今年の夏は不安定で台風だったり猛暑だったり、何かと振り回される。湿度も高い日が多かったのでワインも今一つ進まず、この日は「ようやく美食を楽しめるはずだ」とここに来るのを楽しみにしていた。そう、それは我が家一番のお気に入り「ガストロノミー ジョエル・ロブション(Château Restaurant Joël Robuchon)」だ。
宿泊先の「パークハイアット東京」から車を走らせる。今宵も恵比寿の城は美しく輝いていた。エントランスではいつもの様に松澤剛マネージャー(タイユバン時代から)に出迎えられ、2階のガストロノミーへ案内して頂く。今年2月の「ジョエル・ロブション来日特別ガラディナー(Extravagance a la Truffe Noire 2014)」以来だ。

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お馴染みのスタッフが揃う中、いつもの席に案内される。豪華バカラ・シャンデリアが輝く黄金のダイニング、テーブルにもバカラ・スタンドライト、壁にはびっしりのクリスタル・・着席しながら「やっぱり落ち着く~」と妻(笑)早速テーブルに着いて下さるのは信国武洋シェフ・ソムリエ、そして宮崎辰プルミエ・メートル・ド・テル。
今宵はお二人を独り占め出来ると妻は御機嫌だ。そこへ高丸智天ソムリエ、神田敬市メートル・ド・テルもそれぞれ挨拶に来られて近況を伺う。まずは乾杯と行こう。運ばれてきたシャンパンワゴンには「ヴーヴ・クリコ マグナム」がびっしり。ロブション世界全店舗のハウスシャンパン「ヴーヴ・クリコ イエローラベル ブリュット(Veuve Clicquot Ponsardin Yellow Label Brut)」をグラスで頂く。

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すっきりと喉を潤したところで、信国ソムリエにプレステージ・シャンパーニュをグラスでお願いする。「サロン」など複数勧めて頂いた中から、今宵は金具で押さえたコルクも特徴的な「アンリ・ジロー フュ・ド・シェーヌ アイ・グラン・クリュ マルチ・ビンテージ(Henri Giraud Ay Grand Cru Fut de Chene Multi Vintage)」をチョイスする。
ピノ・ノワール70~75%、シャルドネ25~30%、オーク樽で一次発酵12ヶ月熟成、6年瓶内熟成。さすがに複雑な香り、とろける様に濃厚な飲み口だ。さてメニューに目を通していこう。世界一の称号を持つ宮崎メートル・ド・テルと相談しながら、今宵の料理をチョイスしていく。「デギュスタシオンコース(MENU DEGUSTATION )」をベースにしつつ、数プレートを差し替えてもらうことにした。

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まずはアミューズブッシュ、お馴染み「キャビア アンペリアル ロブションスタイル」からスタート。アンヌ=ソフィー・ピック×レイノー「エクリプス(Eclipse)」に乗せられ、クリスタルも飾って豪華。「ロブション・キャビア缶」の濃厚な旨味と「アンリ・ジロー フュ・ド・シェーヌ」のふくよかな味わいが調和する。
前菜1品目「ウニ3変化」は差し替えて、宮崎メートル・ド・テルお勧めの「青芯大根と根菜 長崎高野屋のカラスミとキャビアを添えたアオリイカ、レモンを香らせて」が登場する。艶黒のプレートに夏らしい色合いが美しい。ブランチャーでさっと火を入れたと言う肉厚のアオリイカ。ふくよかな甘さと旨みがにじみ出てくる。レモンの香りも爽やかに、ちょっとしたメインのような存在感を見せてくれる。

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大根の食感、そして長崎産カラスミのネットリした食感のコントラストも楽しい。さてここで白ワインを頂くことにしよう。25000本以上のワインが眠る「ジョエル・ロブション」では、他のレストランでは考えられないほどの極上ワインをグラスで頂けるのも楽しみの一つだ。まず信国ソムリエが出してくれたのは
「マチルド・エ・イヴ・ガングロフ コンドリュー(Mathilde et Yves Gangloff Condrieu) 2011年」。宗教画風のラベルはイヴの兄で画家のピエールが手掛けている。ヴィオニエ100%のコンドリューは1.6haから僅かな量が作られるので希少。煌めく黄金、蕩けるようにオイリーなアタック。爽やかでいながら何とも厚みのあるワインだ。香水のような艶めかしさに続いて花梨・洋ナシ・・

