳だから贅沢だ。まずは左、スペシャリテでもある妻の好きな「ラングスティーヌ ラヴィオリにし、ちりめんキャベツと共に」のモダン版。トリュフの上品な香りが漂う。真ん中は、デギュスタシオン「特選生ウニ3変化」でお馴染みの「ウニ コーヒーの香るロブション風ピュレにのせて」。
口に運ぶとスペシャリテの「ジャガイモのピュレ」が蕩けて、コーヒーの風味が口いっぱいに広がる。食後のコーヒーと言うような風味も広がり、いつもながらの完成度。一番右は、ブラックタイとアランシェフの貝殻デザインも懐かしい「ホタテ貝 ポアレしブラック・ファルファレでエスコート、ホタテ貝エッセンスの軽いクリームソースを添えて」だ。

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なめらから、リッチさ、そして濃密さ・・これら3品でガラパーティならではの楽しさを満喫できた。さぁまだまだ続く3皿セットメニュー、次で4度目の登場となる。皿の量は半端ない、さすがにこれは作る側が大変だろうと、ロブション20年選手の山地誠総支配人と話す。左から「甘鯛 うろこ付きで香ばしく焼き、ユリ根と枯木柚子のナージュに浮かべて」。
表面がパリッと仕上がった甘鯛は柚子が効いて実に爽やか。奥のガラスの器はデギュスタシオン「甲殻類のデクリネゾン」から「車エビのアンフュージョン フレッシュコリアンダー風味」。半生の車海老の食感とコリアンダーを効かせたスープがアジアンな美味。そして手前の「オマール海老のヴァプール ハーブをきかせたソースシヴェ」は、ソースシヴェというと強い味わいを予想するが、これは何とも穏やかな旨味で後を引く美味しさ。

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独特の世界に引き込まれた。さて赤ワインはいつもの様に、信国武洋シェフ・ソムリエと相談しながら決めることにしよう。ここ「ジョエル・ロブション」のワインは25000本、マイナスイオンまで出ている地下セラーで管理されている。iPadに収められたワインリストは地域や畑に分類され、写真や解説まであって読みやすい。
撮影器具をセラーに用意し、アランシェフの高性能カメラで撮影するという。リスト自体は信国ソムリエが一人でコツコツと打ち込んでいる。これも大変な作業だ。20周年にちなんで「1994年」や、ロブション氏初3ツ星30周年の「1984年」といったヴィンテージを中心に絞り込んでいく。「シャトー・ムートン・ロートシルト 1984」や「シャトー・シュヴァル・ブラン 1984」にも惹かれたが、

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結局は妻が飲みたいもの選ぶ事に・・(いつもの事だが 笑) 案の条「シャトー・ラトゥール(Château Latour) 1989年」12万円をチョイスする。信国ソムリエの美しい手さばきで抜栓、デカンター「リーデル アマデオ(RIEDEL Amadeo)」に赤が流れていく。ダイニングのゴールドの内装にに映えて艶やか。胡椒・ドライフラワー・腐葉土・・
熟して溶けていくような黒い果実味が穏やかな酸にのって余韻に伸びる。まだまだ強いが美味しく頂ける。妻も上機嫌で早いピッチで飲み進めている。ちなみに今年2月にこちらで同ラトゥール「1988年」を、昨年は「1978年」、一昨年は「1986年」を開けている。そこに何とも大きな肉の塊が運ばれてきた。「フランス産パンタードのロースト ジャガイモのコンフィとフォワグラと共に」だ。

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山地総支配人と宮崎辰プルミエ・メートル・ドテルがそれぞれ手分けして全テーブルを回って、デクパージュ(decoupage)すると言うからガラ・ディナーらしい華やかな演出だ。これは是非拝見したいと嬉しそうな妻。そう、我が家のテーブルには、2012年にサービス世界コンクール「クープ・ジョルジュ・バティスト(International Georges Baptiste Cup)」で優勝した宮崎氏の登場だ。
世界1の手さばきを、間近でじっくり見ることが出来るのもこちらならでは。サポートには原田聡メートル・ドテルが付き、「お~真剣勝負だわね」と妻も楽しそう(笑) いつも笑顔で軽妙な会話の宮崎氏も、この時ばかりは真剣な凛とした面持ちで「さぁ行きますよ」と気合を感じる。サクサクと迷いなくナイフが入り、小気味よい程正確に大きな1羽のホロホロ鳥をさばいていく様は圧巻だ。