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完熟したフルーツやバニラ、複雑な芳香が何とも言えない印象を残してくれる。妻も「セクシーでエレガントね♪」と気に入ったよう。「野人によるオートクチュールなワイン」という信国ソムリエの説明に納得した。そこへ「とうもろこしのなめらかなヴルーテ カレー風味のオイルをまとわせて」が運ばれる。スパイシーなカレー風味のブルーテは滑らかな美味しさ。
ベースの皿にはポップコーンが数個置かれ、これにも軽くカレー風味を纏わせている。ゴールドラッシュの程よい甘さとコンソメゼリーのバランスも良かった。さぁ一息ついて、ロブション・ベーカリーチームが焼き上げた自慢の「パンワゴン」が登場する。美しく並べられた多種類のパンは、小サイズなので思わず色々選んでしまう。今回も新作「クミンのフォカッチャ」を含め、「米粉のパン」「ミルクパン」など美味しく頂いた。

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日頃レストランで余りパンには手を付けない私達だが、さすがにこちらのパンは言わずもがな格別の美味しさ。次のプレートはお馴染み「旬の甲殻類3変化」だ。今宵は「スパイスとフレッシュハーブの香るブイヨンに浮かべて」「タラバ蟹 ミントと共にブリック揚げ、グリーンカレーのソースと」「ラングスティーヌ 葱のエテュベとシトロネルの香りのクレームを添えて」。
ロブション定番の甲殻類のデクリネゾンだ。添えられた貝殻や八角が夏のビーチ風で楽しい。テーブルに運ばれてくると、レモンと草木のような「シトロネル」の香りが流れ出してくる。ガラスの丸器の蓋を取ると、コンソメゼリーが浮かんだブイヨンが入っていて、ジンジャーやコリアンダーの香りも立ち上がる。タラバ蟹の繊細な身を包み込んだブリック揚げはココナッツクリームをつけて頂く。

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ラングスティーヌもエキゾチックな風味をまとわせながら頂く趣向だ。全世界にレストランを展開するロブションらしいエスニックな味わいだろうか。さていよいよ赤ワインをボトルで選ぼう。あれこれ悩みながらiPadワインリストに目を通す時もロブションならではの楽しみ。こちらでは妻の好みのボルドーをチョイスすることが多い、さすが心得たものである・・
信国ソムリエが今宵勧めてくれたのは「シャトー・オー・ブリオン(Chateau Haut-Brion) 1982年」だ。世紀のヴィンテージと言われる「1982年」、しかも旧「タイユバン・ロブション」時代(1994~2004年)からセラーに眠っていたもの。パリ「タイユバン(Taillevent)」名物オーナーだったジャン=クロード・ブリナ(Jean-ClaudeVrinat)氏が残したワインの1本ということだ。

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信国ソムリエの美しき手捌き、今宵のデカンターは何と入荷したばかりと言う「古代ギリシャのリュラー」型。通り過ぎるソムリエ・ソムリエール陣も珍しそうに見ていく(笑) これは「リーデル アマデオ(RIEDEL Amadeo)1500cc」、あのヴォルフガング・アマデウス・モーツアルトにちなんで作られた物だそうだ。やはり素晴らしい状態・・
滑らかな苦味が優しく奥深い甘味と渾然一体となっている。ドライフラワー・枯葉・腐葉土・・といった典型的な熟成のブーケが何ともエレガントで心地よい。長い余韻には、上品なスパイシーさが広がる。ボルドー・ポイヤック好きの妻も満足の様子だった。次は差し替えてもらった「こだわり卵 半熟に加熱し、大山鶏エルロンをスパイシーに焼き上げ モロッコ風長ナスのコンポートにのせて」がやって来た。

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日本製と言う卵の殻の様な重厚な器に「半熟玉子」、それにスポイトが差してあるユニークな出で立ちが思わず笑いを誘う。スポイドの「レモンマヨネーズ」を注入して頂く仕掛けだ。ソースはパプリカと唐辛子。これまたスパイシーでエスニック。玉子と混じって独特な旨みが香辛料の風味とともに広がる。かなりボリュームもあり、早くもこの時点で妻は「もうお腹一杯だよ~」と言いだす。
まだまだ続く「フランス産フォワグラ ブランチャで焼き、ブラックチェリーのジュビレとアーモンドと共に」。ブラックチェリーの甘味と酸味が生きたソースで頂く「フォワグラ」は絶妙な焼き具合。とろりとしたフォワグラの脂・風味を様々なニュアンスで頂く美味なプレートだった。そして「フェタチーズ 赤タマネギとグリーンオリーブと共にタルト仕立てに フレッシュマジョラムを香らせて」。

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口直しのギリシャのフェタチーズのタルトはとても美しい仕立て。マジョラム・オレンジ・オリーブの香りも夏らしい・・目にも口にも爽やかな口直し的なプレートだ。更に続いて「ドーバーソール アーモンドパウダーをまとわせて骨付きでロースト レモンの香るブリオッシュのムースリーヌとケイパーのクーリ」。これはまた宮崎メートル・ド・テルが一押しした一皿だけあって食べ応え満点。
ドーバー海峡の平目を骨付きでローストして、まさに肉のように頂く魚という風情。皿の形に合わせたデザインも綺麗な、ケイパーやパセリのピューレ、そしてヒュメ ド ポアソンのソースを合わせながら頂く。レモンジュースに漬け込んだ「ブリオッシュのムースリーヌ」の酸味が心地よく全体をまとめてくれた。この料理に合わせて白ワインをまたグラスで所望したところ、信国ソムリエがチョイスしたのは

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「ミシェル・ジュイヨ コルトン・シャルルマーニュ(Michel Juillot Corton Charlemagne Grand Cru) 2002年」だ。メルキュレ村で600年以上の歴史を持つドメーヌ。「コルトンシャルル・マーニュ」は1ha、新樽50%。ミネラルはほどけて甘露な甘さ、ナッティでリッチな味わいが広がり、まさにプレートに寄り添ってくれた。
さてメインの「牛肉 さまざまに変化させたナスとクミン、タプナードと共に」、既に満腹だと言う妻はここから量を微調整して貰う。肉は「和牛のロースト」、そこに旬の水茄子を様々に調理した、季節感あふれる飽きの来ない一皿だ。上には「茄子の素揚げ」、下には「茄子のグリル」、さらに「茄子のマリネ」も添えている。「茄子のピューレ」もスパイシーで軽妙なアクセントになっていた。肉の赤身は「オー・ブリオン」とも楽しめた。

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少し時間を置いて「旬の野菜達 小さなココットでエチュベに、トピナンブールのチップを散らして」が運ばれる。バターでシンプルに仕上げた熱々の夏野菜は色鮮やか。これまた滋味深く食べ応えもあった。添えられたスプーンの「トピナンブール(キクイモ)」は、ポテトチップス仕上げでカリカリと食感も楽しめた。
前術のポップコーンやポテトチップスなど、ジャンク系トレンドも押さえるところはさすが。一息付いたら夏らしい爽やかさの「アブリコ アマレットでマリネ、ソルベと共にエキゾチックなムースにのせて」はカクテルグラスで。アマレットでマリネした杏、そして杏のシャーベットだ。アマレットのふんわりした泡にはアーモンドも香らせて。

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続くメインのデザートは「フレッシュ・パパイヤ クーリにし、グァバのムース、カシスのソルベに注いで リオのイメージで」が運ばれてきた。ブラジル・リオデジャネイロを意味する「Le Carioca(カリオカ)」とネーミングされている。カシスのシャーベット、マンゴーのチップスなどまさに南国フルーツ感あふれた夏デセールであった。
最後はこれも楽しみの一つである「ハーブティー・ワゴン」がやって来た。数種の美しい生ハーブから選んだのは、新作という「クロモジ」。黒文字と言えば爪楊枝か・・まさに白檀みたいな和の高貴な香りだ。先程の「リオ・デザート」の流れで、ハーブティ担当飯島和也シェフ・ド・ランの「リオ出身」と言う冗談を妻が真に受ける(笑)ここはスタッフ皆の気の利いた会話が客をリラックスさせてくれる。

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そこへ豪華「デザートワゴン」、涼しげなブルーのマカロンタワーに、満腹のはずの妻がまたテンションあげている(別腹だそうだ)。ショコラなど新作のプチィフールをいくつかお願いする。そうそう、この日は2トップ(信国ソムリエ/宮崎メートル・ド・テル)とFIFAサッカー話でも色々盛り上がったのだが、何と締めはブラジルカラーの「merciキャンディー」に加え、
「本物のレッドカードとイエローカード」が出てきた!宮崎メートル・ド・テルは他にも色々隠し技を持っていて、何かしら笑わせてくれる。極上のワインを頂きつつ、次から次に運ばれてくる料理を頂いていると、あっという間に3時間を超えていた。下階でワイン会をこなしていたシュードル・セシル・幸子ソムリエールや多忙だった渡辺敏伸マネージャーも顔を見せ、最後までワイワイ楽しく過ごした。

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お土産の「レモンとラベンダーのブリオッシュ」も頂き(丸型になっていた)、皆さんに見送られながらすっかりご機嫌な妻は「次はいつ来るの?いつ??」と早くもおねだりだ。車の中からも手を振り、名残惜しい気持ちでシャトーを後にした楽しい夏夜だった。