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原田メートル・ドテルも「宮崎は誰よりも早いです」と言いつつ、こちらもさすがベテラン、隣でササッと皿に取り分けてくれる。妻はほう~♪と感嘆のため息。「見とれているうちに終わっちゃった~」とまだまだ見ていたい様子だったが、その後に沢山のテーブルが控えていて、皆カメラを構えて待っている状態だった(笑)
宮崎氏による最高の技術で取り分けられた「ホロホロ鳥」は、噛みしめる程に程よい野性味と滋味深い味わいが調和している。バナナの形に見立てたジャガイモのコンフィとフォワグラもたっぷり添えられ、深みある変化を添えてくれる。ブレス産鶏やホロホロ鳥などのヴォライユが好みだと言うロブション氏。そこに宮崎氏らのデクパージュの技術を見せてディナーを盛り上げる、まさに食べ応えと見応えを兼ね備えたガラらしい企画であった。

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続いてチーズワゴンがやって来た。「シャトー・ラトゥール」も残っているしゆっくりチーズと味わおう。20種類のフランス産フロマージュが美しく並んだ中、お馴染み「コンテ」「モンドール」などをチョイスし、ドライフルーツも添えて頂く。さぁ終盤、最初のデセールも豪華に3点盛りで登場。柔らかなピンクやブルーなどパステル色に癒されるイメージ。
まずは「シャンパンロゼ ソルベと弾けるエアーに変え、アロエベラを忍ばせて」、これも懐かしメニュー。グルゼイユのピューレが綺麗なピンクで、その中にシュワーッとシャンパンロゼを感じる。続いて「ラム酒のグラニテ パッションクリームとココナッツのエスプーマを添えて」は、ラム酒好きの妻はカクテルみたい~♪と嬉しそう。そしてスペシャリテの「マロン 軽めのクレームをマンゴーと洋梨のジュレに乗せて」。

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ゴールドの飴細工の中に栗のクリームが潜んでいて、口の中で程よく調和する秀逸な一品。とここで信国ソムリエが、デザートに合わせて食後酒を用意してくれる、お気に入りの「シャトー・ディケム(Chateau d’Yquem) 1998年」だ。その深くゴージャスな味わいはガラにふさわしい。ネットリしたコクのある官能的な甘味が染み入るようだ。
ちなみに今年2月にはこちらで同ディケム「2003年」を、秋には「1995年」を。更に以前には「2002年」を飲んでいる。そして「シャルトルーズのスフレとグラスピスタシュ」、出来立ての熱々が運ばれてきた。薬草系リキュール香が印象的だ。真ん中にピスタチオのアイスを落として絡めつつ頂くと、まろやかになソースのように混ざり合って、最後まで美味しく頂ける。

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大人のデザートといった趣きであった。そこへ新鮮な青々とした「ハーブワゴン」が運ばれてきた。数種の中からお勧めをお願いして、甘く懐かしい様な「タルトショコラ」と共に頂く。「生ハーブティー」の爽やかな香りを楽しみながら「20年の料理の軌跡」の余韻にひたる。そこへジョエル・ロブション氏がアラン・ヴェルゼロリ(Alain Verzeroli)エグゼクティブ・シェフと、
通訳・マネージメントの安田氏とともに登場する。アランシェフももう15年こちらにいる。4時間近い宴の最後にロブション氏と再会した妻は、いつもの様にハグをして幸せそうだ。世界中に更なる新店を開業する情報などをイキイキと話す巨匠の笑顔が素敵だ。そしていつものように鮨「すきやばし次郎」の話でも盛り上がり(笑)、ガラディナーはフィナーレを迎えた。

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20種類近い料理の数々は完成度が高く、ロブションの歴史と共に贅沢な味わいを最後まで楽しめた。厨房も天手古舞だと思うが、非常にスムーズに各テーブルに提供されたのはさすが。小さなポーションな分、心持ちいつもより濃い目の味付けだろうか。各素材の味わい、そしてプレートの構成がきっちりと浮かび上がってくるような印象にまとめている。
初めて食べる客だと想像力が求められそうだが、以前スペシャリテとして一皿分を食べた事のある客には、嬉しいメニュー構成だったと言えるかもしれない。ロブション氏の自伝によると、本当は厨房から出て客前に出るのが得意ではないと言う。しかし日本ではファン(顧客)のために心を砕いて、きちんと丁寧に接してくれている。そんな姿勢が妻の心を掴んでいるのだろう。

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ロブション氏らは全てのテーブルを回っており、まだまだ盛り上がるダイニングではあったが、我々は信国ソムリエほかスタッフの皆さんに寒い中外までに送って頂く。妻はセシルソムリエールとボルドーでの再会を誓ってハグをする。名残惜しそうに手を振り車に乗り込み、キラキラと輝く恵比寿の城を後にする。
これからクリスマス本番までシャトーは更にひときわ華やかな賑わいを見せる事だろう・・そんな思いとガラの余韻に浸りながら宿泊先に戻った。